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剱岳・チンネ左稜線
荻原 健一

山行日 2007年8月11日~14日
メンバー (L)荻原、坪松

8月11日
 前夜21時に八王子駅に集合して、つぼっち号で扇沢へ。いつものようにあまり眠れずにあっと言うまに朝が来る。今日はアルペンルートで室堂まで行き、そこから一気に熊ノ岩まで行く予定だ。登攀具の入ったザックは重く、今日は正念場の一日だ。予定通り?剱御前の登りで早くもヘロヘロになり、長次郎の登りは30分おきのレストでなんとか熊ノ岩まで這い上がる。テントは既に10張り以上張られており、最後の1張り程度のスペースしか残っていなかった。危ない危ない。しかしこのビバーク地は良いところだ。水はすぐ脇に雪解け水が流れており、綺麗で冷たく最高においしい。剱本峰、源次郎尾根、八ツ峰に囲まれ遠くは後立山連峰も望める。若いクライマーが多く、明日以降のクライミングに花を咲かせる雰囲気がとっても良い。我々も明日に備えて本日はさっさと寝る。

8月12日
核心部の登攀  いよいよ今日はチンネ登攀だ。今年は雪も少ないだろうしと思い昨年に懲りず(昨年は天候の関係でチンネをあきらめ八ツ峰VI峰Cフェースへ変更)、またまた6本爪でやってきたのだが、雪は少なくても長次郎コル直下の雪渓の傾斜はかなり急だ。我々以外は全員12本爪で熊ノ岩に入っており、ちょっと後悔するがここまで来たら行くしかないのだ。4時過ぎに暗いうちから出発する。すぐに明るくなるが、傾斜はやっぱりそれなりにあり12本爪が正解なのだろう。我々は九十九折れに登らざるを得ず2パーティーに抜かれた。池ノ谷ガリーには雪は全く残っておらず、落石を起こしながらずるずる降りる。三ノ窓からは再びアイゼンを付け雪渓をトラバースして取付点へ。熊ノ岩から取付点までは2時間でここまでは順調だ。取付は早くも順番待ちで1時間くらい待ってやっと登攀開始となる。1P目は4級でホールド、ピン共豊富で特に困難はない。2P目以降も3級主体で岩は堅く、ピンも多く、テラスも安定しており安心して登れる。天気も快晴で最高のロケーションの中、快適なクライミングを楽しむ。前後のパーティーもそれなりに力のあるパーティーばかりで登攀開始後は渋滞もなく気分がいい。
チンネの頭  9P目が核心。ここは一応5級の小ハングがあり、かつてはアブミで登ったというがピンが豊富でフリーでも問題ないだろう。ちなみに我々は余裕の?A0で核心を抜ける。その後はホールド豊富のフェースとリッジ登攀を繰り返して、トポ図通り13Pで終了点のチンネの頭へ到着する。
 下りのアプローチがちょいと心配でまだ握手はしない。チンネと八ツ峰の頭のコルから池ノ谷ガリーまでは歩いて降りられる。通常はここからガリーを詰めて長次郎右俣コルに出て長次郎右俣下降になるのだが、午後になって雪がだいぶ緩んでおりナメナメ6本爪隊としては苦戦が予想されたのでクレオパトラニードルの脇を通って八ツ峰7峰Eフェースと8峰のコルに出る巻き道を使う。この巻き道はそれ程困難な箇所はなく結構使える。7・8のコルから長次郎谷へは、50mダブルいっぱいの懸垂1回で雪渓へ降りられる。ここからは、比較的雪渓の傾斜が緩むので6本爪でもなんとか降りられるのだ。長いアプローチを無事終えて握手をするとチンネ登攀成功の実感が湧いてきた。

8月13日
 今日は元気なら八ツ峰VI峰Dフェース富山大ルートにでも登ってから、剱沢あたりに幕を張ろうと思っていたが、もはやそんな余力は残っておらず朝から撤収とする。剱沢にはあまりにも早く着いてしまい昼寝をしてもまだ時間が余るので雷鳥沢で幕を張ることにする。雷鳥沢ではヒュッテで温泉に入り3日間の汗と疲れを流した。充実山行の後のビールはいつも旨い。

8月14日
 雷鳥沢から室堂へ行き、アルペンルートで扇沢へ。

〈コースタイム〉
8/11 室堂(08:20) → 剱沢(12:10) → 長次郎出合(13:30) → 熊ノ岩(16:30)
8/12 熊ノ岩(04:20) → 長次郎右俣コル(05:30) → 三ノ窓(06:00) → 取付(06:20) → 登攀開始(07:30) → チンネの頭(14:00) → 熊ノ岩(16:00)
8/13 熊ノ岩(06:00) → 雷鳥沢(15:00)

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