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ボルネオ島・キナバル山
山沢 幸子

山行日 2008年1月1日~6日
メンバー 山沢

 今から10年前、息子たちとボルネオ旅行に行った時、森林火災がひどく平地でも煙で覆われキナバル登山を断念したことがあった。昨年、寄る年波に逆らいキナバル登山を計画した。しかし、その1ヶ月前に相棒の雪崩事故での骨折でキャンセルとなり、今回ツアーでの再再リベンジをしたので報告します。

元旦 朝早く成田に向かう
 マレーシア航空で出発、思っていたより飛行時間は長くかかり、8時間半のフライト後やっとクアラルンプールに到着。しかし、飛行機が空いていて、隣がいないし通路側をとってもらえたので、腰痛持ちの私は助かった。クアラルンプールで乗り換え後、またコタキナバルまで約3時間、着いたのは現地時間0時過ぎ(日本時間は1時過ぎ)ホテルに入りシャワーを浴びて寝たのは2時だった。

2日 曇のち晴れ 標高1800m~3300mまで
 朝4:30起床、荷物を3つに分ける。1つは登山後のマシラウリゾートへ送る荷物。もう1つはポーターさんへ預ける5kの荷物。最後は自分のザック。とにかく飲み物を多くしないと、汗を大量にかくだろうし高山病対策にも必要だ。
 本日用には500mlのペットボトルを2本と350mlを1本、ゼリー飲料を1本、お昼用に500mlが1本付くそうだから2リットル近くあるので、安心だ。
 6時前にバスで出発。2時間半くらいでキナバル国立公園事務所に到着。そこで、お弁当が配られたが2個足りなくて、40分以上待たされる。ゲートを出発できたのは10:30頃になっていた。先頭のガイドはゆっくり行ってくれる。このほうが高山病にならないとのこと。登山道は雨で掘られたせいか、1段が非常に高い。我々はこの登山道は外人仕様だね(足が長い)などと話す。私は集団(16名)の前方に位置していたが、後続は遅れていた。
ウツボカズラの群落はあちらこちらに見られます  74歳の女性を始め、70台が2人、山やは4~5人、その他の方は山やではないようだ、後ほど早すぎると文句を言っていた(しかし、5時間のコースを6時間半かかっている)。途中蘭の花を写真に写すのにしゃがみこむと立ちくらみがし出した。ウツボカズラの群落を見る頃から目がチカチカしてクルクル回る。やばい高山病か?ほんのちょっと動くだけでもフラフラする。まだ2500m台なのに、この湿気で汗が大量に出ているので脱水症か?スポーツドリンクを飲み、塩をなめる。呼吸を浅く回数を意識的に多くした。息を大きく吐き出すと楽になってきた。何とか目のチカチカも治り、ここからはもっとゆっくり進むことにする。1月は蘭の花の時期らしく結構多く咲いている。写真を撮るのにしゃがみ、撮影時に息を止めると、立ち上がったとき、立ちくらみと息苦しさですぐ動けない。私は花の撮影に他人の2倍くらい動きまわったか?
 3000mを超すと、岩峰が見えてきた。樹林帯もまばらになり、蘭の種類が変わってきた。
あまり見ない蘭です  この頃から青空になり花は綺麗だし、岩と青空、サルオガセの白いひげが木々からたれ盛り絶好の写真が撮れる。父子参加の中3の息子は蘭の名前にくわしい。ランランランとゆっくり進み、ラバンラタ小屋には5時前にやっと着いた。けっこう厳しかったな!小屋で紅茶の水分をタップリ採り部屋に入る。2段ベッドで狭いながら自分の空間。

夕方、青空の下、やっとラバンラタ小屋へ到着ドンキーイヤーズピークが見えています

 食事はまずく火の通っていない油の多い炒め物。ご飯はまずいがカレーはおいしかった。明日は朝早い出発なので早めに就寝する。私は寒いと腰が痛くなると思い、夏シュラを持っていって良かった(といってもポーターが持ち上げてくれた)。部屋は寒かった(部屋の暖房のスイッチを入れ忘れた)。

3日 大雨 8度 標高3300m~4095m
 朝起床2:30、朝食3:00、出発3:45になった。当日の登山者は2:30には出発していて、もう誰もいない。ヘッドランプをつけて歩き出す。そのうち雨が降り出した。サヤサヤ小屋着5:15、1時間半かかった。ここでカードのチェックを受ける頃には本降り、しばらく小屋の中で休むことになった。下るにしても明るくなってからがよい。狭い小屋の中には先客が大勢いて、ぎゅうぎゅうになりながら、時間を過ごす。6時を大分過ぎ、周りが少し明るくなってからトイレに行った。行く道が洪水状態でなかなか渡れない、上を見ると一枚岩を滑滝のように流れている、水量がすごい。
サヤサヤ小屋(3668m)から  そのうち小屋で待機していた外国の人達はガイドに呼ばれてだんだんいなくなった(彼らはどうするのだろう?)。私はもう登頂は諦めていた。我々の外は小屋の中に誰もいなくなった。しかし待っているうち、雨が小降りになり、ガスで山は見えないものの滑滝状の水量は減っている。その時、我々のガイドはGOサイン。6:30出発。
 私のカメラの液晶が曇っている。カッパの中のフリースのポケットに入れていたが、汗もすごいのでどちらで曇ったのか?そして液晶は暗く、見えなくなってしまった。
 岩をあえぎあえぎ登っていると下りて来る日本人が何人かいた、中の一人は、あれ!我々のツアーの人だ。真っ暗のなかではぐれ、みんなが先に進んだと思い、4000m付近まで行ってきたという。もう一度誘う。
 下りて来る人達は雨で頂上まで行かなかったか、行ってもガスでなにも見えなかったそうだ。登っていると3800m付近から晴れてくる。周りが見通せる、雨もやみ、呼吸が苦しいながらゆっくり進む、頂上8:20着。
頂上(4095m)では晴れました  狭い頂上には誰もいない。ピークは全部見えている、液晶故障で見えないながら、めくらうちでゆっくり写真を撮る。隣のピークに笠雲があった。また崩れるかな?と思う。
 頂上を9:00に下り始める。4000mまで下がって来た頃から雨がぽつぽつ当たり始め、風が出てきて横殴りの雨粒がほほに痛かった。サヤサヤ小屋を過ぎたころから本降りとなりみんな逃げるように下る。1時間半一度も休まず700mを下り、ラバンラタ小屋に逃げ込んだ。疲れた!みんなびしょびしょ。小屋から上を見ると岩場はすごい水量、みごとな滑滝となっている。ますます雨量は多くなっていった。
 またまた着替えを済ませ、お茶・昼食にする。先ほどすれ違った日本人は下山に躊躇していた。でもこの中をみんな下って行ったし、登ってきている。登山道は滝だろうな?
 我々は昼寝をし、ゆったり過ごす、登ってきた多分韓国人が洗面所でドロドロのスニーカー靴を洗っていた。しかし、外国人はみんなパワーがすごい。スニーカーにナイロンカッパで平気で登ってきている。装備がまるで違う。この日も早めに就寝。

4日 曇 ラバンラタ小屋~マシラウリゾート
 4:30起床、5:00朝食、6時出発
 一生懸命水分を採っていたつもりだったが、朝ごはんでラーメンが出た。スープを一口飲んでむかむか、高山病か?食事ができず。
 本当は7時出発のはずが、下りも遅れを見込み6時出発とする。どよんとした天気、雨がいまにも落ちそうだ。しかし途中で虹が出る。天候回復ぎみ。マシラウルートの分岐で分かれると、昨日とは種類の違うウツボカズラが多数ある。雲霧林にはこけがびっしり、蘭も樹上にわんさか、バンダみたいな大きな蘭・デンドロの大株、カトレアの原種?なんでもあり!やはりまだ開けて間がないルートなので荒らされていなく、自然が残っている。特に熱帯雲霧林がすごい。このルートに来られてよかった。

苔むした雲霧林を下るありました、カトレアの原種マシラウルートから頂上が見えます

 途中からは霧も上がり、ラバンラタ小屋や頂上も見えてきた。アップダウンがしばらく続き、下り一方でないので、膝痛で下りの苦手な私にはありがたい。後続が来ないので、ゆっくり写真も撮れる。それでも遠い、お昼になっても着かなかった。え~5時間の行程なのにもう6時間たっている。まだ1時間近くかかりそう。そして、1時前やっとマシラウリゾートに到着した。ここの食事は同じような献立なのに大変おいしかった。

5日 曇
 朝食後、マシラウリゾートを後にし、コタキナバルに向かう。キナバルは今日も厚い雲に覆われ頂上を見せてくれない。途中の展望台でお土産を買い、果物市場でランブータン・マンゴスチン・バナナを買い、皆で食す。おいしかった。
 コタキナバルで1泊し朝早くクアラルンプール経由で帰国となった。ボルネオ島を離れ、マレー半島に近づいたら森が違う、山の緑が全部きちんと波打っている。それが延々と続き何だろう?と疑問に思う。空港に近づき高度が下がり、確認!な~な~んと全部アブラヤシのプランテーションだ、あの山もこの山も!これがうわさのバイオ燃料となるのか! 自然破壊もここまで進んでいるとは・・・この目で見ると恐ろしい。
 そしてジャングルの消えたマレー半島の地球温暖化は身近な自然にも変化を・・・。
 6日帰国した自宅のメールには事故報告が入っていた。


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