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大仁田山~成木尾根~棒ノ峰
成田 義正

山行日 2008年2月11日
メンバー 成田

 寄稿と言っても海外登山とか特段人に語れるような山ではなく、奥武蔵と言う近郊の里山に行った紀行文です。まあ、個人的にはこんな風にやってますということで・・・・。
 コースは大仁田山~黒山~、槇ノ尾山~仙岳尾根下降の周遊コース。大仁田山は「まだ行ってない山はないか」と地図を見ていて見つけた。名栗川沿いの里から入る505mの低山であり、それだけでは物足りないので、別の山と繋げたコースを考えてみた。ハイライトは(1)大仁田山から小沢峠の間はエアリアには載っていないコース(2)仙岳尾根は12月に槇ノ尾山を通ったときに見かけたエアリアの赤の破線コース。
 三連休の中日に行くつもりだったが初日に昼過ぎから雪が降ったので一日延期。河又から飯能行き2番目のバスに乗るため5時前に家を出る。ナビをセットしたがきちんとガイドをしてくれなくて飯能市内をグルグル迂回させられバス時間ギリギリになってしまった。
 河又名栗湖入口からバスに乗車し唐竹橋で下車。名栗川にかかる水清橋(唐竹橋ではなかった)を渡り、昔の分譲住宅地を通る。指導標が見当たらないので犬を連れた夫婦に登山口を尋ねると大仁田山を知らないと言う。奥さんの方が四十八曲を知っていて直ぐ先の工場の先に道標があると教えてくれた。小さな道標から住宅地の小道を行く。道は沢沿いに進むがすぐに沢から離れ、左手の植林の中をジグザグに登りだす。四十八曲と言われる急登である。辿っている山道は黒指、細田などの集落と名栗の集落を結ぶ古くからの峠道。変電所への道を分け、作業道が左へ遡上するが直進する。この辺りは昨日の雪のままで誰も歩いてないようだ。尾根に出ると「←細田、四十八曲→」、手書きで「唐竹橋→」の標識がある。四十八曲峠の分岐をどこで見落としたのだろうか。さっきの作業道が分岐か? でも何も目印はなかったが? とりあえず戻って作業道に入るが、まさに仕事道。間違っていると思い直し、そのまま尾根に上がりさっきの道標に向かう。地図を確認し細田方面で間違いない。後で分かったが四十八曲は通ってきた山道(そんなに曲がりくねってる感じはないが)で、四十八曲峠はこの先の地蔵堂をさすようだ。紛らわしい地名だが地図をよく確認しない罰と自戒。
大仁田山山頂 何もない山です  ここから古道は平坦になり尾根を左から巻きながら進む。黒指へ下る尾根道を左に分け、すぐに地蔵堂の建つ明るい三叉路に着く。四十八曲峠はこの辺かなと思う。地蔵堂はまだ日を経ていないのか白木造りだ。傍に日待塔と書かれた小さなお墓。前にお供物が置いてある。日待塔って何だろう? 水子供養かな。すぐ下が細田集落で家が垣間見える。大仁田山の道標に従って遡上すると送電鉄塔が現れ、明るい畑に出る。山の斜面に切開いた畑で、柚子の実が下に沢山落ちているので5、6個頂いていこうと採っている間にザックが斜面を転がり落ちた。駆け足で回り込み受け止めると開いていた上蓋から財布や携帯、メガネがこぼれて散乱。この時ペットボトルもどこかに飛んでしまった。今日は残り1本で凌がないと行けなくなった。柚子斜面を少し下がると小さな道標が見えて畑の脇の小道から山に入っていく。小道を斜行すると尾根にでて、しばらく進むと立木に小さな板切れが紐で結わえられ、小沢峠と大仁田山へのルート図が書いてある。大仁田山へは分岐から100mで達する。山頂は鬱蒼とした杉桧の樹林の中で展望は一切ない。505.7メートルの三等三角点の頭が雪から出ている。鳥の声もなく静かだ。
小沢峠への手作り標識  山頂から靴跡が北に向かっている。さっそく行ってみると赤沢へ下降している。雪が降ったにも拘らずもう来た人がいるのか、自分と似たことをやっているんだと思うと苦笑いが出る。戻って小沢峠に向かう。まもなく、二手に分岐する道のそれぞれ白いブリキ製の標識。下る方の標識には「(成木尾根)安楽寺」、進む方の標識には「大仁田山-久方峠・小沢峠」、真ん中に「成木尾根」。ここから成木尾根に乗る。安楽寺の標識はこのあと時々現れるが安楽寺って何処だろう。
この標識のおかげで大助かり  成木尾根に入ると雪道になる。しかしトレースがあるのは心強い。小ピークで尾根が分かれる。トレースは北に急降下するので戻って南の方の顕著な尾根に入ってみる。しかし西向きに行かなければならないのでこれもちょっと違うようだ。再び戻ってトレースを追うと急降下した台地に例の白い標識が見える。やはりこっちが正解だった。この標識はありがたい。要所要所に現れ、今日のように下道が見えないときは特に感じる。小ピークをいくつか越えて広い鞍部に出ると久方峠だった。樹林の中の小さな鞍部で青梅の成木・高戸土部落と飯能・久林部落を繋ぐ峠だ。先程からのトレースは成木の方へ折れているのでここから先はトレースは無い。
 この先もまた迷ってルート選定する羽目になる。一回目はピークから標識通り進んだが倒木やら藪で荒れ気味なので、本当に間違いないか確かめるために標識まで戻る。二回目はぽっかり開いていた尾根に入ってしまい、間違いに気づいて登り返す。よく見ればルートは判るのにうっかり目に入った方に引き込まれた。道標があるにもかかわらず迷い、かれこれ30分ほどロスしたため、小沢峠は意外に遠く感じた。昔は人々が往来していた峠だろうかベンチの脇に小さな祠がある。ここの小沢峠や久方峠は今まで知らなかったし、青梅から名栗に抜けられることも知らなかった。集落の「ナグリ」と「ナルギ」と似通った呼び方や「黒指」の地名は両方にある。当時は峠を挟んで、交易が盛んだったのだろうか。来てみて初めて知るのも山旅の楽しみである。
 黒山へはいきなりの急登、道は見違えるほど立派になるが杭階段の廻りの土砂が流され、剥き出しの杭は却って歩きにくい。ひと登りすると、左側が伐採されて、高水三山の尾根が見渡せ、今日初めて展望となる。再び樹林に入り広がった緩やかな尾根を進む。雪も次第に増し今日は沢山の人が入っているのだろう多くのトレースを辿る。689mピークで先行者グループに追いつくが幸いにもトレースはまだ続いている。2人連れなのかラッセルを楽しむかのように並んで歩いた跡だ。次第に雪も深くなるがこの辺は低山なのに積もるようだ。何年か前だが、高水三山までは何ともなかったが、そのあと先行者と交代でラッセルして倍の時間がかかり棒ノ峰から時間切れ下山したことがあった。一昨日の雪は平地では積らなかったが、この山域は降ったのだろうか。雪が柔らかい。
日差しが指す黒山への尾根道  明るい日差しの尾根を登りきると、ようやく黒山山頂に達した。誰もいない。南面が大きく眩しい位に開け、高水三山へ続く尾根が長く延び、ずっと先に高水山が見える。このまま高水三山へ続く尾根に転じたい衝動に駆られる。ベンチから景色を眺めながら昼食をとる。
 棒ノ折山でちょっと休んで槇ノ尾山に向かう。雪は前にも増して膝くらい、時には腿まである。トレースはあるものの、まもなく南へ折れて行った。西の長尾丸山方面にはトレースはない。近くを見渡すと名栗湖方向からのトレースがあるので辿ってみると、山頂からのトレッキングの跡のようだ。ここまで夏なら僅か10分ほどの所に30分かかっているし、このまま進んでも仙岳尾根の下降地点が見つかるかどうか。仮にあってもちゃんと下まで辿り着けるか。こんな時は登りルートでないと無理かなと考え、安全第一、諦める。棒ノ折山に戻るとさっきの人盛りは消え、誰もいない。河又に下る途中、残念さもあって棒ノ折山からの尾根を眺めていたら山頂から名栗湖に向かって尾根が穏やかに下っている。見た目には問題なさそうだし、伐採地か草原なのか樹林がなく展望も良さそうだ。行けるかどうか調べてみよう。もしかしたら仙岳尾根とセットで行けるかも知れない。次の課題が出来てしまった。
 岩茸石に着いて気が変わり白谷沢へ下ることにした。関東ふれあい道は河又に直接下る尾根道よりも利用が多いようだ。雪道はすっかり踏み固められている。初めての道だが沢沿いに作られていて、変化に富んでいるので河又尾根道より面白い。一旦林道に降りてからが核心部。岩場の急降下、繰返す沢の飛石渡渉。冬なのに岩も凍ってないので難なく移れ、楽しみながら下山できた。夏になったら今度は沢を上ってみてもいいかなとも思う。出口には白谷の泉があるが飲料ではないとの注意書き。ダムサイトでは釣り人が釣りをしている中、駐車したさわらびの湯まで歩き、早めの帰宅となった。

〈コースタイム〉
唐竹橋(06:35) → 四十八曲登山口(06:45) → 大仁田山(08:00) → 久方峠(09:10) → 小沢峠(10:00) → 黒山(11:55) → 棒ノ峰(12:30)(戻り) → 棒ノ峰(13:15) → 白谷沢登山口(14:25) → さわらびの湯(14:50)


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