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雪上訓練・富士山
斉藤 弓
山行日 2008年4月12日~13日
メンバー (L)紺野、荻原、小幡、高木、大田、鈴木(章)、竹内、橋岡、平林、前野、石川、渡辺、森田(純)、河野、斉藤(弓)

 4月12日―曇り空の下、新宿を出発する。途中で食材を買い、11時30分に富士山4合目の駐車場に着いて歩き出す。途中から路面に雪が残る。予想以上に雪が多かった。
 13時50分、5合目より少し入ったところに着き、テントを張る。
 14時40分から15時40分まで、テント場付近の雪面で雪訓を行う。
呼吸に合わせて、ピッケルは、足は・・・・・・あれ?  斜面に一列に並び、キックステップでまっすぐ登って行き、また、まっすぐ下る。今度は斜めに登り、斜めに下る。これらを繰り返し、雪面歩行に慣れていく。重心をかける位置、姿勢、呼吸など、どれかひとつに集中しようとすると他がおろそかになる。いびつに動いている自分がおかしい。
 また、テント設営や食事作りの合間に、テント生活のいろんな工夫をうかがう。それぞれにたくさんの気遣いと、理由があることに気づかされる。

4月13日―6時にテント場を出発。最初は雲間に陽射しが覗いていたが、やはり曇り空はなかなか晴れない。アイゼンをつけ、出発する。昨日の雪に比べ、朝の雪は硬くしまっている。
 準備万端で訓練場まで登って行きます 朝の雪は硬くしまっていて、アイゼンを利かせて歩きました。
 足が冷たくならないように、なんてぶ厚い靴下を履いていたら、これが間違いだった。靴の中で窮屈になった足が痛み出す。前を見れば、みなさんは整然と足並み揃えて登って行かれる。昨日と変わらず、いびつに動く自分がもどかしい。

足並みそろえて、いちにいちに安全にトラバースするため、ザイルを張る準備をする、その手際の良さに見とれます

 途中、屏風尾根基部をザイルを使ってトラバースする。ハーネスとカラビナを使い確保しながら、とはいえ、見ればかなり下まで斜面は続き、足がすくむ。支点でカラビナを掛けかえるときはちょっと緊張する。斜面を渡りきったら、今度は薮。足が深く埋まってしまい、抜け出すのにまたもがいてみたり。
 8時に吉田大沢6.5合目あたりに到着、雪上訓練を受ける。
 まずは滑落停止。身を翻し、ピッケルに体重をかける。・・・と頭では思っていても、どうも腕が伸びてしまう。紺野さんより、本番はこんなもんじゃ止まらないよ、とのお言葉をいただく。
 ザイルを張り、プルージック結びで短いスリングを結びつけ、結び目を持って登ったり、途中、手を離し、体重を預けてみたりを繰り返す。「結び目は美しく!」とアドバイスをいただく。――美しいということはバランスよく、均等に力がかかる、ということだと教わる。
 今度は確保を体験する。紺野さん、荻原さん、竹内さんが手際良くスリングやカラビナなどで支点を作っていかれる。山道具屋でばらばらに売られている道具が、確保に大切な状態に組み立てられていく。
 腰がらみ、肩がらみでの確保。セルフビレイしながら腰掛けてザイルをたぐる。ザイルが重く、考えていた以上にザイルを扱うのに力が要る。滑落者への衝撃が少ないよう、少し「流す」という。止めるタイミング、その感覚を掴むのも難しいと思った。
 11時に訓練を終了。みなさんは斜面をシリセードで下っていかれたが、雪面でスピードを出すのに慣れてないので、重心の位置を確認しながら、ひたすら歩いて下る。途中、鹿に出逢う。軽々と登って行くのがなんだかうらやましかったり。
 テント場に11時30分に到着。テントを撤収して12時40分に出発し、駐車場に14時30分に到着する。おつかれさまでした! 途中、お風呂で汗を流し、帰途に着く。

 以前、「体力がつくまで雪山へは行っちゃいけない」とお言葉をいただいたことがある。装備は重く、雪や氷の上での行動はラクではない。それに、今まで、経験のない自分はいつも「確保される側」だったけど、今回の訓練を受けて、初めて自分が誰かを支える場面に立つことも考えなきゃ、という重みに気づく。人間の重さ、責任の重さ。いろんな「重み」を背負っていくのが雪山なんだ、と実感する。
 「雪山に行ってみたい!」なんて軽い好奇心から歩き出したけど、学ぶべきもの、得るべきものはたくさんあると実感する。
 講師のみなさま、アドバイスをいただいたり助けていただいたみなさま、貴重な体験をどうもありがとうございました。


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