トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ327号目次

谷川岳一ノ倉沢烏帽子沢奥壁南稜
齋藤 吉夫

山行日 2008年5月31日
メンバー (L)竹内、齋藤(吉)

 5月30日(金)午後9時前、新宿駅西口出発。深夜0時頃一ノ倉沢駐車場着、雨が未だ止まないのでテントは張らず車内で軽く一杯やってから就寝。午前5時に起床し、軽く朝食を取った後、6時に一ノ倉沢出合を出発する。いきなりこんな所に来てしまったことを後悔すると同時に、目の前に展開する一ノ倉沢のスケールの大きさと迫力に感動しながら竹内さんの後を追った。寝不足のせいか、初めての本番という不安のせいか、妙に疲れる。途中、残置ロープが設置された濡れた岩のトラバースなど恐い場所を通過しながら中央稜基部にたどり着いた。ここから、滑りやすいスラブを恐々トラバースしてようやく南稜テラスに到着し、やっと一息付くことが出来た。
 そこでは1パーティーが既に取り付いており、あと1パーティーが順番を待っていたが、我々の後も続々と到着する。こんな大勢のギャラリーに見られると思うとプレッシャーを感じる。30分程は待たなければならないようだ。登る準備をしながら何気なく下を見ると、なんと、直径1m以上もある岩が斜面を駆け下っているではないか、幸い岩の行く先には誰もいなかったから良いが、そこがアプローチのルートだったらと思うとぞっとする。竹内さんから今は一番岩が不安定な時期だとは聞いていたが、山は油断できないと思いながらも、あんなのが来たら諦めるしかないかとも思った次第である。
 さて、私の人生の1ピッチ目が来た。最終ピッチが今日の核心部だと聞いていたのだが、登り始めてすぐのチムニーでいきなり苦労させられる。ハング気味の所で立ち往生の後、漸く突破できた。腕はもうパンパン。2ピッチ目は、ルートを慎重に見ながら進んだが、やっぱり本番は高度感があって恐い。その後、笹薮を50mほど歩き3ピッチ目へ。3ピッチ目は、最初、フェースを真っすぐ行こうとしたが果たせず、竹内さんにロープを出してもらって、リッジを左へ回り込みやっとのことで登ることが出来た。竹内さんは真っすぐ登ったのに・・・。やはり違う。4ピッチ目は、少し行くと1パーティーが待機していた。そこもビレイポイントらしい。その脇を通過して次のビレイポイントへ。5ピッチ目は、馬の背リッジ。右側のカンテへ移る時が露出感があってとっても恐かった。最終ピッチ上部は、ほぼ垂直のフェースだ。終了点直下は、直登できず右側のリッジに回りこんで漸く登ることが出来た。ここで、がっちりと竹内さんと握手をして喜びあい、私は、眼下に広がる素晴らしい景色に感動してつい大きな声を出してしまった。
ヤッパ一ノ倉沢はスケールがでかい  今回は、このまま頂上へ突き抜ける計画なので、2人はコンテで進み、危ないところでは、私は確保してもらいながら稜線を目指した。途中、ロープ、ギア類をザックに入れ、登山靴に履き替えたが、そこからが大変だった。また本格的な岩壁が現れたので、ザックから登攀装備を引っ張り出した。そこが最後のピッチになったのだが、危うい支点が、それも数が少なく、また、ブッシュを掻き分けながらの登攀には苦労した。今振り返ると、ここが一番恐かった。やっとのことでそこを突破した後も、ナイフリッジがあったり最後まで気が抜けなかった。笹薮をかき分け稜線にたどり着いたときは本当に嬉しく、また、ほっとして竹内さんと2度目の握手をした。
 稜線からは登山道なので楽な気分で歩くことが出来た。途中の肩の小屋でのビールはうまかった~。帰り道の厳剛新道は所々荒れていたが、初めて見るマチガ沢の景色はヘトヘトになっている私に最後の力を与えてくれた。
 今回は、私の初めての本格的な登攀だったが、登攀あり、藪あり、縦走あり、沢ありの今度の山行は今までにないような充実したものになった。竹内さん、これからはリードもできるように頑張りますので、今後もお付き合いください。

さ~てと、ビール飲むぞ~!!

〈コースタイム〉
一ノ倉沢出合発(6:00) → 南稜取付き登攀開始(7:30) → 南稜終了点(9:50) → 国境稜線(12:30) → 肩ノ小屋発(14:30) → 厳剛新道分岐(15:30) → マチガ沢出合(16:45) → 一ノ倉沢出合(17:15)


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ327号目次