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甲武信岳(真ノ沢林道)
森田 温

山行日 2008年9月12日~14日
メンバー 森田(温)

 秩父湖発のバスは徐々に高度を上げていき、ぽつぽつとでてくる集落を黙って通過する。対向車とすれ違うこともない。「秩父往還」という言葉がしっくりくる道である。栃本の民宿に泊まって散策しながら関所見物というのも悪くないな、紅葉もきれいだろうな、その時は快晴よりも霧雨の方がよいな、などと思っていると終点の川又に着いた。バス停前は一転して交通量が多い。大型車も行き来しており、秩父から雁坂トンネルへ向かう車は大滝ループ橋を通るのだろう(それにしても「彩甲斐街道」とはなんたるネーミングか)。
 さて、ここから入川沿いに林道を1時間、登山道を1時間で赤谷沢出合につく。ここまでの登山道は昭和45年まで森林軌道が走っており、そのレールが残っている箇所もあって遊歩道のようだ。鉄ちゃんでも廃墟マニアでもないが興味深く歩く。
森林軌道跡をたどる  出合からさらに2時間で本日の宿泊地「柳小屋」に着いた。この小屋は登山者より釣り師ご用達で、週末は結構込むことがあるらしい。小屋前でくつろいでいると二人連れの釣り師がやってきてそれぞれ10匹ほど釣っている。11時からの4時間で釣り上げたらしい。ちなみに竿は7m、餌はイクラとのこと。話好きの気の良さそうな二人組で、今夜は塩焼き、骨酒にありつけるかなと期待をしたが焚き火をすることもなく、すべて持ち帰るそうだ。来年は釣りをメインに柳小屋に来ようかな。どなたかご一緒しませんか?
 明日に備え真ノ沢林道分岐まで行くと、最近つけられた黄色いテープが垂れ下がっていた。この分だと甲武信岳まで順調にいけそうだと一安心。小屋に戻って、仕掛け作りをしている釣り師と話をしていると「あのテープはGWに千丈滝まで自分がつけた」とのことであった。真ノ沢林道は、千丈滝から先が核心部である。ふたたび不安になるが、まあなんとかなるでしょう。その後は誰も現れず、きれいな小屋に3人でゆっくりと眠れた。
 翌日は6時に出発したが、10分ほど前に出た釣り師が早速1匹釣り上げていた。千丈滝上までは踏み跡と黄色テープをたどり2時間で到着。丸太を渡って左岸に移る。事前に調べていた通り左岸上部に古い赤テープがあることを確認して、一服。ここは焚き火の跡もあり、沢屋、釣り師の幕営適地となっている。
 気合を入れなおして右手斜面を登る。踏み跡がはっきりしないところはあるが、基本的には沢を見下ろしながらの片斜面なので大きく道をはずすことは無い。ただ、所々で斜面が崩壊しており倒木が支沢を埋めている。昨年9月の台風の影響だろうか。このような箇所を20Mほど高巻いて通過すると、その先で踏み跡探しが大変になる。方向的には間違えようが無いのだが、踏み跡かテープがないと不安になってしまう。数m歩いては立ち止まって赤テープを探すようになり、時間がかかる。朽ちた桟道がでてきた。大丈夫かなと思うが山側に最近つけられたロープがあって、それほど緊張しない。
朽ちた桟橋  水の流れる沢を渡り、しばらく行くとジグザグの登りとなって、ようやくトラバース道から解放される。甲武信岳まで行きつける目処もたって気持ちに余裕が出てきた。ふかふかの苔が登山道を覆う、心地よい癒しの道をたどって、縦走路にでた。甲武信岳を経て混雑する甲武信小屋に着いたのは15時。
 地図読みよりも赤テープ探しに神経を使い、片斜面が続く道だったが、往年の登山道を単独で歩き通せた満足感は大きかった。

〈コースタイム〉
9月12日 川又(11:00) → 赤沢谷出合(13:00) → 柳小屋(15:00)(泊)
9月13日 柳小屋(06:00) → 千丈滝上(08:00) → 水場(12:30) → 甲武信岳(14:30) → 甲武信小屋(15:00)(泊)
9月14日 甲武信小屋(07:00) → 西沢渓谷入口(10:00)

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