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月山
大田 雅子

山行日 2008年6月21日~22日
メンバー (L)高木、鈴木(章)、飯塚、小堀、土肥、成田、宮野、大田

 月山への例会が出た。密かに憧れていた山だ。というのも遡ること何年前?まだ山に関心のない頃、ある日テレビを見ていて、面白いおじさんが出ていた。何を言っていたかよくは覚えていないが、何とも悠々飄々とした人柄がとても印象に残った。その人は作家の森敦さん。「月山」という作品を書いていた。その時すぐに手にとってみたものの、思っていたより堅そうな始まりにちょっと読んで止めてしまった。それから森さんの訃報を知り、また手に取りまた最初だけ読んで・・・と未だ読んではいないのだが、山登りを始めて一度は行ってみたいと思っていた山だ。
 前夜22時東川口駅に集結。車2台で出発する。途中SAで仮眠をし、21日朝、本道寺登山口へ。
 当初、岩根沢方面から入る計画が、前週東北方面で地震があり、土肥さんの事前調査で地震とは別で登山道が一部崩壊していることがわかり、本道寺口より登ることになった。
 高木さんと土肥さんに下山する志津方面に車1台を移動していただき、その間湯殿山神社を散策。しばらくして全員が揃い、梅雨の東京とうって変わって晴天の下、避難小屋泊まり&この時季しか食べられない月山タケノコや山菜を採って夜は天ぷら!気分はすっかりのんびり山行!!のつもりだったが・・・。
 エアリアマップによると、整備された林道を1時間半ほど進むことになっている。林道に入って早々に倒れかけた登山口道標が。しかし、誰もがまだ先と疑うことなく、タラの芽やら蕨、ウド、山ぶどうの新芽と山菜を採り採り先に進む。30分程経った頃、あるはずの道が途切れ、先や上の様子を見に行くが踏み跡がない。いやはや、あの道標が正しかったのかー!ということで、暑い暑い林道を振り出しに。道標に戻った時には1時間以上のロスだった。
 軌道修正したルートは視界も風もなく、目印となるものもなく、暑い登りをひたすら歩く。ようやく最初の目印、姥像を確認。「まだここかー」と頭を小突いて先に進み、しばらくして二股に着いたのは15時だった。途中雨が降ったりもしたが、だんだん視界もひらけ、花々も現れる。水芭蕉、カタクリ、ショウジョウバカマ、ギョウジャニンニク・・・目当てのタケノコにはまだ出会えず。しかしユキササも採れて今晩のメニューは万全!そうこうしていると、ようやく月山が全貌を現した。こんもり緩やかな稜線に雪渓がホルスタイン模様のように点在している。良い眺めに気分が持ち直す。
 これからは目指す山を見ながら小屋分岐へ。分岐を過ぎると雪渓が次々現れる。雪に隠された小屋への道を探しながら進むのは結構難儀で、のんびり行くつもりだった脚に堪えた。雪渓と藪をかき分け、到着した清水行人小屋。地元山岳会の人が管理人としてちょうど来ており、水道栓を開けてくれた。小屋は木造2階建てでとても広く、皆思い思いに濡れた物を干したり着替えたりした。薪ストーブも入れてもらいホッコリして、それからは採れたての山菜天ぷら堪能の宴へ。
小屋を目指して雪渓をトラバース  2日目、小屋を出てすぐ軽アイゼンを着けて、正面の広い雪面を直登する。緩やかに見えた稜線は、間近で見るとそそり立っている。ルートを探して、回り込んだりトラバースしたりしながら、ガシガシ登る。大雪城を越えてしばらくすると今度は岩場となる。ゴロゴロ大きな岩を越えると、花が咲き始め神泉池付近に到着、一般道に出る。そして山開き準備の頂上小屋の脇を過ぎて参道を登り、塀に囲まれた山頂、月山神社に到着した。
後方に塀に囲まれた山頂・月山神社  風が強くすぐに防寒をして、塀越しに鳥海山を眺める。しばし休憩、写真を撮り、姥ヶ岳方面に下山する。牛首を金姥へ。こちら側は雪もなく花が咲いて初夏の佇まい。金姥から装束場の間の笹藪にタケノコの気配が!しかし私以外のメンバーはもうすでに食べたこともあるようで、タケノコに執着無くドンドン下りていく。食い意地の張った約1名だけ笹藪に潜り込んでニョキニョキと下の方に頭を出している青い若いタケノコを採取。(帰宅後、網で焼いて頂きました、旨い!)まだまだ下りの距離もあるので、そこそこにして後を追った。
牛首付近、姥ヶ岳をバックに休憩  装束場の避難小屋で最後の休憩を取り、後はひたすら下る。石跳川の沢沿いを下ると、自然林道に入る。地元の山菜取りの人たちもちらほら。中に、腰の曲がった小柄な老人が大きなリュックを背負って、よく働いてきた大きな手に鎌を持ち、仲間とタケノコ採りをしていた。月山に登ってきたと言葉を交わすと、「良い山だろう」と誇らしげで愛情たっぷりのに味のある東北弁が返ってきた。その先は車の回収に急ぐ人、山菜採りをしながらの人と、皆バラバラに下りて戻ってきた車に集まり、いつものように温泉に寄って帰路に着いた。
 月山は私にとって最北の山となった。見た目はこんもりほんわかした山だったが、登ってみるとそう甘い山ではなく、豊かでとても良い山だった。この山を題材にどんな話を綴ったのか、今度こそ本も読んでみようと思った。(4ヶ月後の現在、未読)

〈コースタイム〉
6月21日 本道寺登山口発(09:30) → (道を間違え約1時間ロス) → 二俣(15:00) → 小屋分岐(17:10) → 清水行人小屋着(17:50)
6月22日 小屋発(06:10) → 月山山頂(08:45~09:10) → 牛首(10:10) → 金姥 → 施薬避難小屋 → 石跳川 → 月山自然博物館前(13:00)

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