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米子沢
渡辺 守

山行日 2008年9月28日
メンバー (L)箭内、平林、森田(温)、若沢、渡辺

 日暮里9時集合で、深夜に到着した巻機山駐車場はかなりの車がとまっており、そして朝にはマイクロバスから多くの登山者が下りてきた。流石百名山。
 どんよりしている空の下で、素早くテントをたたみ6時出発、登山客のながれに逆行して川沿いの工事用道路に入る。ガイドブックにも書いてあったが滑落事故が多いとのことで「事故多発につき沢登り禁止」の看板がある。連続する素晴らしいナメ床、ナメ滝で気分良く調子に乗って、うっかり滑ってしまうのだろうか?今年は沢登り例会に数回参加しているが、私はまだまだ初級レベルであるので、その時は期待と不安が混ざって気を引き締めていた。メンバーもジャンボな箭内リーダーと森田さん、虚弱ぎみの平林さん、ご年配の若沢さんと、若干(?)不安な雰囲気があったため、リーダーが最後尾で全員の様子を気配っていただいた(後に不安は的中、箭内さんが窮地を救う!)。
 しばらく川原が続いたあとには直ぐに小さめ滝が次々に現れて本番モードになる。たしか捲きは3箇所だけだったと思うが、最初の捲きは右岸からで勇名な3段40m上部に続く。せっかくなので、捲き道途中で沢に下り小さなナメ滝を越えていくと、その3段の滝に出会う。確かにすばらしい!
 この頃には青空も広がり色付き始めた木々とのコントラストがいい。水量はそれなりにあったが右岸から皆なんなく登れた。

3段40mの脇を軽やかに登る冷たい水と戯れる

 その後も20m級の滝が何度となく現れるが、どれもちょうどいい具合にロープなしで登れるので非常に気持ちいい。調子も上がってきた。水量の多い渡渉でみな腰までつかり、否が応でも気分が高まる。
 その後も、連続するナメ滝やゴルジュを難なく越えていく。足取り軽やかで初級メンバー中心とは思えない。2個目の捲きは、水量がなければ難なく登れるのだが、冷たいシャワークライミングを強いられる難関。先頭の私は無理してずぶ濡れになるが、皆さんは無理せず捲いて正解。

気持ちのいいナメ滝を軽やかに進むゴルジュを勇敢に登る難関滝を果敢(無謀)に攻める

 その後も気持ちいい滝とナメが繰り返し続き、ゴルジュが続く手前で左岸を捲く。ここは結構高度差があり岩ももろく慎重に進む。上、上に気をとられ崖の険しい道に入りこむところだが、沢に下りるルートを見つけて降りる。間違えていれば道はさらに続いていた。実際に後から来たパーティーは間違えて難儀した挙句にもとへ戻る羽目になっていた。ゴルジュの中をヘツリながら滝を越えていくと、いよいよ大ナメに出る。振り返ると景色がさらに広がり、谷川方面が一望できる。一方山の方は、ナメ滝が山頂方面に続き白い線を描いている。
大ナメ上部にて、そろそろ稜線  休憩の後に稜線を目指してナメを進むが、突然後方で大きな音がする。このときは広いナメをメンバーが三々五々ルートを探していたが、振り向くと大きな箭内さんの足に若沢さんが引っかかっている。たしか随分前に歩いていたので、20m~30mは滑ったのだろうか?そのまま滑ったら100mくらいで滝なので、それこそ大事故になる。ビックリして若沢さんの様子を伺いながら、箭内さんの位置取りとナイスキャッチを賞賛などしていると、さらに後方で平林さんの大声がする。前方左岸沿いに進んでいた平林さんも20mくらい滑ったようで、こちらは自力で止まり難を逃れる。平林さんは、「ナメは大の苦手で、九死に一生を得た。これで2度目だ、もうナメ沢には絶対行かない」としょんぼり気味。若沢さんはいつもどおりのにこやかな感じ。そうか、こんな感じでこの沢は大事故が多いのだと思うのだが、そんなことすっかり忘れて私もご機嫌に進んでいたので、自分が滝下まで滑っていてもおかしくなかったと反省。そんなこともあり、あとは皆ゆっくり慎重に進み、ナメ滝がだんだんと小川になり草原に出た。もう稜線は近い。うっすらと雪も積もっていて紅葉とのコントラストも綺麗である。この沢はツメの藪こぎが無いのが嬉しいと思いながら進むともう稜線であった。
ツメの藪こぎもなく、いよいよラスト  それでも、本当は避難小屋に出るはずが随分と上まで上がってしまった。稜線に出ると、朝見た登山客が次々と通り過ぎ、寒くなってきたので我々も小休止のあと、登山客に混じってそそくさと下山する。そこから2時間で駐車場に到着。午後2時、時間は非常にスムーズだった。
 皆さん今年最後の沢でしたが、天気にも恵まれ、評判どおりの景色と美しい滝に大満足の山行きとなりました。キモを冷やしたけれど評判どおりの米子沢でした。


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