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唐沢岳・幕岩大凹角ルート
坪松 聖幸

山行日 2008年10月27日~28日
メンバー (L)荻原、坪松

 大凹角ルートは、唐沢岳幕岩の入門ルートで、下降路の右稜も近く、中級者以上のレベルが必要、と書物には書いてあり今回の敗退は、自分たちの実力不足だったのだろう。
 26日夜、いつもの八王子駅南口に集合し車で七倉を目指す。途中何度も高速で眠気との戦いが続いたが、ついに途中で力尽き、途中のサービスエリアで仮眠を取る。3、4時間程眠っただろうかだいぶ頭がスッキリした。高速を降りてコンビニに寄って食料を買い込む。今更ながら24時間営業のコンビニがあってとても有り難い時代だなと感じる。
 七倉から高瀬ダムまでは、約1時間の歩きでダンプの通行に怯えながら道を歩く。ダムで何かの土木工事でもやっているのだろうか?しばらく歩くと石がたくさん積み上がって出来た高瀬ダムが見えてくる。これを登っても面白そうだが、「登るな」と看板に書いてあった。ダムの左下に沢があり、踏み跡をたどってアプローチを開始する。ここからだと幕岩がよく見える。沢沿いを歩き堤を越えて左岸側金時の滝を高巻するが、道を間違えて尾根の上まで出てしまったようだ。レリーフがあり、その先も尾根上を行ったが引き返し見落としたフィックスロープを見つけた。ここで時間を1時間くらいロスしてしまった。
 再び沢に降りて進むとワシの滝が現れ、巻気味に登りしばらく行くが、大町の宿が見つからず右稜のコルと思われる場所まで上がってきてしまった。ここまできたので、ザックを降ろして休憩してから、大凹角ルートの偵察を開始する。右稜のコルから左へトラバースするが、足場が悪く少し緊張する。慎重に左の方へ行くと、上の岩場の方が濡れているのが確認できる。トポ図と現地の地形を確認しながら取付を探す。洞窟テラスを下から確認し、取付と思われる所にボルトが確認できたのでザックをおいた場所まで移動して今度は、大町の宿を探す。下に200m位下っただろうか。登って来るときには気づかなかったがハーネスが目印のようで、そこから踏み後があり、大町の宿へと続いていた。書物に書いてあるとおりの立派な岩小屋で、他の宿泊客もおらず、水場もあり快適な場所である。早速テントを張り、軽くたき火をするために枯れ木を集める。道に迷ったせいもあるが、寝不足もあり身体は、クタクタである。本日の夕食は、坪松作の煮込みラーメンでソーセージやメンマ、ツナ缶、ネギなどと一緒にラーメンを煮込むとても簡単で手抜きな料理だ。自分は、食事についてはあまりこだわりがない。いっぱい体を動かして腹を減らせば何でもご馳走になるというのがこだわりみたいなものだ。山の中で暖かい食事がいただけるだけで有り難い。結構食べられると思って量をたくさんつくったが、2人ともすぐにお腹一杯になってしまい残りは、朝食に回すことにした。しばらくたき火を眺め、火の後始末をしてから就寝する。シュラフカバーとインナーしか持ってきていなかったのでかなり寒かったが、寝不足が幸いしてすぐに眠ることができた。
 翌朝、日が暗いうちに起床し、お湯を沸かしてコーヒーを飲んで目を覚ます。朝食はアルファ米に夕食の残りのラーメンをぶっかけて食べる。手早くできてとても美味しい。うちの犬にもこんなエサを与えたことがある。食事の後かたづけをしてガチャ類を準備していよいよ出発だ。緊張感を高めながら取付へ向かう。
 昨日ザックをおいた場所でガチャを身につけて、取付の所でアンザイレンする。1P目荻原さんがリードする。岩が濡れているがスラブを登り人工を開始する。次の支点が遠いようだ。長身の荻原さんでも届かない。チョンボ棒を使って、上の支点にあぶみを掛ける。支点もあまりよくないようだ。人工で凹角を越えて上から確保してもらう。小柄な自分は、もちろんあぶみの最上段に乗っても次の支点に届くわけもなく、チョンボ棒を出すのも面倒なのでゴボウで少し登りあぶみをかけて登る。2P目坪松リード、湿っているスラブ登る。フリクションを確かめながら登り、洞窟テラスを目指す。支点が少ないので緊張する。3P目、荻原リード。また人工だが、ピンが悪く、チョンボ棒を使用、その後右上だが、そこが難しく荻原さんも苦戦している。A0で行き、その後も人工だが、またもやピンが悪いので、ワイヤーを掛ける。慎重にあぶみに体重を掛けて登り小ハング下まで登る。人工から右上する時にまたもや自分は、ゴボウで登ってしまった。4P目坪松リード右上してボサテラスを目指す。最初の人工は、順調に進んだが、その後のフリーに移った後、右上するときに支点がないのでびびった。リスがあったので一本ハーケンを打ち込んだが、全然効いていないようだ。前進するしかないので慎重に進む。ボサテラスへの乗越がとても勇気が必要だった。無事にテラスの上に出てほっとした。5P目は、バンドを左にトラバースしてから凹角を登るようであったが、ここのバンドで行詰まってしまった。ほんとにここをトラバースするのだろうか?ボルトが2本打ってあったが、バンドと呼ぶには、あまりにもホールドと足場が少ないような気がする。そしてそこを越えて左上しようとしても、テラスまで残置支点が見あたらない。2人でルート図を見ながらあれこれ話をしたがここを無理して行くのは、危険と判断し、退却することにした。ボサテラスから2回の懸垂下降で取付まで戻った。やはり屏風岩や一の倉よりもワンランク上の場所だったようだ。無理は絶対にしてはいけない。
 取付から準備をした場所に戻り休憩する。あのまま無理をして登っていったら今日中に帰れなかっただろう。帰りに荻原さんが取付から写真を撮りに一度戻ったがその時に足首を痛めてしまったようだ。大町の宿に戻ってテントを撤収し、ゆっくりと高瀬ダムまで戻った。ダムの所で幸運にも上からタクシーが降りてきたので、それに乗って七倉まで戻った。その後は、温泉につかってから八王子に帰り解散となった。
 敗退という結果にはなったが、良い経験を積んだと思う。幕岩のスケールの大きさも把握できたし、またゲレンデと本番で経験を積んで挑戦したい。

〈コースタイム〉
大凹角ルート取付(06:30) → ボサテラス(09:50) → 懸垂下降2回で取付(11:00)


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