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野点山行・大寺山
峯川 正行

山行日 2008年11月9日
メンバー (L)峯川、飯塚、深谷、土肥、内山、服部、天城、前島、(伊能)、(寺園)、(橡本)

 昨年の5月に奥多摩の丹波天平にて記念すべき?初めての野点山行を実施させていただきました。新緑の中とても気持ちがよく、今年の5月も実施する予定だったのですが、外秩父七峰縦走にて膝を痛めてしまい、断腸の思いで中止となり、秋にリベンジと相成りました。今度の野点サイトの選定は色々と考えました。以前にも記載したかと思いますが、野点サイトに選定する幾つかのポイントは、1.人影が少ない場所。2.藪でなく平らであること。3.一応山登りを2時間ほどこなすこと。それにプラスして、紅葉が綺麗な自然林の中で行うという条件となります。たまに一人で奥多摩に行く時は、いい野点エリアがないかなあとロケハンのような感じで歩いているのですが、その候補にあったのが丹波天平の南側に位置する大寺山でした。大寺山というより、「いつも石尾根から見える、白い仏舎利(パゴタ)」と言った方が分かりやすいかと思います。大寺山の先には鹿倉山があり、そのまま西に進むと私のお気に入りの、のめこい湯があります。それでも、奥多摩の奥に位置するからなのか、地味なルートなのか、とても人影すくなく静かなのです。そして、野点するのに最適と思える場所が1ヶ所だけあり、今回はここで野点をすることを決定しました。
 今回は前回の野点より少しバージョンアップをするように試みました。それでも、それを実感できるのは私のみで、まさしく自己満足山行のような感じです。前回は鉄瓶を荷揚げしたのですが、今回は畳の上で実際に行う「風炉の運び点前(てまえ)」を山の上で再現してみようと。となると小道具はとても多くなります。柄杓、棗、茶杓、蓋置、釜、五徳・・・。茶道に関わる人間しかわからない語彙で申し訳ございません。そして、今回は釜を沸かす道具として「炭」を使うこととしました。バーナーではなく、敢えて炭を使う・・・。かつて一酸化炭素中毒で落としかけた私の命の「炭」をこの山で厄払いしたいという思いも密かにありました。そして、茶会に必須アイテムの練り切りの主菓子は、橡本さんにお願いを致しました。そして、せっかくなので自作の主菓子を荷揚げすべく山行にも初参加ということとなりました。
 当日は曇天でしたが、紅葉シーズンですので観光客で駅前は人で溢れかえっていました。当初の予定では8時35分の鴨沢西行きのバスに乗る予定でしたが、ちょっとした理由で9時25分発の丹波行きにすることに。それまで時間があったので、共同装備?の毛氈や炭などの振り分けを致しました。なんとも個性的なメンバーがバスに乗り込みました。遅くしたおかげでみんな座れてラッキーでした!今回は、お試し参加の伊能さん、寺園さんも参加でしたが、まだ緊張気味でした。深まり行く秋の奥多摩を眺めながらうとうとしていると取付場所である、諸畑橋に到着です。この地名より、バスから見える「土砂くずれのグラウンド」と言ったほうがピンとくるかもしれません。バスから見える光景で崩れているグラウンドが鴨沢グラウンドであり、いつも気になっていました。橋を渡り、左側の道をしばらく進むと林道の終点になり、沢沿いに細い道がついております。林道の終点はちょうど落ち葉があり、どなたかが「ここで野点してもいいではないですか」というご意見が・・・。少しその衝動にかられましたが、「山行」である以上、山に登らなくてはいけないのです。
 登り始めるとすぐに飯塚さんがキノコを発見!!この先にもあるかも?!という期待が・・・。暗い沢沿いの道を進むと少し休める広場で野点用の水を採取することに。伏流となっていてとれるか心配だったのですが、少し上流にいくと水が流れていたのでよかったです。やはり野点は山の水を使うのが一番です。その場所から薄い踏み跡で尾根側のルートに無理やり合流します。このルートは以前、大寺山への一般登山道だったようですが、今は廃道になったようで、そういえば取付にも案内表示などはありませんでした。
今年最後の紅葉を眺めながら野点部隊は進む  ルート自体は電光形で道形が出来ていてとても歩きやすいです。今年最後の紅葉をのんびり眺めながら、野点部隊は進みます。
 11時半にようやく鹿倉山に続く稜線の一般ルートに合流です。少し時間が気になってきたので巻き巻き状態で大寺山を目指します。曇りの中ですが尾根の紅葉は素晴らしく、早歩きでパゴタに向かいます。思ったより早く白い怪しい塔のある大寺山に到着です。標高は1000mくらいでしょうか。これがいつも石尾根から拝められるパゴタです。皆さんも初めて間近で見るようでびっくりしていました。私的にはドラゴンボールで出てくるカリン塔にしか見えませんでした。ここに白猫でもいたらカリン様と名づけてしまうのですが・・・。皆さんと一緒にお釈迦様には無礼ですが、同じポーズで記念撮影です。
大寺山の仏舎利塔にて天上天下唯我独尊  ここから一気に下ります。途中細い岩稜帯もありますが問題なく進めます。時間も押していたのでかなり急いで歩いてしまい、申し訳なかったかと思います。しばらく進み野点サイトにようやく到着です。皆様にはここまでかなり歩かせてしまいましたが、やはり野点山行なので2時間ほどは歩かないとまずいのです。この山域では唯一の台地状のサイトで紅葉が素晴らしく安息の場所です。多少地面が斜めになっているのが問題でした。到着するなり共同装備で割り振っていた毛氈もどきの赤布を出してもらい、すぐに野点の準備にとりかかります。私もすぐに持参した大事な釜と炭をだし、炭に火を着火する作業に移りました。皆様に担いでいただいた沢の水を沸かして、作務衣も着て野点の準備は完了です。橡本さん御自作の主菓子も無事山の上までやってきました。主菓子は抹茶を飲む前に召し上がっていただくのが作法ですので、懐紙と黒文字で振舞います。主菓子はこの時期に合わせて色紅葉です。

手作りの色紅葉の練り切り山に因んだ富士釜

 方々から「美味しい!」という声が上がったので、色々と橡本さんと打ち合わせをして準備をした甲斐がありました。
 今回は釜と柄杓を持参して正式な風炉点前を行いたかったのですが、富士釜はちょうど小さくてよかったです。山に因んだ富士釜はなんとも可愛かったです。ヤフオクで低価で購入して、日の目を浴びて釜も喜んでいることでしょう。
 皆様には律儀に正座をしていただき、なんとも恐縮でした。そして各自持参した茶碗を用いて抹茶を点てましたが、このような紅葉の山の中でお点前ができるのは茶人にとってこれほど嬉しいことはないのです。そして、この山域は人が少なく見世物にならないのもいいことです。嬉しくなってしまったこともあり、皆さんへの抹茶は大服となってしまいました。三口半で飲んでいただくことが作法ですがそれもできないくらいでした。

毛氈もどきを敷いて紅葉の中で野点各自持参の茶碗で一服

 雨が降り出しそうだったのですが、なんとか皆様に抹茶を飲んで頂き、最後に天城さんがお点前をしたいとのことで、私は天城さんに点てて頂いた抹茶を頂くことに。何とも様になります。それにしても天城さんの何事にもチャレンジする姿は素晴らしいです。
天城さんのお点前は様になります!  あっという間に1時間がたってしまい、すぐに撤収となります。三峰の撤収の速さは流石です!なぜ、これほど急ぐかと・・・。それは私にとって奥多摩でのお決まりのコースの餃子の天益に直行するためなのです。我々は人数が多いので予約をしたのですが、次にお客もあるようで15時からスタートということなのです。ですので、ここでも巻き加減になってしまったのです。できれば2時間ぐらいゆったり野点をしていたかったなあと。皆様にはまたまた悪いことをしてしまいました。
 20分くらいで深山橋のバス停に到着し、間もなくして「天益行きバス」が到着し車中の人となりました。
 奥多摩駅バス停の横の天益はやはり美味しい!私にとって大切なお店になってきました。
 今回は野点山行なのか餃子山行なのかわからなくなってしまったのですが、次回は新緑の5月に野点を行えたらなあと思っております。皆様ご参加いただきまして誠にありがとうございました。

〈コースタイム〉
諸畑橋(10:05) → 林道終点・取付(10:15) → 沢にて水採取(10:30~40) → 鹿倉山分岐(11:35) → 大寺山(11:45~55) → 野点サイト(12:30~13:40) → 深山橋(14:05)


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