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山スキー・月山
山崎 邦子

山行日 2009年4月18日~19日
メンバー (L)佐藤、三澤、小堀、成田、藤井、菅原、斉藤(吉)、鈴木(章)、高木、深谷、山崎

 様々な山スキーのコース取りが楽しめる月山。その中から、今回は山頂から北麓の北月山荘まで稜線をドーンと滑走するロングルートを、日帰りで走破する美味しい企画だ。
 ただしさすがに遠い。大勢のパーティで車3台となったが、明号、菅原号の2台は都内を18時半に出発(よく皆さん出られました・・・)、早出のできないメンバーは三澤号で21時出発となり、現地で集合となった。
 東北道~山形自動車道をひた走り、先発隊は月山山麓に午前1時ころ到着。姥沢駐車場までは夜間通行止めで入れないため、月山荘手前の体育館みたいな建物の駐車場に幕営する。先着メンバーが前夜祭を始めて1時間ほどで三澤号も到着。皆がそろって適度な酒宴を楽しんだあと、明日のためそこそこの時間で就寝となる。

4月18日(土)
 本日は寝不足もあるので足慣らし。手軽な石跳沢コースの滑走だ。天気も上々。幕場で各自朝食後、自然博物館へ車を2台デポして姥沢駐車場へ向かう。
 スキー場のリフトを1本乗り、リフト降場からシールをつけて姥ヶ岳へ登る。明日登る月山山頂がすぐ目の前だ。姥ヶ岳へはゆっくりシール登行で20分ほど。斜度も適度でよいウォーミングアップになる。
 明リーダーから「この登りで皆の足前、調子を見る!」と言われて気が引き締まったのか、一同の登りは軽快だ。
 姥ヶ岳山頂は360度の展望台。間近に月山山頂、湯殿山、遠くには鳥海山も見渡せた。
月山山頂をバックに姥ヶ岳山頂にて  軽く休憩後、シールを外して湯殿山とのコルへドロップイン! 滑り出しに少し雪切れ部分があり板を外したものの、あとは快適このうえない真っ白な大斜面。雪質もそこそこ締まっていて、11人が各々好きなコース取りでコルへと快滑する。
 今日は時間に余裕があるので、コルにて「V字コンベアー方式」の講習会を行うことに。これは、雪崩遭難の捜索における効果的な雪の掘り出し方法として、最近講習会など実施されているもの。今年のJAN(日本雪崩ネットワーク)のセイフティキャンプ参加で実践してきた明さんが、講師となって皆に説明する。ちなみに去年同じキャンプに私も参加したが、去年はこのカリキュラムはなかった。ここ1年ほどで急に注目されてきた掘削方法のようだ。わかりやすく言うと、(プロービングで場所特定後)雪崩に埋まった遭難者に向かって、真っ直ぐ上から多人数で掘って行くのではなく、斜め方向から先頭で掘るメンバーをどんどん交替しながらV字型に掘っていくという方法。やってみると、その名の通りベルトコンベア式に人力も分散され、掘った雪を捨てる場所も確保できるので、より効率的だという感じがした。
明リーダーによるⅤ字コンベアーの講習会  掘り出し練習で適度に息切れし、ビール&ワインで喉をうるおしたところで、いよいよ石跳沢の滑走だ。今年は雪が少ないので、もしかしたら沢が割れているのでは?と心配したが、ゴールの自然博物館までしっかり雪がついていて問題なく全走。あっという間に滑り降り、デポしてあった2台で姥沢へ戻る。
 本日はここからが大仕事。明日のコースの下山口である北月山荘へ車を回送するのだ。鶴岡市を回ってかなり北上するので、往復3時間ほどかかる。3台の各ドライバー佐藤、三澤、菅原さんと、私、藤井さんの5人が向かい、残りのメンバーは姥沢駐車場で待機、ゲレンデでもうひと滑りしたり、幕場&夕食の用意をしてもらったりしていることに。
 北月山荘までの往復は遠かったが、里は桜や春の花々がちょうど満開で、花見がてらのドライブが楽しめた。2台を置いて、5人が姥沢に戻ったのは16時過ぎ。すぐにテントで宴会に突入。ボリューム満点のすき焼き風の鍋&たっぷりのアルコール類で盛り上がる。今日の滑りは短かったので、皆、疲れもなく元気いっぱいだ。が、明日がなんたってメインイベント。行動時間も長い。深酒厳禁?余力を残して、それなりの時間に就寝となった。

4月19日(日)
 3時半起床。夜中にかなり風が強く心配されたが、日が出てくると収まり穏やかになった。少し雲が厚いが予報は晴天だ。朝食後、テントや荷物を撤収し、それらをすべて車1台に積み込む。
 藤井さんがヒザの調子が悪く居残るという。せっかくここまで来て天候も良いのに残念だ。だが無理は禁物。温泉でゆっくりしていてもらうことにして、10人が配車ごとの3班に分かれ、一応パーティごとの行動ということで5時半、姥沢をスタートした。
 昨日はリフトで楽々登った高低差を、営業時間前なので今日はシールでコツコツ登る。早朝で雪面が固く、特にピステンで圧雪された斜面はテカテカで時々滑る。菅原さん、成田さん、私が1パーティだったが、菅原さんがバシバシ飛ばしてリード。リフト上の姥ヶ岳分岐へは50分ほどで到着した。
 ここで私をはじめ、数人がクトーを装着。クトー登行は、牛首稜線まではトラバース気味なので少し歩きにくかったが、まだ雪面が固いので、登りになるとかなり楽だった。牛首は近そうに見えたが、けっこう遠い。牛首の稜線下も広大なスプーン状の大雪面が続いていて、滑ったら気持ち良さそうだな~と思いつつ、ひたすら山頂を目指して登る。
月山山頂直下の登り 背後に朝日連峰が圧巻  牛首から月山山頂へは少し斜度が増し、クトーがよく効く。雪の切れていない斜面を繋いで、何度かトラバースを切りながら登る。やはり今年は少雪なのか、ハイマツ帯をスキーで渡ったり、直下では夏道が出ていて板を外したりしたが、特に苦労もなく山頂に到着。
 山頂からは鳥海山が空に浮かぶかのように見え、真っ白な朝日、飯豊の山並みが延々と続く。山小屋や神社の建物は、雪に埋まって屋根のみ顔を出していた。
月山山頂 バックには鳥海山が  10人がそれぞれのペースでパラパラと到着。全員揃ったところで記念撮影し、行動食を摂ったり、シールを外して滑走準備をしたり。これで今日の登りはおしまい!あとは滑るだけ!と思うとワクワクしてくる。天候も良く稜線が見渡せるので、気持ち良く滑れてルーファイもしやすそうだ。
 まずは弥陀ヶ原をめざす。リーダーのご指名で、私がトップを滑ることに(とはいえ、GPSで後方からルートフォローしていただきました)。しばらくはなだらかな稜線通しでトラバース気味の滑りとなるが、それではあまり面白くないので、時々東側の斜面に滑り込んでみる。これも行き過ぎると登り返しになるので要注意だ。雪質は・・・というと決して良いとは言えなかったが、この時季にしてはまあまあだ。風の影響か、雪面が波打ったりえぐれたりしている所では太ももがダルくなってしまった。
 とにかく視界が良く、メンバーを確認しながら滑れるので安心だ。皆もそれぞれ好みのライン取りで快滑を楽しんでいる様子。途中、佛生池小屋を左の稜線に見過ごして、弥陀ヶ原へ。ここまで一気に滑ってきて腐ってきた雪に足もダルくなってきたので、御田原参篭所の小屋前で大休止とする。
 弥陀ヶ原は夏にはお花畑で有名な湿原で、ここまで月山高原ラインが延びて車で来ることができる。実はここから下部が尾根も不明瞭となり、樹林も濃くなってくるルーファイの核心部なのだ。リーダーや三澤さんのGPSデータでルートを再確認して出発する。
 滑り出しすぐは何度か月山高原ラインと交差し、カーブをショートカットしながら滑るのだが、随所が雪に覆われていていまいち道なのか不明瞭。雪面も割れている場所が出てきたので注意しながら滑る。
 何とか25000分の1地図で、車道から三角峰へ続く尾根への分岐点としてチェックしていた標高1206mのポイントに到着。ここで間違いないだろうということで北尾根に入るが、すぐに正面が急な崖となり滑走不可。右側も崖、左は樹木が密の急斜で「本当にこの尾根? 一本左の尾根では?」とザワついた。
 三澤さんが右の崖の棚から滑り込めないかと偵察に行ったが、ダメで登り返してきた(ご苦労様でした)。しかし、リーダーの「ここを下って登り返せば向こうに尾根が続いているし、この尾根で間違いないと思う」と言う揺るぎない確信で、再度ルート偵察を行う。
 結果、滑り降りられそうに見えなかった正面の崖だが、慎重に横滑りすれば下れそうということ。また、少し尾根を戻れば左側の林の急斜をトラバースして鞍部に滑り込めそうだということがわかった。リーダーほか数人は正面へ、私、コボさんほか数人は林のトラバースへ。無事鞍部で全員集合し、ホッとしたところで昼食&ビールの大休止。
 多分、通常の積雪だったら容易に尾根通しで滑走できる場所なのだろうが、今年の少雪で崖になってしまったのだろう・・・というのが我々の見解。約30分のルート迷走だった。
 ここから先は比較的明瞭な尾根で、木は濃くなってきたがルーファイも難しくなく、特に983m峰からの下りは疎林の快適な斜面。雪はかなり重たかったが、我々独占の今年最後かもしれない深雪滑走を楽しんだ。
983mピークからの下りは快適な斜面 ヒャッホ~!  三角峰はピンポイントで同定できなかったが、「ココらしい?」ということでスルー。開けたところからは前方下部に立谷沢川の流れと北月山荘の建物が見えてきて、あとはどこまで雪が続いて滑れるか、というところ。
 北月山荘のキャンプ場を目指し、最後は尾根東側から回り込んで杉林の合間をぬってのツリーランとなる。思った以上に雪は下部までつながっていたが、ツルや枝や根っこがウルサイ。根性のあるメンバーはキャンプ場まで板を付けて下ったが、リーダーや私は脱いだ方が楽チンと、途中で滑走終了。
 キャンプ場の東屋で無事終了のカンパイ、休憩後、林道を30分下って北月山荘へ。本来なら1台を姥沢まで取りに戻らなければならないところ、滑りに行かなかった藤井さんが1台を回送して北月山荘で待っていてくれたので、回送もなし、入浴も下山後すぐに北月山荘でできたのでとても助かりました。
 今回は遠かったので、運転が大変だったと思います。沢山のメンバーが集まり、車が回送できたからこそ行けたロングルートでした。いつも車を出して頂き、共同装備を用意してくださる皆さんに感謝、感謝です!

〈コースタイム〉
4月18日 姥沢P(09:00発) → リフト上(09:30) → 姥ヶ岳(10:00~10:20) → V字コンベア講習(11:30) → 石跳沢滑降 → 自然博物園(11:50) → 姥沢P・昼食(12:00~12:40車回送へ) → 北月山荘(14:20) → 姥沢P(16:20)
4月19日 姥沢P(05:30発) → リフト上(06:20) → 月山山頂(08:30~09:10) → 弥陀ヶ原(09:55~10:10) → 車道分岐先のコル・昼食(11:00~11:25) → 三角峰(12:15) → キャンプ場(12:45) → 北月山荘・入浴(13:30~14:50)

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