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甲斐駒ヶ岳
小幡 信義

山行日 2009年4月25日~26日
メンバー (L)小幡、森田(温)、山崎、渡辺

 5月合宿の前に足慣らし山行と思い、行き慣れた甲斐駒を計画していた。週末の天気は低気圧の通過で土曜は雨、その後も風も強くなるとのこと。出だしから心配な山行となる。
 新宿から23時54分発のムーンライト信州で小淵沢まで行き、仮眠を取る。今回もホーム内にあるログハウスは我々を快く迎えてくれ、3時半頃にシュラフに潜り込む。
 始発の電車の音に起こされ目覚めると5時半であった。空を見上げると、厚い雲に覆われ今にも降って来そうだ。おにぎりで軽い朝食をとり、タクシーで竹宇駒ヶ岳神社へ向かう。途中より、やはり雨となった。駐車場から尾白の売店の軒先に逃げ込み、出発の準備にとりかかる。いつもは2~3パーティーの山屋を見かけるが、今回は天気予報を見て誰もが中止してしまったのか、ひっそりと静まり雨の音だけがやけに聞こえる。晴れない気持ちであるが、歩けばまた変わるだろうと、神社を7時に出発する。先頭はM氏に行っていただく。
 尾白川の吊橋を渡り、樹林の落葉を踏みながら雨の中を無言で登っていく。横手・白須の分岐で1本とる。八丁登りの辺りから雨は時々みぞれとなり、「この分だと山頂は雪になっているな」などと思いながら登る。W氏は雨具が古いのか防水性が悪く、下着までしみ込んで「寒い、寒い」とつぶやいている。刃渡りの手前でアイゼンを着ける。岩場には早くも雪が積もっていた。みぞれから雪となり、風も出てきたようだ。鎖場や梯子を登り、黒戸山を右にトラバースの際は、時々踏み跡を外し、足がすっぽり埋まり難儀をしていたようだが、もうすぐ5合目に着くはずだ。5合目13時着。七丈小屋までは1時間弱であるが、身体が冷えきり、降雪の中重いザックを背負い、屏風岩を登りきるには一寸不安を感じ、本日は5合目に幕営する旨を伝える。小屋跡を整地し、エスパース4~5人テントを張る。取りあえずは濡れた物を乾かすための作業にとりかかる。テントの外は小雪が振り続いているようだ。時々枝に積もった雪が風にあおられ落下してテントを打つ。このまま降り続くと、「明日はラッセルをやらなければ・・・。ひょっとしたら頂上までたどり着けないかも・・・。」等々、不安が募る。私の不安をよそに、テント内は体が暖まってくると、つまみが出て自然と酒宴の場となる。明日は吹雪であったら下山の予定で、早々にシュラフに潜り込む。夜半、0時頃かトイレに出たら、空は星が出ていた。明日は晴れてくれるのか?
 4/26天気 雪のち曇り
 起床3時半。テントから顔を出し外を見ると小雪であった。風も少しあるようだ。判断に迷う天気である。取りあえず、朝飯を喰うことにする。W氏のつくねうどんはボリュームがあり、非常にうまかった。よくこれまでの食材を持ち上げて来たものだと感心してしまう。
 雲の流れが速く、時々光が差すこともあり、回復の傾向にあるのか・・・。取りあえず、3時間行動し、山頂に届かないときは引き返す旨を伝えて5合目を5時に出発する。本日もM氏に先頭をお願いする。
 よく寝て、よく食べ、荷物も軽いので、屏風岩の急な岩場も鎖につかまりながら順調に進んでいく。七丈小屋もコース通りの時間で通過だ。登山客が一人もいないのか、小屋は雪に覆われひっそりと静まり返って淋しそうだ。小屋の裏側から登山道は伸びているが、森林限界手前は20~30cmの積雪でラッセルとなる。M氏は大きな体をフル回転でがつがつトレースを付けていってくれる。後ろから見ていて、とても頼もしい。「頑張ってくれよ!」と声を掛けたくなる。幾度かラッセルを交替しながら、8合目の鳥居に到着する。見上げれば、ガスの切れ間に時々顔を見せる甲斐駒がそびえ立っている。「何故、天気が悪いのに登って来るんだ!」と怒っているようにも見える。もう10回は登っている甲斐駒。「これ位の天気でへこたれてたまるか!」と心で叫び、M氏に「行きますか」の声を掛ける。
 小さなリッジにルンゼ状の雪壁、吹溜まりのトラバースは腰までの深さだ。あそこが頂上かと思いきや、その先がまだある。小ピークを2つ越えた辺りで、右前方に祠がかすかに見え隠れしている。「おう!もうすぐ山頂だ!」と最後尾から声を掛ける。出発してから3時間45分。この積雪量からしてみれば、随分頑張ったと思う。甲斐駒山頂8時45分到着する。ガスっていて風もあり展望もなく、じっとしていると体温を奪われ、早く下山したいところだ。取りあえず記念写真を撮り、山頂を後にする。
無事に山頂到着  下りはアイゼンを引っかけないよう慎重に降りる。トレースは風に消されていて、どこを登ってきたのか分からない状態だ。ガスっていて視界もきかず、トップのM氏、迷っているようだ。ここはリーダーの出番と、私が先頭で降りていく。風が少し強くなったようだ。風に押されるように足が速まり、しかし慎重にアイゼンを効かせ、何とか安全な鳥居まで到着できた。この先は各自好きなように降りればよい。樹林帯はシリセードで滑り降りようとしたが、軟雪のため全くダメで、仕方なく腰まで埋まりながらの下山となる。七丈小屋を通り過ぎ、屏風岩の岩場も無事に下降し、テント場に11時にたどり着くことができた。
 テントを撤収し、11時45分には5合目を後にする。心配されていた天気も思っていたほど悪くならなかったが、4月の終わりにしては今までになく厳しい山行となってしまった。参加してくださった3名の皆様、ご苦労様でした。

〈コースタイム〉
4/24 小淵沢(06:30) → タクシー → 竹宇駒ヶ岳神社(06:50~07:10) → 5合目(幕営)
4/25 5合目(05:00) → 甲斐駒山頂(08:45) → 5合目(11:00~11:45) → 竹宇駒ヶ岳神社(15:30~15:55) → タクシー → 小淵沢(16:20)

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