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朝日連峰縦走
箭内 忠義
山行日2009年8月18日~20日
メンバー先発隊 (L)三澤、大田、山崎
後発隊 (L)箭内、鈴木(章)、澁谷、権

ドウドウドドード ドドードドー
 大きなブナの木 吹き倒せ
ドド―ドドウドウ ドドードドー
 小さな草木は舞いあげろ
ドドドドドッ ドドドドドッ
ドウドウドドード ドドドドドッ
朝日連峰で風の又三郎に出会ってしまった。

19日(日) 嵐
 日暮沢小屋を出たのは午前7時10分だ。空は曇天、小雨が降っているような降っていないような天気だ。風は、音だけがドド―ドド―と響いていたが、木々を多少揺らしても体に吹きあたることはなかった。天気は悪いが出発だ。三澤さんたちの先発隊が天狗小屋から竜門小屋に向けて歩きだしていると思ったからだ。どこかで合流したいと思っていたのだ。
 今日の行動予定は竜門山、西朝日岳を越えて大朝日小屋までだ。いざ、出発だぁ。出発時には雨は降っている気がしなかったのでそんな嫌な気分ではなかった。しかし、雨具は着て行った。流石に百名山の山だ、登山道はしっかり整備されている。箭内、権、澁谷、アッコさんの順番で登って行った。ずっと登りなので、できるだけゆっくりペースで歩いて行った。30分後、レイヤード。衣服、荷物等の調整をした。澁谷さんの顔、全面から汗がプチプチと噴き出し、その汗が鼻先、あご先から滴り落ちていた。リックを持ち上げたら何が入っているのだろう、やたらと重い、一つ二つの荷物を箭内のリックに入れ、アッコさんのリックを澁谷さんが担ぎ、澁谷さんのリックをアッコさんが担ぐようにした。
 朝日の麓の方は森が濃く美しい。しかし、ずっと登りだ。高度が高くなり、展望が開けるところに着くが、振り返って見てもガスで白い霧しか見えない。残念だ。60分から50分ごとに休憩をとっていった。とりあえずのピーク清太岩山1465mを目指したがなかなかつかなかった。9時35分頃、樹林が切れた所に三角点があった。何の標識もないが多分そこが清太岩山なのだろう。11時10分頃、尾根道から稜線の道へと合流した。この頃になると風は嵐のように猛けり狂っていた。道標を入れて記念写真を撮り、これからの行動を協議した。天候が悪いので大朝日小屋に向かわず竜門小屋に泊まることとした。

稜線にでてほっと一息猛風で顔があげられない

強風の合間をぬってポーズ  竜門小屋に向かって歩き出したが、稜線上はまさに嵐だ。猛風で歩けない。雨粒がピシピシと小石のごとく顔に当たり痛い。
 猛風に翻弄され倒れこむように竜門小屋にころがりこんだ。11時30分だ。小屋の中は天国だ。あったかい。雨風がしのげる。とても綺麗な小屋だ。小屋番の人が、濡れた雨具は入り口にかけなさい、2階の好きな所で休みなさい等々と声をかけてくれ、とても親切だ。
 小屋にたたきつける風雨はギ―ギ―ゴーゴーとかなり激しい。まだ午前で早いが、竜門小屋泊まりにして正解だった。小屋が広々と使えて気持ち良かった。嵐のため今日の小屋はすいていた。結局4パーティーが小屋でお世話になった。アッコさんが三澤パーティーと合流したらみんなで食べようと持ってきたスイカは今日はお預けだ。竜門小屋の管理人さんから、三澤パーティーは今日、狐穴小屋に泊まると教えていただいた。小屋には無線機があったのでお借りして三澤パーティーと連絡をとった。三澤パーティーも嵐のため、動けず狐穴小屋泊まりとした。明日は竜門から日暮沢小屋にいく。日暮沢小屋で大朝日岳を回っていく箭内パーティーと合流と決まった。
 さあて、明日の予定が決まれば今日はまだお昼といえどもあとは飲むだけだ。昼から寝るまで2人はお酒を飲んでいた。気分よかたい。

スイカは権さんが運びました 今夜の食当はシブ、ハヤシライスです
小屋が広々と使えました。つまみありがと

20日(月) 快晴
 4時起床、5時10分出発だ。雨は上がっている。が、ちょっとガスっている。6時15分に西朝日岳に到着。
 7時を過ぎたあたりからぐんぐん雲が流れ、青空になってきた。展望が一気に開け、歩いていて気分がよい。山肌に雪渓が残っていた。権さんは、「初めて雪渓というものを見ました」と、とても喜んでいた。結果的に、昨日、竜門小屋に泊まってよかったということであった。大朝日小屋まで行っていたら今日は景色を眺めながら気持ちよく歩くことはできなかったからだ。

西朝日岳の頂上だ。嬉しい 雪渓を初めて見たと権さん喜ぶ
花も綺麗です メンバーお揃いで

 朝日の稜線を歩くのは本当に気持ちがよい。木々の緑が美しく、森が濃いのだ。木々からの息吹が立ち上がり山全体を覆っているような感じだ。白い雪渓がいいアクセントとなっている。幸せな気分で歩いていられた。8時10分 大朝日岳頂上です。360度の展望です。月山、鳥海、飯豊等が見えました。韓国では頂上酒というのをやります。と、権さんに教わったので、大朝日岳の頂上で早速頂上酒で乾杯です。赤ワインです。うまかったなあ。天気がよく、景色がよく、仲間がよく、気分がよく心が弾むひと時でした。

頂上酒で乾杯です 青空 大朝日小屋のおじさんと共にパチリ

 昨日は嵐で風で吹き飛ばされそうな天気でしたが、今日の大朝日岳の頂上は白い雲海の上に青空が広がっている。全く、ドラマチックな山行だ。頂上から大朝日小屋まで下りてきた。小屋の管理人さんは年配の方だった。ビールありますかと聞いたら、「ないよ。」とすげない返事。仕方ない。朝日連峰の中で一番大きな小屋らしいが、流石に昨夜は嵐のため泊まる人も少なかったという。混むときには百人は泊まるそうだ。箭内はここで竜門小屋に長袖の山シャツを忘れてきたことに気づいた。管理人さんが連絡してくださるというので住所を書いた紙を渡しておいた。(忘れた長袖シャツは竜門小屋の管理人さんが26日に小屋まで取りに登り、送ってくださった。感謝。)
 さて、快晴の中、大朝日岳の頂上を踏んだので、あとは、三澤パーティーが待つ日暮沢小屋に下るだけです。下りなので気分は楽です。下る途中の小朝日岳の頂上は踏まず、西の山肌をトラバースして楽をしてしまいました。天気が良かったのはいいのですが、ちょっと暑く感じます。途中の水場で汲んだ水が本当においしく感じました。また、ブナの大木があり、森がとても美しいと感じました。なにか元気の元を森から頂いたという感じさえしました。森の香りを身にまといながら下って行きました。驚いたのは澁谷さんの汗の出方です。顔いちめん、顔面一杯から玉のような汗が噴き出ています。おでこ、頬、鼻の回り、目の回り、あごのラインと、汗が流れ出ていて、鼻先、顎から汗が滝のように滴り落ち、水車がからころと回っています。新陳代謝がすこぶる良いようです。帰りは必ず温泉だなと思いました。比べてアッコさんは全然汗をかいていません。
 4時間強歩いて、14時過ぎに日暮沢小屋に着きました。三澤パーティーが待っていました。
 アッコさんが持ってきて、権さんが運んだスイカがやっと食べられます。最初から小屋に置いておけばよかったのに。仕方ない。権さんご苦労様でした。
やっと全員揃いました。めでたしめでたし  さて、三澤さん、大田さん、山崎さんたちと合流できたので、みなで温泉に行き、食事をし、また、朝日に来ようという思いを共有して、今回の山行の終了としました。

〈コースタイム〉
7月18日(土)日暮里(14:00) → 日暮沢小屋(19:00)
7月19日(日)日暮沢小屋(7:10) → 清太岩山(9:35) → 竜門小屋(11:30)
7月20日(月)竜門小屋(5:10) → 西朝日岳(6:15) → 大朝日岳(8:10) → 日暮沢小屋(14:30)

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