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平ヶ岳~至仏山
鈴木 章子

山行日 2009年6月20日~23日
メンバー (L)鈴木(章)、成田、渡辺、内藤

 長~い間、暖めていたルート。しかし、これほど苦しめられるとは・・・。
 少し資料が古かったのが失敗だったのかな。『山渓』に載っていたので少し安易な気持ちだったのも反省の一部でした。予定より、下山が1日遅くなってしまったことは、皆様への御迷惑と、私の反省以外、何もありません。下山日が遅れたのは、私にとって今回が初めて。何となく、嫌なものですねー。私にとって一番救いになったのは、参加者全員(表面だけでも)明るかったこと、帰る希望を失わなかったことです。この面は本当に感謝しています。天気(展望)が、もう少し助けてくれればと欲の部分もありましたが、最終日は携帯電話の通じる場所までへの、時間との戦いでした。
 前夜発、尾瀬御池行きバスで新宿を出発。御池 5:40着。朝靄で、快晴の兆し。何だか思っていたより涼しい。予約した平ヶ岳行のバスは7:45発。それまで各々時間をつぶす。沼山峠に行く人は、バスでドンドン出発していく。平ヶ岳行バスの乗客は我々4名のみ。「少しお喋り過ぎないかい?」と、言いたいくらいの運転手。そんなバスに揺られ約30分で平ヶ岳登山口に。今日は一般道。できれば平ヶ岳山頂の幕場まで。取り付きからヤセ尾根の急登が続く。南面にあたり、直射日光がギラギラ。快晴であることは、非常に嬉しいことではあるが、睡眠不足の体には辛い。元気な男性2人は、先に行ってもらい、女性2人は各々のスピードで登った。下台倉山には、立派な山名板が有ったが、台倉山には三角点のみ。台倉山を下ると、幕場に良さそうな台地、そこが水場のあるところだった。先行の男性2人は、そこで我々の到着を待っていてくれた。水場は5分位下った沢。沢はまだ雪に被われていた。ゆっくり休息を取り、再び出発。そこから平ヶ岳直下までは、緩い登り。タムシバの白い花、岩カガミ、ツツジ等に目を愉しませながら進んだ。この辺りから日帰りの人が降りてきた。単独、2人連れが殆ど。
 ここは、谷からの風が爽やか。会津、只見、越後の山々が美しい。谷風と展望に支えられ最後の登りをクリア。眼下に木道に挟まれた姫ノ池が目に入った。空の青さを写し輝いていた。見渡せば、山頂へ、玉子岩へ木道は続いている。ここは天女の休息地?美しい!苦労した分、ここは別天地だ。20年前に来た時もこんな景色だったのだろうか。もう、スッカリ忘れている。成田さんの案内で幕場指定地に行った。池ヶ岳と平ヶ岳の鞍部にあり、近くに沢があったはず。が、そこはまだ雪の中、僅かに雪の消えている所に幕を張り、玉子石の見学に全員で出かけた。玉子石には、特別の感動は無かった。
玉子石の前で  山は夕暮れの準備、明日の悪天を予想しているかのようにスッカリ霧に包まれた頃、2人連れが隣にテントを張った。会話をすることも無く床に着いた。夜中に激しい雨音で目は覚めたが、「明日はー」疲れた体は、心とは別問題。雨音も遠くなっていく。
 翌朝、目が覚めると、既に隣のテントは無くなっていた。激しい雨の中、山頂までと出発。『このまま下山してもバスが無い、行くしかないのかなー』。土砂降りの雨の中、山頂で記念撮影。取り付き尾根を探した。ガスで視界ゼロ。右へ左へと行くうちに視界が開け、目的の尾根を確認。後は心迷うことなく4人で一気に雪渓を白沢山方面目指し下った。雪渓の上には、我々の足音に驚いてか多くのサンショウウオが雪渓の上を走っていた。滑るのか、あまり上手とは言えない歩き方だった。
 昨日見た、池塘一杯のオタマジャクシの卵といい、ここには自然が溢れていた。1936m位までは、池塘と藪の繰り返し。
雨の中、地図を広げてルート確認  軽い気持ちで進んだ。天気も少しずつ回復兆し。展望も広がり、白沢山~1895m辺りまでの藪は気になるほどではなかった。1895mから1920mの中間から背丈を越す笹薮が始まった。渡辺さん、成田さんが先頭を交代しながら進んでくれた。1920m辺りから景鶴山方面の尾根を確認。1920~1911m(二俣分岐)から大藪になった。1911mから、私に先頭を交代。内藤さんが遅れ気味になってきた。15時、青空にはなったが、このままススヶ峰までは進めないと判断。1852mPの直下にあった雪渓の上に幕を張った。水は平ヶ岳からここまで持ち上げてきた。ここから燧ヶ岳が良く見えた。夕日に染まった空を見ながら、成田さんのいつもの「山はええなー」が、聞えてきた。静かな、静かな夜だった。この時点では、明日、昼頃、至仏山。帰路、戸倉で民宿にでも泊まろうか。何て考える余裕もあった。
 今日こそはと、3時半起床、5時半出発。1852mPを過ぎ。ススヶ峰への大藪に突入。山頂は確認せず、池塘を通過。素晴らしい池塘だった。「戦場のクリスマス」に等しい気分。
ススヶ峰付近の湿原  ゆっくりできないのが非常に惜しい。湿原から1818mPまでは、笹より、アスナロ、石楠花、コメツガの藪がメイン。この日は、ほとんど、渡辺、成田、内藤、アッコの順で前進。渡辺さんのパワーに感謝。1818mPで『ススヶ峰⇔至仏山』のブリキのプレート発見。ルートが合っていたことを確認。しかし、そこから岳ヶ倉山(1816mP)までの遠かったこと。もし、道があれば20分くらいで着いていただろうに。岳ヶ倉山から先は、また、猛烈な笹薮。更に1727mP手前から雨。視界は悪くなる一方。「アルバイトをするより、遅くなってもよいから確実に」を、合言葉に、GPSで、何度も、現在位置を確認。特に、1727mPから地形図で、1cm程東に進んでから、南東に延びる尾根に乗るまでに1時間近くかかった。1663mPにも、また、『ススヶ峰⇔1668に至る』(東大ワンゲル部)のプレートを確認。嬉しかった。この日も、時間はドンドン過ぎていった。幸いなことに、雨は大降りにはならなかった。1668mPを過ぎ、1/25000 地形図が至仏山に変わる5mmほど手前の鞍部は、大木の樹林帯が僅かに続いた。藪は無い。近くには豆粒ほどの雪渓。時刻は16時半。歩き出して11時間。ここを幕場に決めた。小雨の中、テントを張り、雪渓の真っ黒な雪を溶かしお茶にて飲んだ。昨日までの豪華な食事ではないけれど、ガスボンベに余裕があったので、気持は、全員明るかった(これが本当に助かった)。成田さんは、現在、フリー。内藤さんは主婦。私は翌日の休みを取ってきた。問題は、渡辺さん。「僕は何とでも成りますから」(ほんとうだったのかー)。携帯電話は全員不通。どのメーカーも駄目。このような場合の対処方法も必要では。夜中、滝のような雨が降り続いていた。
 翌朝、3時起床。行動食で朝食を済ませ、明るくなるのを待って出発。外は小雨。昨夜の大雨が収まってくれて良かった。こんなことでも喜べる心理状態。しばらくは笹薮。地形図が至仏山になる頃、低いアスナロ。2時間ほど進んでも電話は不通。地形図上では殆ど進んでいない。予定では12時頃には、鳩待峠。4人の予測はドンドン外れていく。アスナロが石楠花に変わる頃、成田さんが(au)メール送信できたと言う。連絡、ギリギリの時。ドコモはこの時点では駄目だった。アスナロ、石楠花、ハイ松が終わると、背の低い笹からお花畑にと変わっていく。長い岩場のニセピークを幾つも登りきると、山頂だろうか、遥か彼方に人工物が目に入った。天気もいつのまにか回復して青空。至仏山は、富士山同様、裾野の長い長い山だと悟らされた。岩稜帯に入ってからは、ソフトバンク以外は通話可能になった。各自、連絡を取り合った。11時 やっとの気持ちで山頂へ。誰もいなかった。青空の下、全員の労いも兼ねて、ゆっくり休んだ。山頂から、尾瀬ヶ原、越後の山々。勿論、我々が歩いてきた、平ヶ岳からの縦走路すべてが、美しく見えた。
ようやく至仏山に到着  成田さんの「山はええな~」が、聞えてくる。4人とも、苦労はしたけど、お駄賃のように晴れてくれたこの日、申し分のない4日間になったのでは。鳩待峠方面に下山中、小至仏山でパトロール隊と出会う。「至仏山は『入山禁止中』を知らないのか」と、叱られた。(私は知りませんでした)更に、「何処から入山したのか」と、「平ヶ岳」「エッ!」
「登山道を外さないように歩いてください」
『登山道以外歩きたくない』(私の心)。下山するごとに暑くなる。全員ボロボロ。鳩待峠~戸倉へ行き。戸倉で入浴後、都内への直通バスで解散。お客は数名。戸倉では、空腹を満たしてくれる店は、すべてお休みだった。

〈コースタイム〉
6/20 快晴(非常に暑い)
御池発(7:45)=平ヶ岳登山口(8:20~25)林道 → 登山口(8:40) → 前坂(9:20) → 下台倉山(10:50) → 台倉山(11:20) → 水場(11:40~12:25) → 白沢水場(13:00) → 姫ノ池(14:25) → 幕場(15:00) → 玉子石(ピストン)
6/21 雨のち曇り
幕場(5:55) → 平ヶ岳山頂(6:25) → 1920m辺りの地塘(7:30) → 白沢山(9:00) → 1895mからの鞍部(11:00) → 1920m辺り(13:00) → 1911m(13:40) → 1852P幕場(15:30)
6/22 曇りのち雨
幕場(5:30) → ススヶ峰 → 池塘 → 1818mP(8:20) → 岳ヶ倉山 → 1727mP → 1663mP(標識有り) → 1668m → 1650m辺り → 地図の切れ目 → 幕場(16:30)
6/23 曇りのち晴
幕場(5:00) → 至仏山(11:00~50) → 鳩待峠(13:45)=戸倉=東京

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