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薄根川川場谷
森田 純子

山行日 2009年9月12日~13日
メンバー (L)小幡、金子、内藤、大南、森田(純)

 日帰りの沢は何度も経験しているのですが、沢での1泊はなかなか決心できず、でも、ずーっとあこがれ続けていました。そして、今回!素敵な初体験をさせてもらいました。
 前夜、東所沢に22:30集合。2名が諸事情で参加できず、5名が車2台に分乗して出発。赤城高原SAで仮眠し、翌6:00に桐の木キャンプ場に向かいました。下山用に1台を川場野営場へ移動させ、身支度を整えて7時半には、桐の木キャンプ場をあとにしました。
 天気予報は弱雨。この沢には、おひさまでキラキラ輝くスダレ状の滝やゴルジュから見上げる青空の片々を期待していたのですが、今日は無理なようです。でも、沢の中で泊れる期待で、お天気も気にならず元気よく出発しました。
桐の木キャンプ場から出発  キャンプ場を抜け、沢に沿って山道をしばらく歩き入渓。1時間ちょっとで、獅子の牢。ここは、本当に奥に獅子が潜んでいる洞窟ではないかと思えるちょっと不気味なゴルジュでした。その後もゴルジュ帯で豆滝や小滝がいくつも続きましたが、これといって特徴のある部分がなく、現在位置を確認できないまま、11時半に川場剣が峰沢に出合い、核心部の8m滝に来て現在位置を確認。ここはロープを出してもらい、慎重にクリア。その後は、いくつものスダレ状の滝が続き、巻いたり登ったり、お助け紐のお世話になったりで、順調に遡行が続きました。13時には剣が峰上ノ沢と家ノ串下ノ沢との出合いに着き、そこからはテン場を探しながら進みましたが、両サイドは笹薮の斜面で、なかなか4~5人用テントを張れるような場所がありません。標高1700mくらいの所で、右岸にテン場に使用されたらしいスペースと焚き火跡を発見。14時、テントを設営しました。
 さて、沢泊初めての私は、皆さんの動きを観察。まずは?ハーネスとヘルメットをはずして、木にぶら下げる・・・フムフム・・・真似する。次は?焚き木を集める。「こんなに濡れきった木に、火がつくのかしら?」と、おおいに疑いながら、私も真似して焚き木拾い。
 さあ、いよいよ点火です。KKさんが、「本当はガムテープがいいんだけど、今日はもってきてないから」といいながら、テーピング用の白いテープを2~30cm切って火をつけ、細い小枝ばかりを束ねた下に入れました。枝の間から白い煙が立ち昇ります。「この煙がどんどん出てくるといいんだよ」とOBさん。全員が一言も発せず、立ち昇る煙を見つめます。まるで神聖な儀式のようです。雨の中、濡れた枝に火をつけるのは、やはり手間取り、この儀式を数回、最後はOBさんが持ってきていたチューブの着火剤と新聞紙を使い、見事焚き火完成!
 雨の中、思ったより気温が上がらず、寒い思いもしながら到着したテン場での焚き火。あったかーい。相変わらずの雨の中でしたが、焚き火を囲んで体を温めました。
雨の中の焚き火  それでも、今晩のおでん宴会に、この雨はちょっときびしくて、しぶしぶテントに入りました。この焚き火は、OBさんが面倒をみて、雨の中でも燃え続け、翌朝の火種にもなったのです。すごい!
 2日目、4時起床。夜中も雨の音が聞こえていたので、どうかな・・・と思っていたら、外で焚き火をおこしていたOBさんの「満天の星、月も出てるよ」の声。今日は武尊山頂から360度の展望を期待。
 ミソラーメン(私はお粥)の朝食を済ませ、テント撤収。6時出発でした。
 時間的には2時間で、標高的には200mで稜線に出られるところにきているはずです。ところが、行けども行けども次々と滝が現れます。ロープも何回か出してもらいました。最後に、垂直な黒っぽい滝に突き当たったところで、左を巻いてヤブに入りました。この時点で、出発からすでに2時間たっていたのです。なんか、ちょっとヘン!
 ここからが、いよいよ覚悟のヤブ漕ぎです。背丈以上もある笹中心のヤブは、前を行くリーダーをすぐ見失ってしまいます。それでも、はじめは良かったのです。だんだんと斜度がきつくなり、リーダーが取ったルートがわからなくなってしまい、「OBさーん、どっち方向に行くんですかー」と叫ぶと、上の方から「まっすぐ、まっすぐ」という返事。両手で笹をしっかりつかみながら、上へ上へと登っていきましたが、斜面はどんどんきつくなり、笹をつかむことはできても、足がすべって踏ん張れません。後ろから来たNTさんに「リーダーはまっすぐ上がって来いというんだけど、ここからは私にちょっと無理みたい」というとNTさん、「リーダーがまっすぐ上がれと言うなら、そうするしかないよ」と言って、私の前を登り始めました。でも、やっぱり厳しい!二人して笹をつかんだままバンザイ状態、軒先の干物状態!そこで、NTさんが辺りの状況を見定め、右方向の斜面のほうが緩そうだから、そっちに移動しようということになり、彼女は上手に移動していきました。
 私はといえば、相変わらず干物状態で、腕も疲れてくるし、足場をしっかりとれずに横移動などできないよー「お助けひも~、ロープ欲しい~」と口走り、下ではやはり沢初心者のOMさんが「オチソ~」と二人して泣きが入ってしまいました。NTさんから「ここまでくれば、登りやすいから」という声が聞こえます。そうだなぁ、ここにこうしていても、本当に干物になるしかないわけだし・・・と意を決し、足で笹を掻き分けて足場を作りながら、少しずつ横移動を始めました。そして、ヤブに入ってから1時間、手を使わずに立ち、皆の顔を見ることができる場所に集合できました。
 リーダー「ここから見えるんだよ、稜線。登山者が歩いているのが見えたから。でも、まだ1時間くらいかかるかな」とのこと。今度は、OBリーダーの後を離れないようにしっかりとついていきました。先頭を行くOBさんの、藪ラッセルの力強いこと!鉄人28号のようです!
藪こぎルート検討中のリーダー  そして、ついに抜けました!武尊山の一般道は何組もの登山者が行き来しています。私たちは、晴れ晴れとした顔で装備を解き、さて武尊山頂を経て下山です。テクテクと歩き始めましたが、先頭リーダーの「おお?」という声。そこは分岐なのですが、標識には私たちが来た方向が<武尊山>向かう方向が<前武尊>とあるではないですか!?どうも、中ノ岳直下につめあがってしまったようです。武尊山頂を踏めずに残念というか、200mの登りをショートカットできてラッキーというか、でもヤブ漕ぎ大変だったよな~と、複雑な思いで下りてきました。
 NTさんの話によると、むかしのガイドブックには今回の私たちのルートも紹介してあったとのこと。予定とは違ったコースでも、次々と現れる滝も藪もどんどんクリアして稜線まで行き着いてしまうこの頼もしさ!体は結構しんどかったのですが、ベテランに囲まれ「大船に乗った」心地よさ、気持ちはゆったりと楽しい沢登りでした。

〈コースタイム〉
9/12 桐の木キャンプ場(7:35) → 獅子の牢(8:50) → 川場剣が峰沢出合(11:25) → 核心部8m滝(11:40) → 剣が峰上ノ沢・家の串下ノ沢出合(13:00) → テン場・1700m(13:45)
9/13 テン場(6:10) → 藪漕ぎ開始(8:40) → 稜線-エリアマップの水場・笹清水(10:30) → 前武尊(12:25) → 川場野営場(14:05)

*写真とコースタイムの記録は内藤さんの協力です。


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