【10月31日】
通勤渋滞の名古屋を抜けて米原ICから伊吹山に向かう。伊吹山が登山の対象かと言われれば「??」だが、一応は一般コースのあるスキー場から取り付くことにした。しかしゴンドラリフトが運休で出鼻を挫かれる。
仕方がないので伊吹山ドライブウェイで山頂近くまで車で登ることとなった。ツェルトと非常食を持って出発するが周囲は観光客ばかりで意気があがらない。1時間半ほど遊歩道を散策して、まずは1山制覇(かな?)。
明日の予定はメインの北鈴鹿なので御池岳に向かう。鈴北岳登山口の鞍掛トンネル入口に良いテン場があり、水も流れて快適な宿が確保できた。
【11月1日】
昨日と違って今日はフツーの山歩きの日。天気はスッキリしないが鈴北岳から御池岳を周回する日帰りコースにとりつく。最初は暗い植林帯を一登りで鞍掛峠に立つ。見たことのない景色が新鮮だ。地図上では実線の登山道だが落ち葉に埋まって不明瞭なところが随所にある。あまり気軽に歩くと迷いそうだ。変化の少ない山道も鈴北岳を越えると景色が変わる。広大な草地が広がり、石灰岩の岩塔が点在する日本庭園に出会う。
学校で習ったカルスト地形が目の前にある。漏斗上に陥没したドリーネや羊岩ともいわれるカレンフェルトなど地学好きにはたまらない。御池岳は顕著なピークではないが気持ちの良い山頂だ。色々なコースからハイカーが集まっている。山頂では運良く晴れてくれたが、天気予報は雨なので早々に下山開始。石灰岩の滑り易いコグルミ谷を降るが、あちこちに故障を抱える我々一行の歩みは遅い。働き者のリーダーは車の回収のためドスドスと足取りも軽く谷を駆け(転げ)降る。道路脇にザックを置いて舗装道を2Kmほど走って車を回収して戻ると雨が降ってきた。後続組も濡れることなく回収できてラッキーだった。モンダイは今晩の宿である。琵琶湖まで行けばなんとかなるだろう・・・と適当に決めてテン場を物色するが、「ここは怒られるよな」という所ばかり。途中でみつけた近江八幡YHにダメ元で宿泊の相談をするとOKとのこと。食事は間に合わないので街に出てイタリア料理で腹ごしらえする。近江八幡YHは寺のような作りなので朝のお勤めがあるのか心配したが、古くは勧業会館という施設だそうでアンティークな雰囲気の面白い宿だった。とにかく、いい加減なツアーである。
【11月2日】
今日は天気が悪い。登山は無理であると簡単に意見が一致して、何故か伊賀忍者屋敷に行くこととなった。一部の者は九ノ一と仲良くなれると信じきっている。ハットリ氏はルーツ探しの旅である。
忍者屋敷は中学生の団体に混じって見学。隠し戸から人が出たり消えたりする度に中学生と一緒に「おーっ」と感嘆の声をあげる。九ノ一と仲良しになることもなく芭蕉記念館へ。松尾芭蕉は伊賀の生まれだそうだが忍者とは関係ないらしい。山の記録ではないので端折るが、途中で信楽に寄って狸を見て回ったものの車に積めないので狸は買わずに次に進む。今日も雨である。テント泊もつらいということで、宇賀渓キャンプ場のバンガロー泊となった。こちらも偶然に空いた部屋がありスンナリ泊まることができた。車で10分ほど走ると「あじさいの里」という温泉がある。今回は屋根のあるところに泊まってばかりだが現地に行けばなんとかなるものだ。
【11月3日】
今日は最終日。鈴鹿地方の放浪は終わり、金指さんの墓参りをしてから帰京する。事前に小堀氏が金指朋代さんに話をしてくれたお陰で、金指さんの遺骨は日進市の自宅に居ることがわかり、約束の時間に合わせて移動する。秋の空が抜けるような青い朝だ。
金指家の玄関に入るとコルトレーンが流れている。金ちゃんが生前好きだったマイフェバリットシングスだ。祭壇には金ちゃんの笑顔がある。朋代さんの話を聞きながらアルバムをめくると、我々の知らない金ちゃんの歴史が見えてくる。三峰での金ちゃんの思い出話をしながら過去形で話す自分の言葉づかいにハッとしながらも2年前の出来事が少しだけ遠く感じてしまうのが淋しく思う。