トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ332号目次

雪上訓練・谷川岳
飯塚 陽子
小幡 信義
山行日 2009年12月12日~13日
メンバー A班: (L)小幡、三澤、佐藤、高木、山崎、大田、星野、永田
B班: (L)紺野、飯塚、別所、菅原(12日のみ)、深谷、斎藤(吉)、権、(YUKI)

【総 括】
 例年通り12月2週目の週末に、雪上訓練を行ってまいりました。
 今年も、冬山合宿にはいる予定のメンバーは少ない状況であったのだが、訓練には16名という人数が集まり、雪不足の谷川岳ではありましたが、新人・ベテラン組も含めて、各自冬山技術に磨きをかけてまいりました。訓練内容については、A、B各班の報告を読んで下さい。
 ここでは総括として感じたことを書きます。まず今回の雪上訓練の場所についてであるが、この週の谷川岳周辺は雪不足のため、訓練を行うには今ひとつといった状況であった(翌週には寒波が到来し、かなりの積雪となった模様であるが)。加えて、この時期に谷川岳で初めて雨にたたられてしまい、テントの水かきまでしなければならないという異例の事態となってしまった(フライを持っていかなかったのも理由のひとつであるが、まさか12月の谷川岳でフライ必須になるとは思わなかった・・・)。
 また、これまでの雪上訓練は、新人の冬山技術教育はもちろんのこと、冬山合宿参加者を主に対象にしていた形が取られていたが、近年、合宿という形にとらわれずに個人山行で好きなエリアの冬山に入るベテランのメンバーも増えてきているのも事実である。
 このような状況を踏まえて、今後は12月に行われている雪上訓練は、今までの定例訓練から形式を変えていってもいいのではないかという意見も出たので、下記に記しておく。
 雪上訓練の時期は、年末から山に入る予定の冬山合宿の日程への考慮から、合宿日程の2週間前(12月2週目まで)をリミットとし、主に雪山技術の訓練(滑落停止、ロープワーク等)としていた。12月2週目頃であったら、定例の訓練場所の富士山や谷川岳ではかなりの積雪量を見込むことができたが、このエリアは近年の暖冬の影響により積雪を見込むことが難しくなってきた。この時期の場所を選ぶとしたら、比較的積雪と寒冷な温度が安定している八ヶ岳周辺も候補の一つにしたらよいのではないか。
 また、12月の雪山訓練は、冬山へ入山する人全員を対象として、冬山入山の準備のための雪山歩行訓練にする。これは初級の冬山を、1泊2日で冬山全装備を担いで歩く縦走スタイルをメインとし(各自の冬装備の確認、テント設営他含む)、雪山入山前に自分の体力や装備を総合的に確認する。このような形態の山行だったら、積雪の少ない場合でも対応可能であるし、12月の初旬に行えば、冬山へ対応できる身体作りもできると思う。そして積雪量の安定している1月以降に、改めて雪山レベルアップの為の雪山技術訓練や雪上レスキュー訓練を行う。
 これはあくまでも案ではあるが、今後も、暖冬の影響による山の積雪量や三峰の冬山合宿のスタイルを考慮し、それに見合った訓練を続けていきたいと思う。


【A班行動記録】(執筆: 小幡 信義)

 天神峠に9:00着。テント設営後、チームに分かれ雪訓を行う。今年は雪が少なく、ブッシュが部分的にはみ出しているため、天神尾根を登り、適当な斜面があったらそこでやろうと進む。熊穴沢避難小屋を過ぎ、天狗の休み場下辺りに良い斜面があった。下部はルンゼ状となり少し危険はあるが、ザイルを張り飛び出し防止とした。気候が暖かいためか、雪の締まりがなく滑落停止の際は、滑りが今いちで緊張感にかけた。確保練習ではスタンディングアックスビレイを交替で行う。星野君、永田君とは正月に3人で八ヶ岳に入るため、お決まりのザイル制動ではなく、少し意地悪をし、思い切って滑り落ちたら、案の定、ザイル操作の慣れない星野君は支点ともにふっ飛んでいた。これを見ていた佐藤氏よりお叱りを受けてしまったが、新人の時はよくある光景だ。午後より空模様も怪しくなり小雨から本降りとなり、訓練も早めに切り上げ、テン場へと下山する。講師助手の三澤氏、佐藤氏の手助けにより雪上訓練を無事に終えた。主に行った訓練内容は下記の通り。
1. ピッケルの使い方
2. 雪上歩行
  ・キックステップ歩行
  ・アイゼン歩行
3. 滑落停止
4. 確保練習
  ・ボディビレイ(腰、肩)
  ・スタンディングアックスビレイ


【B班行動記録】(執筆: 飯塚 陽子)

 B班は、紺野リーダーのもと、総勢8名で訓練を行った。天神平からトラバース気味に歩きそのまま直上し天神尾根末端に3張の幕を張る。準備をして早速訓練に入るが、小幡リーダーのA班は、雪を求めて上部へと颯爽と登っていってしまった。B班であるが、紺野さんが膝不調の私を気遣ってくれて、幕場からそう離れていない尾根上の斜面で行うことにしてくれたのであった。B班の皆さん、私はほとんど見学の人となってしまった上に、雪の少ない場所での雪上訓練になってしまい、すみませんでした。
 さて、始めはアイゼン歩行の練習から始まった。新人もベテランもアイゼンを装着し、斜面をキックステップで登ったり下りたり、アイゼン歩行練習を繰り返す。新人といっても、権さんもYUKIさんもすでにアイゼン歩行の経験はあるので、すぐに慣れていたようだ。それから滑落停止の練習。積雪の少ない上、雪も軟らかい状態なのでなかなか滑りにくいのだが、そんなのはお構いなしに、新人の二人は熱い練習を繰り返している。ここでも皆、何度も何度も滑落停止の練習をし、かなり良い形の滑落停止訓練となっていた。
 その後は、腰がらみでの確保の練習を繰り返し行ったが、滑落する面々が、役者になりきって思いっきり落ちて?くれたお陰で、かなりリアルな確保練習ができたように思う。ロープを握って制動をきかせての確保のコツを、始めなかなかつかめなかったYUKIさんは、滑落者・紺野さんと共に、何回も引き込まれつつ、繰り返し練習に励んでいた。
 スタンディングアックスビレイは、柔らかい雪上にスノーバーで支点を作ったため、支点がはじけ飛んでしまうという冷やっとする場面もあったが、その後は木に支点を取り直し、形だけでも練習することができた。

スタンディングアックスビレイの練習ザックを担ぎアイゼン装着での懸垂下降練習

 訓練中、要所要所で語られる紺野リーダーの言葉は、雪山熟達者らしい重みのある話ばかりで、皆で聞き入った。このような経験者の話を次世代に繋げていくのが、山岳会の中ではやはり一番大切なことなのだと思う。
 その後、固定ロープの支点の通過訓練を行い、荷物を担ぎアイゼンを装着しての懸垂下降の練習を行いB班の雪上訓練は終了となった。
 テント場に戻ると、ほどなくして雨が降り出し、その後の飯塚テントは"宴会&水かき"に明け暮れることになった・・・。
 翌日のB班(紺野さん、別所さん、斉藤さん、権さん、YUKIさん)は、A班と合同で谷川岳山頂ピストンの実地訓練を行い、2日間の雪上訓練は無事終了した。
 皆さん、お疲れ様でした。

谷川岳山頂にて

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ332号目次