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八ヶ岳縦走
小幡 信義
星野 剛

山行日 2009年12月29日~31日
メンバー (L)小幡、星野、永田

(概略: 小幡 信義)
 正月山行は、八ヶ岳を計画。ピラタスロープウェイで一気に山頂まで上がり、縞枯山~天狗岳~硫黄岳~赤岳~権現岳~編笠山までの縦走を3泊4日で歩こうと決めた。メンバーは新人の星野君、永田君と私の3人である。

【2日目(12/30) 天気:曇り 稜線強風】
(執筆: 星野 剛)
「三峰少年隊(※1)、八ヶ岳を行く」2日目。明日以降の天気予報がすぐれないため、予定していたオーレン小屋からもう少し足を伸ばし、硫黄岳を一気に越えて赤岳鉱泉に向かうことに。
稲子岳を背にしての天狗岳への登り  尾根に出ると、急に風が強くなってきた。集中していないと立っているのも大変。何かを伝えるにも風がうるさくて周りの人と話ができない。早くも想定の範囲を超えている・・・。
 根石岳からの下り、下の方に根石小屋が見える。2人組のパーティーが反対側から向かってくるが、すごい斜めに傾いて歩いている。まるで台風中継を見ているようだ。やがて2人は鞍部の真ん中あたりで立ち止まってしまった・・・。こちらからは若干追い風になるのでまだ動ける。ふらふらしながら彼らに近づくと、2人が話しかけてきた。
『この先、風はどうですか?』
「場所とか関係なく、今日はずっとこんな感じですよ~」
 2人はしばらく考えてから、引き返すことにしたようだ。
 夏沢峠を抜けて、今日最後の登り、硫黄岳に差しかかる。右側の斜面からは絶えず風が吹き上げ、小さな氷の粒をぶつけてくる。登りは長く、少しずつ足取りも鈍くなってくる。頂上はそこに見えるのに、果てしなく遠い・・・。
「硫黄岳の山頂には避難小屋がありますよ。そこで休憩しましょう!」
 永田くんは夏にここに来ているそうだ。避難小屋の中に入ればこの風もしのげるだろう。力を振り絞って頂上へ。小さな建物が見える。左には頂上の標らしきものがあったが目もくれずに避難小屋へ。
 やった!ひと休み、ひと休み・・・あれ、何かこれ、ちっちゃくない?
硫黄岳の避難小屋は埋まっていた!  避難小屋は半分くらい雪に埋まっていた。入って休むのは大変そうだ・・・。2人でがっかりしているところに小幡さんがやってきた。
「さあ、下の樹林帯まで下れば風もないから、そこで休憩しよう」
 横岳と赤岳の間にヘリが飛んでいるのが見える。この時期、この場所だと・・・嫌な予感が頭をよぎる。
 赤岳鉱泉に到着。有名なアイスキャンディではクライミングに取り組んでいる人もいる。2日目になれば設営作業も慣れたもの。林の中にテントを設営し、それぞれ夕食の準備にとりかかる。
「あれは何ですかね?」
雪を掘っていた永田くんのすぐ近くに真っ黒でもさもさした動物が現れた。じっとこっちを見ている。離れたところで荷物を整理していたばたやんLが答える。
「ああ、犬だよ、犬。小屋で飼ってるんじゃないの?」
何だ犬か。・・・でも永田くんは腑に落ちない様子だ。
「でも、角みたいなのが生えてますよ?犬にしては大きいような気がするし・・・」
そこでばたやんLもまじまじとその生き物を眺める。
「あれはカモシカだな、きっと」
「え~!」
2人とも、カモシカをこんな間近で見るのは初めてであった。カモシカはそそくさと森の中に消えていった。
 カモシカは我々に何かを伝えに来たのだろうか・・・?
※1: 入会資格は「少年の心」を持つことです(笑

犬ではないです!カモシカです!

【3日目(12/31) 天気: 曇り 稜線風雪】
(執筆: 小幡 信義)
 昨日のラジオの天気予報は、明日から2~3日は西高東低の冬型の気圧配置により、日本海側大荒れの天気になると言っていた。
 赤岳鉱泉にテントを張り、朝目覚めると時々森林がゴォーゴォーうなり声を上げているようで、稜線はガスっていて一切見えない。6時出発のところ、少し様子を見ることにする。隣のテントではギア類をガチャガチャさせ、これから出発するようだ。とりあえず、稜線まで行って、先に進むか判断することになり、テント撤収に踏み切る。
 赤岳鉱泉出発が7:40となる。しっかりとしたトレースは行者小屋まで続いている。地蔵尾根も樹林帯は静かな歩きとなる。単独者も多い。岩尾根の急登・ハシゴ・クサリ場地点に来ると、いよいよ風も強くトレースは消え、視界もきかない。追い抜いて行った4、5人のパーティーもガスに消え、どこを歩いているのか分からないし、風雪が顔に当たり痛い。目も開けられない状態だ。引き返して来たのか、下りてくるパーティーも多い。稜線はさらに厳しいだろう。しばらく考えた末、「撤退!」と決め下山する。若い2人には悔しいかもしれないが・・・。
吹雪の中地蔵尾根から赤岳を目指す人たち 我々も頑張りましたが途中で撤退  行者小屋から本日中に帰ることとする。美濃戸山荘でゆっくりと野沢菜をいただき、2泊と短い山行を振り返る。「近いうち、また来よう」と3人で約束し、山荘を後にする。

〈コースタイム〉
12月31日
赤岳鉱泉(07:40) → 地蔵尾根分岐手前撤退(10:00) → 行者小屋(11:00) → 美濃戸山荘(13:00)


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