トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ334号目次

沢登り・葛根田川~関東沢~大深沢
森田 純子

山行日 2010年8月7日~10日
メンバー (L)鈴木(章)、(SL)紺野、森田(温)、森田(純)

 『おたがい短い沢生活ではないですか(涙マーク)。不安がらずに・・・』というAッコさんからのメールで、決断しました。沢で3泊なんて、もう私には最後の機会かもしれない!
 なにしろ、昨年初めて沢1泊を経験し、この夏、釜ノ沢1泊が2度目という乏しい経験。今回は3泊で、しかも沢下りがある・・・。でも、行きたいなあ・・・裏岩手の沢で4日もすごせる・・・。さんざん迷った末でした。岩のベテランKNさんも行きます。なんとか頑張ってみよう。ホンチャンの懸垂下降も、ドキドキ!やってみた~い。

8月7日 快晴
 前夜、東京駅発23:45の夜行バスでたち、(盛岡で乗換え)雫石へは7時過ぎに着きましたが、4列座席の夜行バスはキツイ。全員、ほとんど眠れなかったようです。予約してあったタクシーで滝の上温泉から地熱発電所先まで入りました。
 8時、装備を整え、しばらくは川沿いの山道を歩いて入渓です。このへんの葛根田川は、沢というより、むかし河原遊びをしたなつかしい川、という感じです。真っ青な空の下、女二人はスクラムで徒渉したり、童心に帰った気分で遡行を開始しました。
 KNさん、Aッコさんの話によると、葛根田川は、水量が増えるときは一気に来るそうで、以前三峰で来たときは、出発間際に「キジ」というメンバーがいて、それを待っている間にみるみる増水し、先行した別パーティーのメンバーが流されて亡くなった、ということがあったそうです。
 葛根田川は、だんだんと渓谷の様相をおびてきます。左右から流れ込む滝を眺め、「お函」と呼ばれるゴルジュでは、美しい瀞をへつり、快適な遡行です。テン場の候補地のひとつ、中ノ又出合には11時半に到着。まだ、先へ進めます。1時間ほどで、葛根田大滝。左岸を高捲きました。滝ノ又出合で幕かな・・・と、さらに1時間。ところが、滝ノ又出合では先客がいました。ガイドブックによる「左岸の樹林の中に絶好の幕営地・・・」には単独の男性が、テントの前でニコニコしています。まだ、時間もあるし更に先へ進むことに。
 二俣を北ノ又沢に入ってから、ちょっとで右岸に8m滝で出合う支沢に入ります。小滝をいくつか越えていくと、沢は穏やかな小川のようになっています。このあたりで幕かな・・・。高台になっているところがなく、Aッコさんは少し考えているようでしたが、水量がだんだん減ってきているようだし・・・ということで決定。15時半でした。
 KNさんの職人技で、タープ設営(いつ見ても感嘆します)。そして、焚き火。
 なんの役にも立てない私は、今回の夕食3回分の食当を引き受けていました。初日のメニューは、うなぎご飯・焼き茄子・漬物・マツタケのお吸い物(Aッコさんからの、鬼崎産の黒のりを入れましたが、おいしかった!)。ここで、注意、生米は無洗米にしましょう。
くつろぎのひと時 8月8日 快晴
 水も減ってきているようだし、今日もお天気は上々です。朝の食当はMAさん。献立は、素麺でしたが、かにかまや茗荷、錦糸卵のトッピングで豪華でした。
 7:30、元気に出発。小川のように穏やかで歩きやすいナメを進み、さらに源頭に向かっていきます。枝沢を右だ、左だと言いながら、とにかく湿原に出るはずだからと、どんどん行きました。最後はヤブを漕いで湿原に飛び出したのですが、そこから見えるはずの、登山道が見当たりません。ここで方向感覚が狂い、しばらくワンデリング。スタートに戻ってみると、登山道はすぐそばにありました。八瀬森山荘には、11時半着。この小屋は昨夏、例会の裏岩手縦走で泊った小屋で、この時の水場が、これから下る関東沢の出発点です(あの時は、この水流をたどっていくことになろうとは、夢にも思っていなかった)。私にとって初めての本格的沢下りでしたが、ロープが出るようなところもなく、ちょっと肩透かしをくった感じ。
 それより、イワナです。先頭を行く、Aッコさんの「いるよ!走ってる!」の声に、KNさん、ついに竿を出しました。すぐに1匹!2匹目がなかなかで、とにかくテン場についてからということで先を急ぎました。関東沢は、幅が広くなり大きな石がゴロゴロしてきます。脚にきます。
 大深沢出合へ着いたのは、15時半頃でしょうか。さっそくテン場を探しに3名は散っていきましたが、私はどんな場所が幕営に適しているのか判断できず、情け無いことに、なすすべもなく待機。やがて出合の少し下、左岸の笹薮の中に見つかりました。今晩の宿の準備が整い、KNさん、MAさんは早速イワナつりに出かけました。今回が初挑戦となるMAさんも、張り切っています。餌は、KNさんはぶどう虫、虫が苦手なMAさんは瓶詰めのいくらでしたが、岩魚はぶどう虫だけに喰いついたようでした。
 本日の釣果は串に刺されて、焚き火でじっくりと焼かれ骨酒になりました。キラキラと釣り上げられたときの生前の姿が目に焼きついています。今は熱い日本酒に身を浸している、この姿も美しい・・・感動・・・。謹んで、頭から尾まですべていただきました。
 なお、この夜のメニューは、鯖缶汁・ごはん(α米)・佃煮・ふりかけ・キムチ。Aッコさん持参の乾燥揚げを汁に入れましたが、おいしいし山食にはなかなかの優れものでした。
沢は焚火とイワナに限る 8月9日 晴れ
 本日も、お天気良好。元気に出発のはずだったのですが、私の脚がなんとも・・・。昨日の下りのせいでしょうか、張って、硬くなってきているのです。今日の行程は、さらに大深沢を標高差300m下り、湯田又沢を90m遡行して幕。ここまでは、何とか頑張れそうですが、次の日、伝左衛門沢を850m遡行せねばなりません。昨年、脚が前に出なくなる経験をしたので、この張りは不安です。この山中で動けなくなり、ヘリコプターという事態は絶対避けたい。でも、湯田又沢出合には、お湯が湧いていて、そこに浸かるというのが、また皆の楽しみなのです。もしかして、最後まで歩けるかもしれないし・・・。自分では判断がつかず、リーダーに相談しました。そして、サブリーダーとの協議の結果、予定を変更して、ここから大深沢を遡行し、北ノ又から大深山荘に出て、小屋に泊るということになりました。やはり、沢で3泊は、私には無理だったか・・・。皆さんごめんなさいと気落ちしながら7時過ぎに出発しました。
 でも、このコースもとても良かったのです。本来のコースなら通過しないナイアガラの滝に出会えます。以前、ここを遡行したことのあるAッコさんやKNさんによると、今回は水量が多いとのことで、迫力のある素晴らしい滝でした。9時前には北ノ又と東ノ又分岐に到着。その後も、次々と適度な滝やなめ床で、楽しくて快適な沢登り!でした。
 そして、いよいよツメとなります。水量の多い方を選びながら、かがんだり、かき分けたりして進み、13時前に草原に出ました。ここからヤブ漕ぎ。GPSで現在位置を確認し、東へひたすら進む。主に、背丈以上ある笹薮を漕ぐのですが、私なんかは足腰も疲れていて、思いっきり突っ込んでもはね返されてしまいます(漫画みたい)。ここは、身体の利を生かして、MAさんがたくましく藪をかき分けて進みます。密なところでは、その後ろにピッタリとついていないと、もう私は先へ進めません。永遠に続くかと思ってしまった藪漕ぎは、2時間半奮闘して、ひょこっと縦走路に出ました。これって、本当にうれしい! 水場で水を補給し、大深山荘へは16時半着。小屋は新しく、広いテラスもあって快適です。単独の男性と、若い女性が同宿でした。
 夕食メニューは、うにクリームパスタ・海鮮サラダ・黒のり入りたまごスープ。
ナイアガラの滝は水量多め 8月10日 晴れ
 最終日は八幡平まで3時間半、のんびり稜線散歩をして帰ります。バスの時間と藤七温泉のゆっくり入浴を考えて、5:00出発。
 Aッコさんの鼻歌も聞こえます。KNさんは、「こーいうのって、かったるくなっちゃうんだよな~」と言いながら、のっしのっしと歩いています。私はといえば脚の調子が気になりつつも、この3日間の沢を思い返しながら、とても幸せな気分でテクテクと歩いたのでした。
 皆さんのおかげです。本当にありがとうございました。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ334号目次