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縦走・白馬岳~栂海新道
峯川 正行

山行日 2010年8月27日~30日
メンバー 峯川

 さて、どこの山に行けばいいのか・・・。今年の遅い夏休みを含めた4連休は当初は知り合いの山初心者と涸沢で行われる涸沢フェスタに4日間行くつもりでした。ところが諸事情で参加を見送ることとなり、急遽行き先を考えることに。中央アルプス・越百山、新装の徳本峠小屋から中村新道、そして以前から気になっていた栂海新道。2006年10月に道祖土さんが単独で計画し、白馬岳での悪天候によるあの遭難事故により計画が断念され、それ以来、私の脳裏の『栂海新道』がインプットされ、4年の時を経て道祖土さんに代わり遂行したい気持ちが高まりました。登路は行ったことがない白馬大雪渓とし4日間かけて日本海に飛び込むという計画としました。

8月27日(金曜日)晴れのち雨
 何しろ北アルプスは剱岳以外行ったことがないのです。人混み苦手な私はあえて北アルプスを避けていました。そして単独で一番効率良いアプローチを探すと、今は便利な世の中ですね!夜行バスがちょうどその日にあり、それも猿倉荘直通です。毎日アルペン号というバスで、てっきり「毎日」アルプスにバスが出ている?と思ったのですが、そうではなく「毎日新聞」が主催するバスツアーでした。それも6000円で安い!何回かSAで休憩をして、七倉ダムなどいくつかの登山口を経由して猿倉荘には5:45に到着です。やはり夏シーズンはこのバスは非常に便利だなぁと実感しました。猿倉荘で準備をしてのんびりと出発です。今日は白馬岳頂上宿舎に着けばいいので焦ることはありません。林道をしばらく進むと白馬尻小屋に到着です。今年は営業しているようです。雪渓もちらりと見えて涼しく感じます。初めての白馬大雪渓です。みんなが軽アイゼンを装着しているところで同じように軽アイゼンを装着です。時期も時期なので軽アイゼンを装着しないでスプーンカットを踏んで登っている人もいました。重い荷物ですが、軽アイゼンを装着したので非常にテンポよく足が進みます。雪渓特有の冷凍庫のような冷気が吹き抜け寒くてしょうがないので上着を着込みました。
快適な白馬大雪渓を登る  すぐに雪渓も終わりで秋道にたどり着きました。今回は楽しく登れましたが、今年もここでは落石の事故があったようで、雪渓上部の岩稜帯を見ると、安易な気持ちで登る所ではないと思いました。ここからは陽射しがきつく、またザックも重いので無理しないで休憩を繰り返して行きます。途中いろんな人に「ザックでかいね~どこ行くの」と言われて、だんだん答えるのが面倒になったのですが、さすがに無視するのは失礼なので、「長い縦走です・・・」の一言にしました。途中出会った同じ世代くらいの夫婦の方とお話しながら進みました。控え目な素敵な奥様で旦那様が羨ましかったです。お花や素晴らしいスカイラインを楽しみながら進むとあっという間に頂上宿舎の屋根が見えました。まだ時間は11時台です。天気もまだいいので写真を撮りながらのんびり登ります。
お花畑と清々しい青い空  頂上宿舎の幕営エリアはすこし登った所で、まだ2張くらいしかありませんでした。水はトイレ脇のデカタンクから取れます。
 夜行バスで疲れていたのでテントの外でマットを敷いて結構寝てしまいました。起きると結構な数のテントが設営されていました。夕食は吉野家の牛丼レトルトなのですが、予想以上にうまく、一人で「旨い!」と叫んでしまいました。下手をするとお店の牛丼より旨いかもしれません。つゆだく状態で、持参した紅しょうがもこれまた旨かったこと。単独の時の夕食は吉野家に決まりです!夕方から結構な雨が降りましたが、エスパース内部は全く問題ありませんでした。

8月28日(土曜日)晴れのち曇り
 今日も朝日小屋までなので、それほど急ぐ必要はありませんが、午後近くになると天候が崩れる可能性があるので、早出で3時起床4時半出発で白馬岳を目指します。途中ホテルのような白馬山荘を通りました。白馬山荘と村営の頂上宿舎はライバルのようです。白馬岳山頂には多くの人で賑わっており、ちょうど御来光のようで皆さん声をあげていました。私は昨日お話した御夫婦に声をかけて、人気が少ない朝日岳方面に進みました。朝日がとても眩しく三国境で蓮華温泉への道を見やり、雪倉岳方面に進みます。とにかく誰もいなくて静かでとても清々しかったです。針ヶ岳は夏道では捲き道のようで山腹を進みますが、昨日の雨で笹が濡れていて、ズボンがすぐに濡れてしまいますが、逆に涼しくて気持ちがいいです。
綿毛のチングルマと雪倉岳  しばらく進むと雪倉岳避難小屋に到着です。本来、昨日はここまで足を延ばせば一番いいのですが、どうもこの小屋はあまり積極的に使用すると朝日小屋の小屋番に怒られるようです。中を覗くととても綺麗になっていました。ちょうどこの頃からガスが立ち込めてきて、雪倉岳山頂が見えなくなりました。ガスが立ち込める中、雪倉岳に向けて登りますが、途中雷鳥の親子がこちょこちょ歩いています。猫よりも警戒心がないのかあまり逃げません。ころころしていて可愛かったです。雪倉岳に登ってガスが抜けるまで待機の予定だったのですが、なかなかガスが抜けません。体が冷えてしまうので進みます。ザレのルートをジグザクと下りますが、この雪倉岳はお花で有名な山のようで、花にそれほど詳しくない私ですが、お花畑に驚きました。ハクサンシャジン、カライトソウ、そして紫色のひまわりのようなタカネマツムシソウは初めて見ました!お花観賞で結構気分も良くなりました。燕岩のガレ場をトラバースすると、景色のよい水場がありしばし休憩です。ここから山容が一変し湿原地帯となります。木道をてくてく歩いていくとその先に立派な朝日岳が聳えています。なんとかっこいいのでしょうか。
 小桜ヶ原湿原を過ぎると朝日小屋への水平道と朝日岳への直登ルートとの分岐です。ここで京都府立大学のワンゲルの人達と少し会話をして、迷わず水平道を進みます。しかし、この水平道は名前を変えたほうがいいです。全然水平道ではないです。ちょうどその頃は暑さもピークで陽射しが刺さる感じで痛かったです。多少バテ気味で休憩を交えながら進みます。途中水場があったので頭から水をかぶりました。水場を過ぎると予想より早く朝日小屋の赤い屋根が見えてきました。12時過ぎに朝日小屋到着です。まだ早い時間ですが、この先に幕を張る場所がないのでしょうがないです。酒が弱いのに珍しくビールを小屋で買って、さっさとテント設営です。小朝日岳が望めるいい場所を確保して、昨日のように一人宴会です。
 近くを散歩したり、昼寝したり。そして他の登山客と栂海新道について話しをしたときに、明日の予定が変わりました。当初予定は事実上幕営禁止の黄蓮乗越で幕営予定だったのですが、お話した方が明日は白鳥小屋まで足を延ばすとのこと。「若いからいけるよ~」と常連客のおじさんが言ってくれたので、私もすっかりその気になって、明日は白鳥小屋まで頑張る!と決めてしまいました。その後はマップを見て時間を逆算したりして計画を立て直しました。結果、2時半起床で4時前には歩行開始に決定。また15時頃から雨が降ってきたので、テント内で持参したiPod shuffleで浜田省吾を聞きながら時間を潰しました。本日夕食は昨日に引続き吉野家シリーズで鳥照焼丼でしたが、これもまたまた美味しい!
 食後は、先程話したおじさんと夕日を見たりして、おじさんは朝日小屋泊まりで出発が5時半になるので、「明日は白鳥小屋で会いましょう!」と健闘を誓い合いました。

8月29日(日曜日)晴
 2時半起床で3時50分に歩行開始。懐電歩行で朝日岳を目指しますが、月明かりで幻想的です。4時半には朝日岳山頂に着きましたが、雲が多く御来光は綺麗には見えません。なのでさっさと朝日岳を出発して栂海新道方面に進路をとります。雪渓を右に見ながら気持ちのいいルートを下ります。水の音もしたので雪渓下部から水が出ていたようです。ここも先行者などもおらず静かに歩けました。朝焼けがとても綺麗で歩いていてうっとりしてしまいました。下りきると吹上のコルに到着です。いよいよここが栂海新道の入口です。今まではプロローグであり、ここからが核心部となります。この先は今までの地形とまたがらっと変わって湿原地帯となります。樹林帯を少し抜けると照葉ノ池があり、振り返ると池と朝日岳、そして奥に白馬岳も見えて本当に心に沁みる景色でした。来て良かったなぁと実感しました。
照葉ノ池と白馬岳を望む うっとりする景色です  湿原を歩き樹林帯を歩き少し下り、湿原を歩き樹林帯を歩き少し下り・・・というループのような行程で進みます。すなわち段々畑のような地形で、なぜこんな地形ができたのか?と思いながら先を急ぎます。振り返ると3名のパーティーがいます。スピードが速いのでどんな人達かと思って、水場ある黒岩平のベンチでのんびり煙草をふかして話をすると今日は白鳥小屋先の分岐から山姥ノ洞の駐車場まで行くとのこと。なんて強行軍なのかと思いましたが、小屋泊まりでザックも軽いから大丈夫だなぁとその時は思いました。黒岩山を目指していると、どうも「大都会」の尊敬する黒岩刑事長のことが頭をよぎります。山の形ですら黒岩刑事長の五分刈りのように見えてしまいます。そんな間抜けなことを考えていると中俣新道分岐を過ぎて黒岩山に到着です。黒岩山からの展望は今までの湿原の景色と全く違い、ここからはアップダウンのある細い尾根が続きます。白鳥小屋は全く見えません。しばし景色を堪能し、まずはサワガニ山目指して進みます。この時間になると陽射しが厳しく、鞍部での吹き抜ける風が本当にありがたいです。いくつかピークをこなすとサワガニ山に到着です。ちょうど先行していた3名がいたので、少し先にいってもらって距離を調節しました。ここでようやく赤い栂海山荘が見えてきました。犬ヶ岳がその手前ですが結構立派な山なので驚きました。この先に北俣の水場があるのですが、先の水場が枯れている可能性もあるので、ここで水を確保することを決めました。暑さと陽射しとの闘いでしたが、予想より早く水場に到着です。ちゃんと看板もあり、プラティパスを2本(5リットル)と行動水を汲むべく下って行きますが、直ぐの水場で助かりました。この水が本当に美味しくてがぶがぶ飲んでしまい、とても冷たかったので頭から水をかぶりました。ここからが大変です。ザックに重心を考えて下部に近い所に水を入れ込みましたが、ザックを背負うと明らかに重く、20キロは超したと思えます。これぐらいは持って当然ですが、日陰のない犬ヶ岳の登りはかなりきつかったです。とにかく一歩一歩しっかりと登って行くだけです。犬ヶ岳山頂は思った以上に狭く、ステンレス製の山名板がありました。暑くてどうしょうもないので、早々に栂海山荘に避難です。少し下り鞍部になんとも派手な赤色の栂海山荘がありました。手前には栂海新道開通の石碑があり、サワガニ山岳会の名前を誇らしげに掲げておりました。少し小屋内部を確認しましたが、とても綺麗で泊まりたい衝動に駆られましたが、白鳥小屋まで頑張ることを決めていたので腰をあげます。泊まるには協力金として1000円納めるようです。小屋内部には小屋の変遷の写真があり、何度も増築を繰り返したようです。小屋の日陰で先行していた3名が昼食をとっていたので、私もその横に座らせてもらいアルファ米のわかめごはんを食べましたが、これが本当に美味しかったです。アルファ米がこんなに美味しくて驚きました。なんとか食欲もあるのでバテていないなあと安心しました。腰を上げると歩くべき稜線が見え、遥か先に白鳥山が見えます。時間は11時半でなんとか15時過ぎには白鳥小屋に到着するかとその時は軽く考えていました。
栂海山荘から白鳥小屋に伸びる壮大な尾根  先行3名に先に行ってもらい、私はのんびりと後をついて行くつもりでしたが、この先の登りで追いついてしまいました。3名の内のリーダーがバテてしまい、先に行かせてもらいました。黄蓮山は気付かずに通過してしまい、あっという間に黄蓮乗越に到着です。水は先程確保済みですが、水場を確認したくなり降りてみました。水場は沢で、ちゃんと水は流れていました。この暑さなので行動水だけは満タンにしました。味は先ほどがハイオクならレギュラーという感じでしょうか。黄蓮乗越の横は周りがブナ林で格好の幕営場所で泊まりたい衝動に駆られましたが、原則この付近は幕営禁止ですから従うのみです。しばらくブナ林で涼しいので、すぐに菊石山につきました。これは楽勝で白鳥だなぁと思っておりました。しかしここからが本当にきつかったのです。目の前に見える山が下駒ヶ岳ですが、この登りが露岩でロープがあるような急な登りで重いザックで一歩一歩が大変です。這うようにして下駒ヶ岳です。ここでも日陰を探して休憩です。この山に関しての案内板があり、つい最近までこの山名が消えていたのですが、サワガニ山岳会の皆さんが復刻に力を注ぎ、平成14年に地形図に何百年ぶりに復刻したそうです。犬ヶ岳、下駒ヶ岳、白鳥山を下駒ヶ岳三山と命名されたそうです。重い腰を上げて白鳥小屋を目指しますが、ここからの登りが暑さと陽射しも加わり苦行のような感じです。鞍部が数ヶ所あり、この空の先に白鳥小屋がある!と思うと偽ピークでまだまだ先があるという状況が続くのです。だんだんと一本をとる間隔が短くなります。最後の鞍部と思われる場所に赤テープが巻いてあり、多分白鳥小屋直下の水場ではないかと思い、また調査してみました。トラバースする感じで沢沿いに降りて行くのですが、数分で到着しました。水は今まで2ヶ所の水場に比べて一番弱々しい水場でした。一枚岩に滴る水がちょろちょろ落ちているのですが、持参している牛乳パックをカットした簡易コップでなんとか採取することができました。この暑さで減ってしまった行動水のみを汲みました。そして最後の登りです。ここまでくると気力と精神力で登るだけで、ぶつぶつ自分に気合を入れながら登ると今度こそ青い空が見えます。目の前に白鳥小屋が見えたとたん、「やった~」と叫んでしまいました!振り返ると素晴らしい山容の犬ヶ岳が聳えています。この尾根を歩いてきたのですね~。小屋内には誰もおらず、サウナのように暑くなっていたので、窓をすべて開けて換気をしました。小屋の入口からはなんと日本海がばっちりと見えます!糸魚川市も見えます。最高です~嬉しいです~。そして昨日濡れたテントや靴を干しながら、まさしく虎の子状態で大事に持ってきたチューハイを日本海を眺めながら美味しく頂きました。
 しばらくまったりしていると、若い学生が4人やってきました。名古屋の学生さんで、なんと15日間も北アルプスに入り全山縦走をしてきたとのこと。でも髭がそんなに濃くないので、「剃ったの」と聞くと、「若いからそんな伸びないんですよ」という回答。なるほど4日で結構髭が伸びた私は、やはりおじさんなんだなあと思ってしまいました・・・。そして朝日小屋で健闘を誓ったおじさんのことが気になり、学生さんに聞くと途中で追い抜いたようです。そして16時半過ぎにあのおじさんが無事に到着。やはり犬ヶ岳から白鳥小屋までのこの数時間は相当大変だったようで、本当に汗まみれでした。お名前は木村さんで茨城在住とのこと。学生は2階、木村さんと私は1階という布陣となりました。夕食は、かもしかで今回初めて購入した戸隠小舎のヒマラヤンカレーです。500円くらいでかなり高級食材ですが、軽くて最終日までもつので試しに持参しました。余っていたソーセージとアルファ米のドライカレーと一緒に食べたのですが、予想以上に美味しく驚きました。これならこの値段もしょうがないです。夜になると糸魚川のこじんまりした夜景と漁火も見えたりしてとても神秘的でした。今日ここまで足を延ばして本当によかったなあと。これも横にいる木村さんと朝日小屋で話をしたからです。有難う木村さん!久々の小屋泊まりでしたがぐっすりと寝ることができました。有難う白鳥小屋!

日本海を望む白鳥小屋での楽しいひと時 8月30日(月曜日)晴れ
 いよいよ今日で最終日。同じように3時起床で4時半出発です。せっかくなので木村さんと一緒に下山することとしました。でも暗黙の了解のような感じでお互いに同意を求めることはありませんでした。一緒に栂海新道を歩き通したことを分かち合おうとお互いに思っていたのかもしれません。懐電歩行で黙々と樹林帯を下ります。途中、昨日会った3名が下った、山姥ノ洞への分岐がありましたが、少し藪がかかりルートが判然としているのか心配でした。早くシキ割といわれる水場につかないかなあと思っていると、ようやく谷間のような地形にたどり着きました。しばらく進むとステンレス蓋があり、細く水が流れていて、木村さんはここはシキ割ではないと言ってましたが、ステンレス蓋でかなりの加工をしていたので、私はここがシキ割だと判断し、木村さんに行動水をとるように勧めて、例の牛乳パックを使いました。これがないと水が取れません!この牛乳パックは今回相当役に立ちました。
 ここから坂田峠へは急坂を下ります。この地点が今回一番注意する地点で、スズメバチ、熊と動物危険エリアです。スズメバチは地面のほうを気にしながら進みますが、まだ8月は時期が早いのか全く見当たりませんでした。もちろん熊も。いくつもの梯子を下るとようやく林道が見えてきました。坂田峠は立派な林道です。旧北陸街道が通っていたようで、歴史を感じるお地蔵さんが佇んでいました。日本海目指して最後のひと踏ん張りです。ここから非常に歩きやすいルートで奥多摩の山道みたいです。尻高山に来るといよいよ青い海が見えてきます。ここにもお地蔵さんがいます。ここから林道を越えて、暗い樹林帯を下り二本松峠といういかにも峠臭い所に到着です。鬱蒼としていて普段なら通過してしまいますが、峠マニアの私は峠の案内板を見て勉強です。北側にある上路集落への抜け道が栂海新道をクロスしているようで、確かに目を凝らすと踏み跡があり、樹木に隠れてお地蔵さんがいました。上路集落は山姥伝説が伝わる集落で、山姥様は商売繁盛の神と崇められているようです。行けばよかった~。
 ここからはピークを数個越していかなければいけませんが、ゴールは近いという気持ちがあるのでのんびりと足が進みます。入道山を越し、最後のピークの416m点を過ぎ、ここからは日本海に向けて一気の下りです。樹林の隙間からは青い日本海が見えます。今まで奥多摩湖などの湖を下山中に見たことはありますが、海を見ながら下るのは初めてです。一歩一歩を踏みしめながらゆっくりと下ります。高度計と睨めっこしながら歩いていると目の前に白い建物が見え、車の音もしてきました。まだ標高は100m以上で、0mまで下る!という認識があったので変だなあと思ったのですが、予想より早く親不知観光ホテルの前に到着し、栂海新道登山口の有名な門をくぐり国道に降り立ちました。
有名な栂海新道登山口の門に到着!  でもこれでは栂海新道は完結致しません。国道をただの林道と思って、ザックをデポして長い階段を下り日本海に向かいます。途中、旧北陸本線のトンネルがあり冷凍庫のような涼しい風が流れていました。さらに下ると誰もいない静かな日本海が広がっています。今日は本当に波もなく、穏やかです。私はもっと荒波がたつ日本海をイメージしていので驚きました。今日は朝から下りながら一体どうやって日本海に飛び込もうかと考えていたのですが、ズボンもパンツも汗でびしょびしょで着替えもあるので、そのまま飛び込むことにしました!
公約通りに日本海に飛び込みました  木村さんは飛び込まないで写真を撮ってくれました!ありがとうございます。日本海はとてもぬるく気持ちがいいので10分ぐらい浸かっていました。白馬大雪渓からこの日本海までよく来たもんだなあと、日本海に浸かりながらしみじみと思い返してしまいました。
 今度は4日間の汗をお風呂で流すべく、階段を登りますがきついです!親不知観光ホテルは1500円でお風呂+駅までの無料送迎付です。ホテルのオーナーは山屋さんで、船窪小屋も経営されているようです。かつて船窪小屋で小屋番をされていた三峰の大先輩、江村さんとお知り合いでした。そして3年前に来たちあきさんパーティーのことも伺うと鮮明に覚えていました。風呂場からの日本海も格別でした。まだ時間に余裕があるので外で濡れたパンツとズボンを乾かしたり、煙草をふかしたりして、今年の夏休みはこれでおしまいだなあと感じてしまい、なんか寂しくなってしまいました。
 オーナーの運転で親不知駅まで向かいますが、今年は本当に暑かったとのこと。確かに東京と同じくらい暑かったです。無人駅の親不知もいい風情で、ホームで海を見ながらぼーっと電車を待ちます。富山方向へ向かう木村さんと別れの挨拶をして、ホームには私一人・・・。んーなんとも寂しいけど、大学時代にした貧乏一人旅を思い起こしました。翡翠で有名な糸魚川駅でボリュームのあるご飯を食べ満腹になりのんびり帰京いたしました。
 今回の山行は道祖土さんが憧れていた栂海新道への気持ちが私に乗り移って企画した山行でした。道祖土さんが元気になったら、来年でも(涼しい時に)道祖土さんともう一度歩きたいです。それほど魅力的な栂海新道なのです。一緒に日本海飛び込みましょう!

〈コースタイム〉
8月27日(金)
竹橋毎日新聞社(22:30)=(夜行バス)=猿倉荘(05:45~06:20) → 白馬尻小屋(07:10~35) → 白馬大雪渓取付(08:00~15) → 大雪渓終了点(08:55~09:10) → 岩室跡(09:40) → 小雪渓(10:30) → お花畑避難小屋(10:35) → 白馬岳頂上宿舎(11:40)【幕営・C1】
8月28日(土)
白馬岳頂上宿舎(04:30) → 白馬山荘(04:50) → 白馬岳(05:05~20) → 三国境(05:45) → 蓮華温泉分岐(06:15~25) → 雪倉岳避難小屋(07:00~10) → 雪倉岳(07:45~08:15) → 燕岩(09:40) → 水場(09:50~10:00) → 小桜ヶ原(10:15) → 水平道分岐(10:30~40) → 朝日小屋(12:00)【幕営・C2】
8月29日(日)
朝日小屋(03:50) → 朝日岳(04:40~05:00) → 吹上のコル(05:30~35) → 照葉ノ池(05:50) → アヤメ平(06:45) → 黒岩平(07:35~45) → 黒岩山(08:15~20) → 文子ノ池(08:40) → サワガニ山(09:30~35) → 北俣の水場(10:00~25) → 犬ヶ岳(11:00) → 栂海山荘(11:05~35) → 黄蓮乗越(12:30~55) → 菊石山(13:15) → 下駒ヶ岳(13:45~55) → 白鳥の水場(14:55~15:10) → 白鳥小屋(15:20)【小屋泊・C3】
8月30日(月)
白鳥小屋(04:30) → シキ割(05:40~55) → 坂田峠(06:30~45) → 尻高山(07:25~35) → 林道(08:05) → 二本松峠(08:20~30) → 入道山(08:45) → 416m点(09:10) → 栂海新道登山口(09:45~55) → 日本海(10:00~20) → 親不知観光ホテル(10:30)

〈諸経費〉
[往路・夜行バス]
竹橋毎日新聞社~猿倉荘:6000円
毎日アルペン号

[復路・列車]
・親不知~糸魚川:230円 北陸本線
・糸魚川~越後湯沢~上野:9,060円
 特急はくたか・上越新幹線 自由席

[白馬岳頂上宿舎]
幕営料 500円/人
缶ビール350ml:550円/500ml:700円

[朝日小屋]
幕営料 500円/人
缶ビール350ml:600円

[お風呂]
親不知観光ホテル:1500円(駅まで送迎付)


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