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縦走・ドノコヤ峠~櫛形山
『どこか峠に行きたい山行 第2弾』
峯川 正行

山行日 2010年7月10日~11日
メンバー (L)峯川、成田、川崎、森田(純)、渡辺(智)

ドノコヤ峠・・・。
 一度目にしたら忘れない名前である。小林経雄著『甲斐の山山』という本をめくっていると、このドノコヤ峠という文字が目に入ってきた。かつては芦安と奈良田との交易路であり、かのウェストン卿も歩いたようである。そして時代ともに、土ノ小屋峠⇒銅之古屋峠⇒ドノコヤ峠と表記も変わっているらしい。銅之古屋という表記は芦安鉱山が奈良田側にあった時代の名前のようである。なんとも気になる峠なのである。峠越えルートも気になるが、まずはドノコヤ峠を尾根ルートで目指して、櫛形山まで巡り、アヤメを探索し芦安に戻るという周回ルートを『どこか峠に行きたい山行』第2弾として計画した次第である。少し藪があるくらいの気持ちのいいルートであろう・・・。
 山行予定の週はずーっと梅雨空であり、土日も雨に降られるなあと思っていましたが、最後に予報が変わり、土曜日は晴れるとのこと! 3名は甲府まで高速バスで向かい、0時過ぎに甲府駅で全員集合し、ジャンボタクシーで芦安に向かいます。芦安山岳館の下に、無料休憩所があるので、そこで4時まで仮眠としました。夜は星空も見え、明日は快晴が予想されました。休憩所は結構空いていて快適に寝ることができました。
7月10日
 4時起床で5時10分発のバスに乗り、夜叉神登山口で下車です。今までの梅雨空が嘘のように快晴です。今回は水場がないので、1人2.5リットル担ぎあげることとし、登山口横の水場で各自水を確保します。この時間で夜叉神登山口から登る人も少なく、静かに登り始めます。皆さん重い荷物ですがコースタイム通りに高谷山分岐に到着。せっかく天気もいいので、北岳、間ノ岳などの名峰を拝もうと夜叉神峠まで足を伸ばしてみます。W辺さんにとっては初めての景色であり感動しておりました。
 しばし休憩し、本来のコースに戻ります。少し登ると高谷山に到着です。桃ノ木温泉への分岐を左に見やり、進路を南にとるルートを進みます。まだルートはしっかりしています。アップダウンを多少繰り返し、朽ちた道標を見たりして、カンバ平に着きました。ここからの展望は素晴らしいです。白い甲斐駒様も見えます。しばらく、景色を堪能しました。
北岳、間ノ岳、農鳥岳が一望できるカンバ平  ここからさらに南下し団子沢山を目指しますが、この稜線は思いのほか自然林が多く、とても気持ちがよかったです。立派な栂が多くあり、オブジェのようなものがたくさんありました。展望のない団子沢山は山名板などは一切なく、ひっそりと三角点と温泉マーク?が書かれた板がひっくり返って落ちていました。ひっくり返っていたので正面に戻しました。ここまではなんとものんびりと気持ちよくきましたが、ここからが地形図とコンパスを駆使する難しい部分となります。
 団子沢山から少し下った1700m付近の左側にまず最初のザレが見えてきます。かなり大きなザレでこの付近の地質がよくわかります。このザレの際に沿って南東方向へ、尾根ではない部分を下降するのが正解です(尾根は崩れているようです)。少し進むとまたザレが出てきます。ここもザレに沿って進むのですが、N田さんがトップで歩いていて何気なく下道がついた尾根を降りていったのですが、最後尾でコンパスを振っていてもなかなか正規ルートへ方向が定まりません。まんまと引き込まれたようで、N田さんに声をかけて登り返します。下道は獣道のようです。またザレがある1667m点に戻り地形図とコンパスを出して方向を定めます。進む先は確かにザレの際ですが、少し藪がかかっています。注意して歩いていないと南側の尾根に引き込まれそうです。急斜面の下降で灌木をつかみながら下っていきます。W辺さんも急斜面を下るときのコツをつかんだようです。さらに南東方向に進み、鞍部からまた登り返して、1683mの小ピークに到着です。ここでルートが南方向に変わり、いよいよドノコヤ峠が近いです。進むと少しルートが悪く、どうしたのかなぁと思っていると左手から水平路が合流しました。どうも1683mのピークを捲くように道がついていたようでした。さらに尾根が細くなりドノコヤ峠に向けて下降していると、また左手に快適な水平路が見えてきます。これは何だろうと思っていると、ドノコヤ峠手前で合流しました。これはどうも、ドノコヤ峠への古道であり、桃ノ木温泉から御勅使川に沿ってある古道で芦安と奈良田を結んだ由緒のある古道のようです。ドノコヤ峠は本当に狭い場所でした。簡単な山名板と指導標がなければドノコヤ峠とは分かりません。西側は奈良田側ですが、結構なザレになっていました。奈良田、旧芦安鉱山への取り付きは確認できませんでした。
本当に静かな佇まいだったドノコヤ峠  この時間ならば唐松峠ぐらいまでいけそうかなあと思っていると、突然目の前に大岩が現れました。直登ができるかと偵察してみたのですが、ポロポロと崩れる岩と先の崩壊したルートを見た途端無理と決定。左側、右側から捲けるかと思ったのですがN田さんの偵察でどちらも悪いとのこと。K崎さんが下部に道があるかもということで、少し戻り細引きを使ったりして急斜面を一気に下がるとちゃんと下道があり、こちらが大岩を捲く正規のトラバースルートでした。大岩の手前にこの捲きルートがあったようですが分かりませんでした。んー事前の調査不足でした~。時間が結構かかってしまったので、この先の1737m台地に幕営することを決め、最後の一登りを頑張りました。
時間を費やした大岩様  1737m台地は高山からルートのようで、赤布が多少目につきます。でも、なかなか4~5人エスパースを設営できる場所がなく、地面も枝が出ていたりして、幕営場所を探して、ようやくぎりぎり設営できる場所を決めテントを設営しましたが、地面の飛び出た根っこがテントを破らないか心配でした。
7月11日
 昨晩はとても暑くて汗が止まりませんでした。3時起床で4時48分出発です。ひとまず天気も大丈夫そうです。左手の大規模なザレを見ながらまた進むと祠のある唐松峠に到着です。この祠の瓦部分には「山の神」と書かれ、非常に珍しいタイプの山の神でした。歩いていて思ったのですが、明らかにドノコヤ峠から幕営地点までのルートより、こちらのルートのほうが下道もしっかりとついて良い道です。高山からのルートがしっかりとあるのでしょうか。いくつかアップダウンを繰り返し進行方向も屈曲しながら進み、池の茶屋林道近くの鞍部に7時頃に到着です。初日の行程がスムーズにいけば本来はここで幕営をしたかったのです。確かに幕営に最適な明るい良い場所です。右手には林道に向かう下道もしっかりと付いていました。林道に出て登山道で櫛形山を目指すことも考えましたが、尾根沿いに一気に櫛形山を目指すこととしました。シダが一面に広がりなんとも不思議な光景を眺めながら登ると、人が1人見えました。どうも櫛形山のようです。やったーとN田さんと向かうと、三角点はあるももの櫛形山の山名板などは全くありませんでした。アヤメが咲かず人も来ないので櫛形山の標識類を全て撤去したのでは?と思いながら裸山方向に進みます。初めての櫛形山ですが、私のイメージは一面花が咲く草原のようなところだったのですが、結構鬱蒼とした中を進むルートで驚きました。しばらく歩くと櫛形山の標識類がありました!なんでこんなところに設置しているのか意味がわかりません。ここも奇奇怪怪な形をした樹木がたくさんあり、なんとも奥深いなあという櫛形山のイメージに変わりました。
“偽”櫛形山山頂にて記念写真  なんとも歩いていて退屈だなあと思いながら進むと開けた場所に出ました。ここが裸山で、よく写真などで見るアヤメの群生地跡でした。『この美しさいつまでも』という看板が虚しいです。確かにここにアヤメが一面に咲いていたらさぞや綺麗でしょう。現在は数ヵ所柵で囲っていて、その中に一輪だけアヤメが咲いていました。ひとまずアヤメを見れたことだけでも奇跡です。本当に鹿に食べられてしまったのだと、この柵の内側を見て実感しました。ザックをデポして裸山も登ってみました。その頃私は唐松岳から芦安に下るルートのことが非常に気がかりで、その頃から少し緊張してきていました。アヤメ平は『マルバタケブキ平』になっていました・・・。アヤメにも毒があれば鹿さんが食べないのですが・・・。天気が怪しくなってきたので、そそくさとアヤメ平をあとにします。
 唐松岳方面に向かい、ピーク手前で芦安への指導標があったのでそちらに向かいますが、出だしから道が薄くなります。このルートは唐松岳には向かわないでトラバースする感じで唐松岳から延びる尾根に合流します。エアリアでの赤点線のルートを地形図に落とし込みコンパスを振りながら進みます。薄く踏み跡はありますが廃道度70ぐらいです。1735mの小ピークでルートは直角に北側に変わります。朽ちかけた指導標があったので、ひとまずルートは間違っていないことは確認できます。しばし休憩し、「ここからが長いね~」とN田さんが一言。N田さんもやる気が漲ってきているようでした。私も櫛形山界隈では眠かったのですが、目が覚めました!しばらくは白テープや指導標などもあり、廃道度60くらいです。地形図に載っていない林道を越し、1590m小ピークから北北西へ進むルートからは廃道度80くらいです。ルートが顕著な尾根ではないのであたりを見回しながらコンパスを振り、GPSで確認しながら、古ぼけた白テープや古い空き缶などを見つけて安堵するという感じでした。1110mの台地は上からみてもわからず、絶対にここにあると思い無理やり転げるように下ると、なんとも不思議な空間にたどり着きました。荒廃した野外劇場のような感じです。ここからしばらく進むと桃ノ木温泉からの林道に降り立ちほっとしたのですが、ここからが大変でした。下降予定地点の岩園館への指導標があったので、それとなく向かったのですが、明らかに廃道状態です。どうも予定コースより左に寄っているようで、右側の尾根にトラバースする感じで行くと正規のルートに戻りました。指導標を見てすぐに右側に行くのが正解のようでした。「芦安バス停」となんとか判読できる看板がありますが、その降り口もなんとも怪しい感じですが、目を凝らして降り口を確認できました。後は一方向に降りればなんとか着くだろうと惰性で下ると堰堤下の広場に出たのですが、岩園館への道がなく、最後は棘のある藪を適当に突き進み、岩園館の上側に降り立つことができました。N田さんと私はいつものような感じで楽しみ?ながら下れたのですが女性陣には泥だらけにさせてしまい、大変申し訳ございませんでした。岩園館に着くと雨が降り出してきました。次の甲府行きのバスまで1時間ほど時間があったので露天温泉に入りました。N田さんは歯ごたえのあるコースだったと満足されたようで良かったです。
 廃道の道を探して歩くのはなかなか難しいです。逆に藪ルートのほうが自分たちで決め込んで突き進めるので楽かもしれません。お風呂上りに宿のおじさんに聞いてみると、この廃道を整備していたのが、正にこのおじさんで、今はまったく整備していないようで、「よく歩いてきたね」と言っていました。聞くとルートを外れてぜんぜん違う所に降りてきた人もいたようです。池の茶屋林道から櫛形山に簡単に登れるルートができたおかげで、芦安からのこのルートはすっかり廃れてしまったようです。私はこちらからのルートが赴きがあっていいような気がするのですが・・・。
 今回は以前から気になっていたドノコヤ峠を訪れることができて良かったです。御勅使川からドノコヤ峠に向かい、旧芦安鉱山から奈良田に抜ける本当の峠抜けコースを歩いて、古の気分を味わってみてもいいかもしれません。

〈コースタイム〉
7月10日 晴れ
芦安(05:10) → 夜叉神登山口(05:28~45) → 夜叉神峠(06:45~07:00) → 高谷山分岐(07:05) → 高谷山(07:25) → カンバ平(08:15~5) → 団子沢山(09:20~45) → 1700mザレ分岐(09:52) → 1667m迷い分岐(10:20) → 1683mP(11:35 → 12:00) → ドノコヤ峠(12:35~55) → 大岩(13:25) → 1737m台地(14:40)【幕営】
7月11日 晴れのち雨
1737m台地(04:48) → 唐松峠(05:13) → 1833mP(05:45) → 1971mP(06:35) → 林道沿い1860m鞍部(06:55~07:10) → 櫛形山三角点(07:55~08:05) → 櫛形山山名板(08:25~35) → 裸山(09:20) → アヤメ平(09:50) → 唐松岳直下芦安分岐(10:15) → 1735m変曲点(10:35~45) → 上部林道(11:00) → 1110m台地(12:20) → 下部舗装林道(12:40) → 岩園館(13:40)

〈諸経費〉
・【夜行バス(山梨交通)】
 新宿バスターミナル~甲府駅:@1,950円
・【バス】
 芦安市営駐車場~夜叉神登山口:@510円
・【温泉】
 岩園館:@1,000円
・【バス】
 芦安温泉~甲府駅:@960円
・【特急あずさ(あずさ回数券使用)】
 甲府駅~新宿駅(特急指定席):@2,800円

〈コース〉

コース


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