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百名山・北海道(羅臼岳・斜里岳・大雪山)
箭内 忠義
澁谷 聡子

山行日 2010年8月1日~5日
メンバー (L)箭内、原口、澁谷

8月1日(日) 雨 土砂降り 【執筆】箭内
 13:15に羽田空港を飛び立ち、15:00に北海道、女満別空港に着いた。外は土砂降りだ。雨が我々を大歓迎してくれていた。何でも歓迎してくれるのは有難いことです。
 レンタカーの手続きをし、今夜の宿として予定していた公営のキャンプ場を目指したが、キャンプ場は閉鎖されていた。ありゃ。
 そこで、道の駅、うとろ・シリエクトを今夜の宿とした。屋根付きで快適だ。お酒がすすみました。昼は暑い東京にいたのに、夕食の時は涼しい北海道、うとろ、にいるのが不思議な感覚であった。羽田空港での搭乗手続きが思いのほか時間がかかり、慌ただしかったが、明日からの山行に想いを馳せ眠りについた。

8月2日(月) 快晴 澄みわたる青空 【執筆】箭内
 今日は、羅臼岳登山です。朝、テントから出ると澄みわたる青空だった。空気も涼やかだ。ワクワクした気持ちになりますな。
 早速、羅臼岳登山口である岩尾別温泉、木下小屋に向かった。綺麗に舗装された道路には自分たちの車以外誰も走っていない。右に左にと適度なカーブがあり、適度に登り下りがあり、車を走らせていて気持ちがよい。車窓にはオホーツク海が見えるのだ。知床五湖に近づくと、鹿が何匹も何匹も草を食べていた。車を見ても逃げようとはしない。自然保護地域になっているようだ。
 そういえば、昨夜は食事の後のゴミをうっかりテントの外に出しておいた。そうしたら夜中にキタキツネが来てゴミをあさっていた。原口さんがそれに気づきゴミを始末してくれたのだ。岩尾別温泉、ホテル地の涯の脇を抜けていくと木下小屋があり、登山口だ。原口さん、澁谷さん、箭内の順に登っていく。恵那山で原口さんは両足をつってしまうというアクシデントがあったので、今回はダブルストックである。澁谷さんもダブルストックだ。さて、出発だ。
原生林の中に突入です。がんばれ  ミズナラ、トドマツ、カンバ等々、樹木が密生し、森が濃い。樹林帯の中を歩くのはとても気持ちがよい。なだらかに登る登山道を1時間ばかり行くと、目の前に羅臼岳が雄姿を現した。登山道の遥か先にコニ―デ型の富士山のような形をしている。美しい。
 オホーツク展望台と標識があった。羅臼岳は百名山で人が多いのだろう、登山道は整備されているし、標識もしっかりとついている。この先、弥三吉水、極楽平、仙人坂、銀冷水、羽衣峠、大沢、羅臼平と標識が登って来た段階を示してくれる。
 オホーツク展望台からは若干傾斜がきつい個所が出てくる。原口さんが「熊だよぉー」と教えてくれる。蟻の巣だ。熊が好物の蟻の巣をほじくったあとだ。そういえば、途中の看板に「熊が密集しています。気をつけて」とか何とかと書かれていた。そうであろうと思い、今回は皆が鈴を持ってきた。
 極楽平と標識があるところは平らな登山道になっています。歩いていてあることに気がつき、感動的な気持ちになった。木々がみな横倒しにはえているのだ。直径30センチ40センチもあるダケカンバの木が真っ直ぐ上に伸びないで地上2メートル位のところからぐにゃりと曲がり地面を這うように伸びている。冬の風雪に耐えてこの形になったのだろう。これらの木々を見ただけでも羅臼岳に来たかいがあったというものだ。へこたれてはいけない。文句など言ってはいけない。足腰を鍛え、ぐっと耐えるんだ、と教えられているような気分になった。弥三吉水、銀冷水を過ぎると登山道の様子は一変する。大沢という水のない沢を詰めあげていく。北の国の花々がとても綺麗だ。エゾコザクラ、チングルマ、ツガザクラ、イチヤクソウ等々沢山の花が私たちを迎えてくれて嬉しい。
 大沢を過ぎると広々とした平地に飛び出す。羅臼平だ。ハイマツに覆われた羅臼平の右手には羅臼岳山頂部の岩山がどんと鎮座している。ここには、登山道を切り拓いた木下弥三吉のレリーフがある。大勢の登山客が休んでいる。私たちも大休止だ。
 原口さんが順調なのが嬉しい。ダブルストックは効果があるようだ。それに、ここまでの登山道は極端な急登がない。ゆっくり歩いて来たせいかさほどきつい感じはしなかった。
 さて、羅臼岳山頂部に向かって歩いていくと、フードロッカーというものがあった。大きさは、70リッターリュックが縦に3、4個分くらいか。全部が金属で出きており重く頑丈だ。熊対策でテントを張った場合、食料はすべてフードロッカーに入れておくそうだ。
ハイマツの羅臼平から山頂を目指します  さて、ハイマツで覆われた羅臼平を抜けると道は急登となり岩ゴロとなる。岩ゴロの登りに入るとすぐに、岩の間から水が滴り落ちてくるところがある。岩清水だ。この水が美味しい。それに冷たいのだ。岩清水に元気をもらい最後の登りを頑張る。傾斜がまし、岩稜となるが、最後は、ポオーンと平らな頂上に飛び出した。到着だ。
 目の前に国後島が見える。知床連山の山並み、知床五湖などなど360度の展望だ。阿寒岳の他、斜里岳も見えるのだ。遠き地である北海道まで来てよかったなあ。こんな素敵な、気持ちの良い気分を味わえるんだから。感謝です。下りは来た道を戻ります。
 温泉は、岩尾別温泉、ホテル地の涯です。源泉かけ流し、内風呂、丸太風呂、露天風呂とあります。全部の風呂に入りました。露天風呂では源泉から花が2輪流れ込んできました。汗を洗い流しすっきりした気持ちになれました。
 明日は斜里岳に登るので登山口である清岳荘まで車で移動しました。
羅臼岳山頂です!快晴、涼風、360度展望
〈コースタイム〉
8月2日(月)
岩尾別温泉・木下小屋(06:00) → オホーツク展望 → 弥三吉水 → 極楽平 → 仙人坂 → 羽衣峠 → 羅臼平 → 羅臼岳(12:30~50) → 木下小屋(17:10)

8月3日(火) 曇り 【執筆】澁谷
 清岳荘の駐車場で前泊したが、かなり早い時間から外が騒がしくなりあまりゆっくり休めなかった。なにしろ昨晩ここへ到着したのは、20:30頃だったし。眠くても今日は斜里岳に登るのです。
 清岳荘を5:30に出発する。旧登山口まで歩き、その後は一の沢沿いに流れをさかのぼっていく沢のコースです。飛び石伝いに何度も右岸左岸と徒渉を繰り返していく。赤テープもあるけどわかりにくいところもあり、たまにコース取りを失敗し「あっちの方が楽だったぁ」なんてことも。鉄分が多い赤茶けた石なので、滑りにくくて助かりました。
 下二股からは、さらに沢をつめていく旧道コースをすすむ。次々に現れる滝を眺めながら、高捲きばかりの沢登りといった感じです。方丈の滝、霊華の滝なんて札もぶら下がっていたりして、なかなか綺麗な滝がいくつも続きます。この暑い季節に水の音を聞きながら登るのは、とても嬉しいです。
沢沿いの道を登っていきます  新道コースが合流する上二股ではゆっくり休憩する。低木の中を登っていき、胸突八丁と呼ばれる急斜面をがんばって登り、馬の背へ出る。ここまで来ればあとひと登りで程なく山頂です。
 広い山頂には斜里岳頂上と標識がついた固めたケルン。もちろん大休止です。途中で出会ったお利口さんな柴犬さくらちゃんとパパ、バリバリ働きガンガン遊ぶスーパーレディさんとお喋りしたり、ガスっていましたがとても素敵な山頂でした。
斜里岳頂上です!柴犬は全国放浪犬です  帰路は、上二股まで下り、沢を離れて新道コースに入る。竜神の池の誘い看板にうっかり行こうとしましたが、少し遠いようです。ドロで滑っただけで止めて帰ってきました。熊見峠へのハイマツ帯の尾根道はとても気分がよい。振り返ると斜里岳。思わず伸びをしたくなる景色です。続く樹林の中の下りは結構急だった。下二股でやっと旧道と合流。そこからは徒渉を繰り返す往路と同じ道をひたすら戻る。
 沢あり、ガレあり、尾根ありの盛りだくさんで楽しめる山でした。はるばる来たんだなあと感慨も一入な山行でした。
 下山後のお風呂は、スーパーレディさんお薦めの川湯温泉の公衆浴場250円なり。素朴でいい温泉だったなぁ。
 今回はゆったり、まったりのジジババ山行のため、コースタイムは全く参考になりませんので悪しからず。

※清岳荘の車中泊は500円。小屋は21:00から3:30までは閉まるそうですが、それ以外の時間はトイレも使えます。

〈コースタイム〉
8月3日(火)
清岳荘(05:30) → 仙人洞 → 下二股 → 旧道コース(沢沿い) → 上二股 → 馬の背 → 斜里岳(10:20~55) → 上二股 → 新道コース(尾根道) → 熊見峠(12:55) → 清岳荘(15:03)

8月4日(水) 晴れ 【執筆】箭内
 今日は3日目、大雪山、旭岳登山です。3日の宿は、道の駅「とうま」だ。斜里岳から大雪山の近くまで移動してきたのだ。
 昨夜、今日の予定を話し合った。ロープウェイを使い、旭岳、間宮岳、中岳分岐と歩き、峰々を周遊して姿見駅に戻るコースとし、道の駅6時出発、ロープウェイ7時とした。
 朝5時半前、原口さんは突然「朝の料理を作るぞー」と騒ぎ出した。私は「時間がない、出発時刻に間に合わなくなるよ」と思ったが、原口さんは「大丈夫、大丈夫、すぐ終わるから」と、とっとと料理を作りだした。卵が10個あった。半熟玉子を私は1個しか食べなかったが、澁谷さんは計4個ほど一度に食べるはめになった。おいたわしや。
 いままでは、時間がなく、調理されたものを買い、食事は済ませていた。だから、段ボール3つに野菜、キノコ等が残っていたのだった。キノコの料理はおいしかった。でも、食べきれず、道の駅に泊まっている人にあげた。その人は熊本から来た夫婦だった。春、さくらの時期に熊本を出発し、花を愛でながら北上し、涼しくなる秋に自宅に戻るのだという。何と4カ月以上も車で旅をしているそうだ。車の中は改装され、べット、水道、冷蔵庫、コンロ等何から何まで揃っていた。世の中には色々なことを楽しむ人がいるのだと妙に感心してしまった。
 結局出発が遅れ、旭岳ロープウェイ・姿見駅に到着したのは8時30分になってしまった。ですから、計画変更で旭岳往復としました。
 大雪山は広大な高山帯を形成している。その中で、最高峰が旭岳であり、北海道一高い山なのだ。火山の山です。ですから噴煙があちらこちらから出ています。もちろん温泉の宝庫です。
 火山の山なので南の山、阿蘇山に似ているなあと思いました。
旭岳麓は噴煙が出て阿蘇に似ている  さて、出発です。百名山ですので登山客は予想通りたくさんいます。しかし、山が大きいためさほど混雑しているという雰囲気はありません。ツアー客が隊列を作って登っていきます。私たちも火山礫の尾根を一歩一歩のんびりと登っていきました。高山植物の宝庫と聞いていましたが時期がもう過ぎてしまったのか花に見とれるということはありませんでした。
 樹木もなく吹きっさらしの尾根道なので開放感たっぷりです。空気を胸いっぱい吸い込み日ごろのストレスを吐き出します。
 高度があがるにつれて景色は変わり、展望がよくなります。高根が原、トムラウシ、そして、本来なら、行こうと計画していた間宮岳などが目の前に広がります。景色を楽しんでいると難なく頂上に到着です。
 頂上は360度の展望です。広い頂上広場ではそれぞれに景色を楽しみながら休憩したり食事をしたりしています。
 さて、これで今回の北海道百名山で計画した、羅臼岳、斜里岳、大雪山(旭岳)のすべての山の完踏です。3人で堅い握手をして下山です。
頂上からはトムラウシ等美しい山並みが  下山は、登ってきた道を戻ります。ちょっと気が抜けた、ほっとした気分です。
 途中、ツアー客の人が歩けなくなりうずくまっています。付き添いの人が一生懸命に介護していました。旭岳はなんということもない山に思いますが、初めての人、体調がすぐれない人にとっては厳しい山となるのか、油断はできないと思いました。
 また、私たちが歩こうとしていた巡回コースを早くも回ってきた人に会いました。2時間30分で回ってきたと言っていました。タフな人でした。うずくまる人、さっさと回ってくる人、山はいろいろな人が登っています。
 さて、下山後は温泉です。山麓は旭岳温泉街です。10軒ほどある温泉の中で、これだ、と選んだのが「湯元・湧駒荘」です。行ってみると大当たりです。一番の老舗でした。宿の中には昔の写真が掲示されており楽しめます。綺麗で、温泉もとても満足できるものでした。ついてました。
 夜は旭川駅前のホテルに泊まりました。飛行機とセットになり1泊の宿がついているです。夜は旭川の街に出で宴会です。地元の人から情報を仕入れます。地元の人たちが利用しているという評判の店です。チェーン店とは違い一皿一皿がおいしかったです。
 何せ、北海道ですから。食べないわけにはいきません

〈コースタイム〉
8月4日(水)
旭岳ロープウェイ・姿見駅(08:30) → 旭岳石室 → 旭岳(12:25-50) → 姿見駅(14:15)

8月5日(木) 【執筆】箭内
 帰る日の5日は、旭山動物園に遊びに行きました。オットセイが水柱を泳ぎ回り、オランウータンが私たちの真上を綱渡りしています。動物たちの姿を上手に見せてくれています。小さな動物園ですがゆったりとした気分になり楽しめます。原口さん、澁谷さんもにっこりとしたやさしい顔になっていました。
 動物園のおまけがつき、今回の百名山山行も幕となりました。最後に空港で旭川ラーメンを食べたかったのですが店は満員です。時間がなく食べられませんでした。
 北海道の百名山はまだ3つ残っています。来年もぜひ行きたいなあと思っています。


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