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沢登り・角楢沢下ノ沢
金子 隆雄

山行日 2010年7月31日~8月1日
メンバー (L)金子、高木、深谷、大田、渡辺(守)

 朝日連峰の南端にある祝瓶山、主稜線から外れた前衛とも言えるこの山は気になる存在だった。もちろん無雪期に登山道から登るなんていうのはなしだ。この山を巡る沢は色々あるが今回は荒川の支流の角楢沢へ行ってきた。上部で上ノ沢、中ノ沢、下ノ沢と分かれるがその中で一番よく登られている下ノ沢をターゲットとした。余裕があれば祝瓶山のピークへも行くつもりだった。
 30日夜に東所沢駅に集合し関越道をひた走る。豊栄SAでビバークし翌朝、胎内ICで高速を降りて小国、五味沢を経て林道終点まで入る。林道終点は少し広くなっていて駐車可能でトイレも設置されている。ここから入渓点の角楢小屋までは山道を約1時間だ。いつも長いアプローチを強いられる沢ばかりなのでなんて近いんだろうと思ってしまう。
 角楢小屋へ行くまでに吊橋を3つ渡る。林道終点から直ぐの橋は幅は広いが板が1枚しか渡していない。が特に問題ない。2つ目もどうということはない。3つ目は丸太(というか、直径5~6cmの棒)が渡してあるV字状の吊橋でこれを渡るにはかなり勇気が必要だ。女性たちはこの吊橋を嫌って川へ降りて渡渉準備を始めた。3つ目の吊橋を渡るとじきにこじんまりとした角楢小屋に着く。
 小屋の前で溯行準備をしていると腰に籠を下げた人達が降りてきた。何が採れるのか聞いてみたらトンビマイタケだとのこと。今年は時期が早かったらしく採れなかったとのことだ。トンビマイタケってどんなキノコか気になったので帰ってから調べてみた。マイタケはミズナラの木に生えるがトンビマイタケはブナの木に生えるらしい。特に立ち枯れのブナによく生えるらしく8月が最盛期だそうだ。炊き込みご飯にして食べると美味いらしいが私は食べたことも見たこともない。
角楢小屋  少し遅れていた女性たちも到着したので沢へ降りることにする。登ってきた道を少し戻り踏み跡から角楢沢の河原へ降りる。私が先頭だったのだが河原へ降りると待ってましたとばかりにアブの大群にたかられる。俗にメジロなどと呼ばれる小型のアブで刺されると結構痛いやつだ。目の前が暗くなるほど(ちょっと大げさかな)で大慌てでザックから防虫ネットを取り出し被る。後続はこれを見ていたので河原へ降りる前にしっかり対策済みだった。歩き出すとだんだんとアブの数も減ってくるがしばらくは防虫ネットは外せず息苦しい。
 平凡な河原をしばらく歩き左岸の崩壊地を過ぎるとだんだんとゴルジュっぽくなってくる。ゴルジュといっても悪場はなく楽しく溯行できる。
下流部の廊下状のゴルジュ  1時間ほど溯行して休憩時にちょっと上流へ釣に行ってみる。全然釣れないまま直ぐに左岸より水量の多い沢が出合った所で引き返す。溯行を再開すると直ぐに先ほどの沢の出合に着く。まだ先だろうと思っていたのでここが下ノ沢の出合とは思わずに右の沢、すなわち下ノ沢へ入るが少し進んで何か違うんじゃないのと感じて引き返し左の沢へ入ってみる。流木の詰まった小滝を苦労して越えて少し行くと10m以上の登れそうもない直瀑が現れる。これでようやくこの沢は上ノ沢で先ほど引き返したのが下ノ沢であることに気づいた。今日の泊まりは下ノ沢の出合を予定していたのでまたまた引き返すことになった。
 まだ時間は早いがこの先に5人もが泊まれるような所はなさそうなので幕場を探す。この辺は狭い河原しかなく、なかなか良い場所がない。下ノ沢の対岸の急斜面を10mほど上がった所に傾斜はあるが何とか泊まれそうな所があったのでタープを張る。沢へ降りる急斜面にはロープをフィックスしておいた。ここを登ってくる時はきっと酔っ払っているだろうから。焚き火と食事の支度は沢へ降りてちょっとした河原で行う。時間はたっぷりあるのでのんびりと焚き火を囲んで一杯やっているうちにいつものごとく意識が飛んでしまう。
 8/1、どうやって登ってきたか覚えていないがちゃんとタープの下に寝ていた。上半身をシュラフから出したままだったので虫に刺されて両腕が酷いことになっていた。沢へ降りて朝食を済ませ、すっかり明るくなった頃に出発する。天気は今日もどんよりした曇り空ですっきりしない。
 出合の滝は右端のU字溝のようにえぐれた所を登る。滑りそうに見えるが意外とフリクションが効いて滑らない。ゴルジュの中を進んで行くと直に10m直瀑が現れる。一見して「あ、これは登れない」と感じる滝だ。両岸ともに高いが高捲きルートは右岸に見出すしかなさそうだ。出だしがちょっと難しい露岩を2~3m登ると先は草しか生えていない泥壁だ。上流側へトラバースできるかと思っていたが崖状で無理なので下流側のブッシュ帯まで泥壁をトラバースする。ブッシュ帯も急傾斜で潅木にぶら下がるように直上する。きつい登りで腕力が尽きかける頃、ようやく傾斜が緩み平らな所へ出る。そのまま上流側へ進み適当な所で潅木伝いに下降し最後は13mの懸垂で沢床へ降り立った。結構厳しい高捲きだった。
 先へ進むと緑の苔が一面に生えて左岸から覆いかぶさるような形のゴルジュになる。ガイドブックでは「井戸の底のような」と形容されている所だ。しかし、中には滝もなく短いので何の問題もなく通過できる。
 次の大物はまたしても10m直瀑、更にその上にも8m滝が見える。登れそうにも見えるのだが、へたに取り付くと痛い目をみそうなので止めておくことにする。ここも右岸を捲こうとルートを探るがどこも厳しそうだ。正面を見ると滝の右にガレたルンゼが延びておりこれが使えそうだ。落石に注意しながら慎重にこのルンゼを登る。途中で左へトラバースできるかと思っていたが無理そうなので最後まで詰める。上部は岩が脆くて掴む岩がボロボロと剥がれる。何とか潅木帯に這い上がり後続のためにロープをフィックスする。全員傾斜の緩い所に揃ったところでトラバースして潅木伝いに降りると8m滝の上に降りることができた。この沢の高捲きはほんとうに悪い。
 連続する小滝を快調に越えていくと沢は開けてきて左からガレた沢が出合う。右の本流には5mほどの滝が架かっている。ガイドブックでは左のガレた沢から小尾根を乗っ越して捲くとあるが高捲きはもうコリゴリだ。ここは絶対に捲くより登ったほうがいいということになり水流左側よりロープを出してチアキがリードする。途中でシャワークライムになるが難しくはない。右側の草付きも捲けるようでナベちゃんが捲いていったが結構悪かったそうだ。
5m滝を直登する  沢は増々開けてきてだんだんとスラブ状になってくる。両岸は草付きで沢と草付きの高低差はほとんどない。二俣は右にルートをとる。今はガスっていて下を見ても何も見えないが晴れていたら相当な高度感だと思う。傾斜の強い水の流れるスラブをわずかなデコボコを拾って登っていくのはかなりストレスを感じる。途中どうしても草付きに移らなければならない所があるがとっても嫌らしい。
 もうそろそろいいだろうという所まで登って左へトラバースしていくと5分くらいの藪漕ぎで登山道へ出た。大玉山から祝瓶山へと続く登山道だ。時刻は14時、結構時間がかかってしまった。靴を履き替えて祝瓶山方面へと登る。10分ほどで祝瓶山への分岐に着いたが時間もおしているので全員一致で祝瓶山はパスして下山する。車に戻り着いたのは17時、結構遅くなったので終電に間に合うか心配しながらも取り敢えずは風呂だということで道の駅で風呂にはいる。サービスエリアで簡単な食事をして関越道をひた走り、東所沢駅に着いたのは終電の2分前だった。

〈コースタイム〉
7月31日
大石橋発(09:15) → 角楢小屋(10:20~45) → 下ノ沢出合(12:00)
8月1日
出発(06:50) → 登山道(14:00) → 大石橋(17:00)


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