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雪山登山・八ヶ岳赤岳
小芝 泰規

山行日 2010年12月25日~26日
メンバー (L)佐藤、永岡、平尾、小芝

 雪山への登山はこれが2回目となります。もともと、「冬山をやりたい!」という強い気持ちを持っていたわけではなかったし、自分が想像していた冬山は、“己の限界を試す”とは大げさかもしれませんが、相当に厳しいものばかりをイメージしていたので、自分には向かないと決めつけて、あまり気にすることもありませんでした。しかし、冬山独特の美しさや楽しさを諸先輩方から聞くうちに、冬の自然の中に身を置いて、冬山の姿を実際にこの目で見てみたいと思うようになりました。
【12月25日 曇り】
 車で美濃戸口から赤岳山荘の駐車場まで上がり、南沢ルートで今日の目的地の行者小屋を目指しました。行者小屋までの道のりは高低差を殆ど感じることがなく、静かな樹林帯の中のハイキングといった感じで、周りの風景を楽しみながら歩く事ができました。
 行者小屋に到着後、小屋前の広場に適当な幕営場所を見つけてテントを設営しましたが、テントを張ること一つにしても、他の季節とは勝手が違っていることに驚きました。
 テントの中で軽く昼食をとった後、明さんからアイゼン歩行、ラッセルワーク、ビレイ方法と滑落停止方法のレクチャーを受けました。1つ1つの動作を理由から詳しく説明していただいたので、頭ではすぐに理解できたつもりでしたが、実際にやってみると間違えたり時間をかけ過ぎたりして、うまく動作をこなす事ができませんでした。また、慣れないグローブでの作業は殊の外時間がかかることがわかりました。頭で分かっていても、実際の動作で手間取っていては意味がないので、繰り返し練習して体で覚えないと使いものにならないと感じました。
樹林に囲まれた静かな幕場  その後はテントに戻り、雪山でのテント生活の話を聞きながら、明さんの料理で大宴会が始まりました。普段、家でも食べない程大量の料理でしたが、味付けが工夫されていてとても美味しく、みんなガツガツと食べて完食しました。さすがに満腹でみんなの口数が減ったところに、「プリンを作ろう。おいしいよ~」という明さん。滅多に味わったことのない満腹感の中、みんなで反駁を試みましたが、結局作ることになりました。外気であっという間に冷え固まったプリンを半ばいやいや口へ運びましたが、これが予想以上に美味しく、ぺロリと1袋分を平らげ、結局もう1袋作ってしまいました。山で食べるプリンは本当においしかったです!
【12月26日 曇り】
 この冬は雪が多いといわれていました。しかし、この時期はまだ雪は少なく、踏み跡もしっかりしていたのでとても歩きやすく、順調な滑り出しで赤岳山頂を目指しました。樹林帯を越えて稜線に出でると、風が吹き付けはじめ、高度を増すごとに次第に横殴りの風へと変わっていきました。雪は降っておらず、視界も悪くないので、コンディションとしてはまずまずだったのかもしれません。顔に当たる風が痛いので、肌を隠すべく目出帽とゴーグルをつけました。しかし、10分程でゴーグルが曇ってしまい、前が見えなくなったので、いつもスキー場でやるように額の位置まで上げて曇りを取ろうとしました。数十秒後に目の位置に戻した時には、曇りは氷に変わり、ゴーグルは使い物にならなくなっていました。サングラスは持っていましたが、今まで経験したことのないほどの冷たい風が吹き付ける中、ザックから掘り起こせるような状況ではなく、目出帽を引きずり上げて凌ぎました。
 山頂からは、昨日レクチャーして頂いたコンテニュアンスビレイで下りました。樹林帯に入ったときには風が殆どなく、稜線の厳しさなど想像できないほど穏やかで温かいと感じる程でした。テントまで戻って暫く休憩したあと、テントを撤収するころには薄日が差し始め、赤岳山荘までの道のりでは天候も回復して、行き同様の楽しいハイキングになりました。
文三郎尾根  難しくないと言われている山でも、冬山はそれなりの知識と準備がなければ人間が普通でいる事が出来ない場所で、天候次第で何が起こるか分かりません。夏山でなら何ということはない失敗が、冬山では重大な事につながりうると思い、山の恐ろしさを感じました。また、山の知識が少ない会員を引っ張っていただいたリーダーには恐れ入りました。今回の山行では、致命的なミスを起こさないよう、小さな失敗をたくさん経験させてもらったし、冬山独特の楽しさや感動も体験させていただきました。今回の冬山登山を企画してくれた明さんをはじめ、自分と同レベルの会員が参加できる山行計画を出してくれている諸先輩方には本当に感謝したいです。

〈コースタイム〉
12月25日美濃戸口 赤岳山荘駐車場(07:30) → 行者小屋(10:30)
12月26日行者小屋(07:30) → 文三郎尾根 → 赤岳山頂(09:30) → 文三郎尾根 → 行者小屋(11:00~12:30) → 赤岳山荘駐車場(14:30)

赤岳山荘駐車場: 1,000円/日


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