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縦走・松木渓谷~国境平~大平山
峯川 正行

山行日 2010年10月16日~17日
メンバー (L)峯川、山口(順)、成田(義)、内田、原田

 人には望郷の地が必ずあると思います。常に頭に中に沁みついていて目を閉じると思いだす場所が・・・。私にとっての望郷の地『ノスタルジア』が皇海山の下部にある国境平です。2004年の秋、三峰に入会してすぐに高木さんリーダーでの松木渓谷から国境平を経て皇海山、庚申山をめぐった山行は私にとっては心に残る山行となりました。国境平で焚火をしながら紅葉を楽しんだあのひと時が・・・。それ以来、国境平に再訪したい思いが募っていて、今年は是非行きたいと自分の年間計画に当初から入れておりました。日程も紅葉がすばらしいであろうこの日程にしたのですが・・・。
 そしてこの山行を実施することを決断したのが山口順三さんと山に行った時に「国境平に行きたい!」という珍しく順三さんからの嘆願があり、これは意地でも実施せねばと思いこの日程を空けてもらっていました。そして、私にとっては大事なパートナー?の成田さんも「焚火もできて歯ごたえがあるルートですよ!」と焚きつけて早々にエントリーを頂きました。そして5名のベストメンバーと相成りました。2日目は少し頑張って歩くかも・・・と念を押しましたが・・・。
 15日東川口に深夜集合し東北道経由で清滝ICにて下車して細尾峠を通り足尾に入り、適当に仮眠しました。
【10月16日】 晴れのち曇り
 5時前に起床し、銅親水公園に移動し6時15分出発で松木渓谷を目指します。ここからは11月例会実施の大田さんパーティーの記録を参照していただければ幸いです。とにかく快晴の中気持ちよく沢靴で歩くことができて満足でした!という一言に尽きます。ただ一点ちょんぼをしてしまいました。ニゴリ沢出合からニゴリ沢に向けて進んで40分くらい歩くとモミジ尾根取付なのですが、みんなが調子に乗ってがしがし登っていたために取付点の目印に気付かずに進んでしまい、挙句の果てにこんな滝あったかなあという滝を成田さんにシュリンゲを出してもらったりして登り、その先で行きすぎた~と気付きました。滝を下降するのも何なので、ダイレクトにモミジ尾根に合流すべく支尾根に取付くことに。
 沢靴を撤収しながら進むべき支尾根を見上げるとかなり岩が多くガレている感じで登るのに気を使いそうです。成田さん、原田さん、私、山口さん、内田さんの順で登りますが、できるだけ違うラインで登るようにしました。落石が多発して危ないのです。逃げるように樹林帯に潜り込みました。樹木にしがみつきながら頑張って登っていくと成田さんが涼しい顔で休んでいました。ようやくモミジ尾根に合流しました。紅葉はまだ少し早いようで、あの時の燃えるような色ではなかったです。内田さんが疲れているのではと心配だったのですが、なぜか不敵な笑みで登ってきます。手に何かぶら下げています。ビニールテープのようなものに見えたのですが、なんと蛇の抜け殻でした!こうなると次に心配なのは順三さんです。順三さんは大の蛇嫌いです!蛇が登山道にいると引き返してしまうのです。ですが、動いていないから大丈夫とのこと・・・。ほっと致しました。しかし、蛇の抜け殻で内田さんは元気になったとのこと・・・。私はあまり元気にはなれませんが・・・。
 ここから皇海山と紅葉を眺めながら国境平を目指します。国境平から皇海山への斜度がもの凄いです!6年前よく登ったなあと思います。樹木に打ちつけられた黄色と赤の看板を拾いながら登っていくと見覚えのある虎ロープが見えてきます。ここを登れば確か国境平のはずです。6年前は黄色が鮮明だったはずですが、すっかりくすんだ色でロープも朽ちてきていました。
 頑張って登るとやはり見覚えのある国境平につきました。なんとも気持ちのいい場所です。焚火の跡もしっかりあり、釘で打ち付けた黄色の名作看板もありました!懐かしい~。早速ふさふさの笹の上にテントを設営し、薪を集め始めます。持参したノコギリを成田さんに渡すと、今まで見たことのないぐらい成田さんが働きます!笹原に落ちている大きな枝をノコギリで一生懸命切ってくれます。それも私は一言も頼んでおらず自主的です~。私にとっては成田さんはとても頼もしいです。私と順三さんはお水取りです。群馬側に5分くらい下ると沢の源頭部となり、いい感じで水が流れていました。多分ここは涸れることはないかと思います。国境平はそれほど薪がなかったので、薪を拾いながら幕場に戻ります。
 その後は最高の焚火を堪能させていただきました。もう悔いはないです。そんな気分になりました。順三さん、成田さんも盛大な焚火に飢えていたようで、キャンプファイヤー状態の焚火となり、結果的に私のエアマットに孔があいてしまいました~。つまみは私が持参した柚子胡椒で味付けした鶏肉をアルミホイルで包み、焚火のおき火で焼いて食べてみましたが、とても美味しかったです。夕餉は成田さんの酢豚(バージョンV)です。成田さんの酢豚を毎年食べないと年が越せないです。とても美味しかったです~。
 そして、食後はお酒を酌み交わしながら明日の打ち合わせです。上層部より明日の三俣山~シゲト山~大平山への行程が長く、2泊したほうがいいのではという提案があったのですが、急遽月曜に休みを取ることは不可。私自身も明日のルートに関しては数年温めてきたルートであり、ルートミスさえなければ問題なく林道に降り立つことができると確信していたので、予定を曲げるつもりは全くありませんでした。皆さんに明日は早出ちで頑張りましょう!と士気を鼓舞して就寝となりました。楽しみながら山に身を置くことも大事ですが、時には挑む形で山と対峙することも必要です。
【10月17日】 曇り時々晴れ
 3時半起床で幕場5時35分出発です。できれば薄明かり状態の5時15分くらいに出たかったのですが、焚火の後始末をしつこいくらいしっかりしたので時間がかかってしまいました。朝から私はかなりピリピリしていました。リミットタイムが決まっていて戦いに勝つんだという思いが強くなり、進むスピードも普段より早速くなります。下道は付いていますが、朝露が被った笹道なのでレインウェアのズボンを装着しました。振り返ると皇海山が立派に聳えています。
皇海山と鋸山が聳えます  日向山(1,695m)付近で2人パーティーに出会いました。昨晩はカモシカ平で幕営したようです。栃木側徒歩1分に水場があるという情報を得ました。今後の参考にしたいと思います。当初の予定では2日目の行程を考えてカモシカ平で幕営するつもりだったのですが、国境平で幕営してよかったです。カモシカ平幕営でしたら、この人たちと薪の争奪戦になるところでした。カモシカ平は砂地のサイトでカラマツも自生し気持ちがいい所ですが、私的には国境平のほうが牧歌的で好きです。カモシカ平は素通りして先を急ぎます。ここから釜五峰です。下道もしっかりついていて断崖沿いをスムーズに進めます。この釜五峰はS字状のルートです。急登をこなし釜五峰のうちの一峰である1,736m点でしばし休憩です。目の前には釜五峰の断崖絶壁が見えます。一旦下がり右に紅葉した松木渓谷を見ながら進みます。釜五峰を代表する顕著なピークの1,982m点には多分行かずに捲いて進路を北西に取るだろうと歩きながら思っていたのですが、予想通りで1,828m下の鞍部に出て進路を北西に進め樹林帯を進み1,840mの小ピークで方向を北東に変え深い笹原を降りるとようやく休憩ができるカマ北のコルに到着です。とても気持ちがいい場所で栃木、群馬両県の景色が堪能できます。今日は朝から高曇りですが、長時間歩く一日なのでちょうどいいです。アッコさんも多分そう言うはず。
この下がカマ北のコル、奥に三俣山が見えます  第1チェックポイントの三俣山目指して頑張ります。1,847mへの登りがなかなか大変で、もろい岩が露出した高度感がある急登なので一手一手気を付けながら登ります。ここからは三俣山までは深い笹をかき分けて登りますが、足元の下道は容易に見つかるので一歩一歩じっくり足を進めます。
 8時50分に三俣山に到着です。当初計算した時間、国境平から3時間10分にほぼぴったりでなんとか第1チェックポイントはクリアです。三角点にお触りして第2チェックポイントのシゲト山を目指します。途中まで宿坊堂山方面へのルートを進みますが、北東方向へ伸びる台地上に分岐します。分岐点には何も目印がなかったのですが、薄い下道と直感でそちらを成田さんに指示して進みます。円を描く感じでシゲト山への尾根に乗りますが、途中黒檜山を示す指導標がありました。しばし樹林帯であまり展望がききませんが、藪も全然なく歩きやすいです。いくつかアップダウンを繰り返し、たまに展望がいいと庚申山や禿山のような中倉山が見えます。シゲト山には10時55分に到着。予定通りの行程時間です。シゲト山には見たかった、この界隈では有名な山部氏の3D山名板があり拝ませていただきました~。
 ここからはアップダウンもないので惰性で進みます。樹木に囲まれた黒檜岳には12時25分に到着です。少し先にいくとまた黒檜岳です?!。山名板が2ヶ所あるようです。一般道で来た人は多分手前の所で引き返すでしょう。ここからは一般道で、少し先に千手ヶ浜への分岐点もあり、我々は社山方面に進みます。下道、テープ類があるので問題ないですが、だだっぴろいこのエリアは何も目印がなければ絶対に迷います。方向感覚が狂う会津の引馬峠を思い出します。大平山分岐は4年前に大平山から社山を歩いているのでその景色は覚えていました。気持ちのいい笹原に突然出てきたことを覚えています。その際にアッコさんがモダンなシルバー色の日傘をさしたような・・・。大平山への案内表示はありませんでしたが、即座にその方向に進路を変え、深い笹道を進みます。4年前はこんなに深かったかなあ~。すぐに大平山かと思ったのですが、思いのほか稜線に出てから長かったです。13時30分に見覚えのある大平山の山名板があり、眺望は最高です!昨日歩いた松木渓谷が一望できました。このご時世、禁煙しなくてはいけないのですが、どうしても雄大な景色を見てしまうとキャプテンブラックシガーで一服したくなるのです・・・。
 まだ時間に余裕があります。下山ルートをしくじらなければ、問題なく15時に林道に降り立てるはずです。
また大平山に来てしまいました!展望最高  大平山からまずは南西方向に降りすぐに尾根伝いで南東方向に進路を変えます。尾根と下道は顕著です。ここは4年前に登ってきたルートではっきり覚えていました。1,805m点が第3チェックポイントです。尾根が広いのでコンパスを成田さんと一緒に振り、厳重に方向を確認します。ここでミスるとタイムオーバーになります。4年前登ってきた1,545m点からのルートをまず切り捨て、1,356m点へ続く東南東方向への尾根への方向をコンパスでロックし笹原を進んでいきます。地形図ではわからないのですが、思いのほか起伏のある笹原で多少心配になりながら先頭を進む成田さんの後ろで方向をチェックします。奥に聳える尾根が大平山から延びるもう一本の壮大な尾根で位置、方向が問題ないと確信して突き進みます。展望がなくなりカラマツ林になるとシカの食害防止のネットが樹木に巻かれているエリアに到達。これによりこのルートが林道から延びているルートだと確信できます。私自身も先週、和名倉山でネット張りをしてきたので、これほどの作業はどれほどの重労働なのかは理解できました。下道の状況からするとこのルートは下山路として結構使われているなあと思いました。しばらく下ると左側に歩くべき安蘇沢林道が見えてきます。途中熊捕獲用のドラム缶がありましたが、熊はいませんでした!緊急時は人間が入っても問題ないとわかりました。
 15時に雨量計がある1,356m点に到着し、少し下を見ると尾根を捲くように林道が走っています。中倉山がどーんと見える場所でみんなでしばらく休憩です。陽射しが気持ちよく内田さんは鳳凰三山での地蔵岳の時のように即寝しておりました。寝付きが早いことはいいことです!
 ほっとした後は、長い林道歩きです。これならば暗くなる前に銅親水公園に着きそうです。林道歩きは退屈なので、シンガリでのんびり景色を見ながら下ります。何も考えないで歩くのは嫌なので色々と考えながら歩きました。6年前にこの界隈に来た際はまだ山のことはわからない状況でした。そしてこの6年間の間にいろんな趣向の山行に行ってきましたが自分に合う趣向の山行が完全に見えてきたような気がしました。今回のルートは他の人にとっては本当に退屈なルートかもしれませんが、私にとっては五感を使い、静けさを感じ本当の心休まるルートでした。今後は自分の趣向に合う環境に自身を据え置くべきなのかなあと疲れてきた林道歩きの後半部分で考えておりました。まあ、成田さんが今回も満足してくれたのでほっとしております。成田さんの「味気ないね~」という一言が出るとすなわち自分にとってルート選定ミスということになります。
 銅親水公園先の無線ゲートについたのが17時でした。赤と白の無線ゲートがゴールテープにも見えました。暗くなるまえでよかったです~。皆さんのお陰で計画通りに遂行できて感無量です。
 お風呂は高速の混雑具合で決めました。東北道はそれほど混んでいなかったので、清滝のやしおの湯に致しましたが、日光の紅葉のためか結構混んでいました。帰路の高速もそれほど混まずに東川口に21時前に到着し解散となりました。

〈コースタイム〉
10月16日 銅親水公園(06:15) → 松木集落跡(06:50) → ゲート(07:05) → 大ナギ沢出合(07:10~20) → ウメコバ沢出合(08:20) → 沢靴装着(08:40~55) → 堰堤乗越(09:05) → 三沢出合(09:15) → ニゴリ沢出合(10:55~11:10) → モミジ尾根取付先の滝(11:45~12:00) → 行きすぎストップ点(12:30) → 尾根取付(12:40) → モミジ尾根合流(13:10~20) → 国境平(13:50)【幕営】
10月17日 国境平(05:40) → 日向山(06:15) → カモシカ平(06:25) → 1,736m点(06:45~07:00) → 1,828m直下鞍部(07:25) → カマ北のコル(07:50~08:00) → 1,847m点(08:20) → 三俣山(08:50~09:05) → 1,928m西側鞍部(10:10~20) → シゲト山(10:55) → 黒檜山(12:25) → 千手ヶ浜分岐(12:45) → 大平山分岐(13:05) → 大平山(13:25~35) → 1,805m点(14:10) → 防護ネットエリア(14:35) → 1,356m点(15:00~15) → 安蘇沢林道分岐(15:50) → 銅親水公園(17:00)

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