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雪山登山・入笠山~白岩山
鈴木 章子

山行日 2010年12月30日~2011年1月1日
メンバー (L)鈴木(章)、藤井、小林、内藤

 アキちゃんの行く山は、何時も素晴らしい!このルートの展望の素晴らしさを、どう伝えたら良いか迷っています。
 北方(右)から、八ヶ岳、奥秩父(五丈石)、富士山、鳳凰(オベリスク)、甲斐駒ヶ岳、鋸尾根、北岳、間ノ岳、仙丈岳、白岩岳を挟み、赤石岳、背後(北西)は中央アルプスで終わる。眼下は伊那谷。
 冬は天気が安定しているので、時間があって、体力に自信がなくなりそうな時、是非、歩いてもらいたいルート。きっと、かつての元気を取り戻し、『山っていいな~』が、自然に湧き出してくると信じます。
 花に興味のある人は、6月頃、シライワシャジン、シライワコゴメグサもありますよ。
 この数年 毎年12月中旬を過ぎる頃、正月山行地を決めている。例会に並ぶ山は、既に、数回登っていて、私には目新しくない。今年は、膝も痛むし、『無理のない山を』と、考えている折、藤井さんからの提案。
 「雪は程々、水が採れる程度、きついのは駄目、気分はアルプス、出来れば近場で、人気のない所、ベースよりも縦走、アプローチがよい所」等々(よくもここ処まで並べたもんだ)の山を希望。
 少ない知識を絞った結果3つの案。黒帽子岳、七面山、入笠山。各山のルートを説明。二度目の返事で、『入笠山』に決定。メンバーは、私、藤井さん、年1回の付き合いの小林さんと、今回、訳有り参加の内藤さんの4名。

【12月30日】
 富士見駅発 10時のシャトルバス(無料)に乗って、スキー場へ。ゴンドラの片道切符を買うのはなかなか大変。チケットを売る人に、我々が行くところを説明しても通じず、遂に『釜無林道を歩きます』と説明(嘘)。
 15分位乗っていただろうか。ゴンドラで山頂駅へ。ここから、多くの看板に導かれ(それでも道に迷った)湿原、旅館街(山小屋)を通過。トレースはたくさんあり過ぎた。ほんの少しきつめの斜面を登ると、もう入笠山山頂。山頂は風が強く、小雪も降っていた。
風が強かった入笠山山頂  とても休む気分にはなれなかったので、来た道を少し下り、風をよけ、一休み。切首峠へ向かう。しばらく下ると『種牛牧場』へ。そこから車道を歩いた。雪は30cm位、車の轍を歩いたが、非常に歩きにくかった。このせいだろうか、内藤さん以外3名は、テントに入ってから足が攣る苦しみを味わった。
 『大阿原湿原』を通過後、ルートも判らず車道を延々と歩いた。左に『程久保山』を捲いた頃、十字路に出合い、現在位置を確認したところ、本日幕場予定地と判明。湿っぽい雪も降りだす。この間、小林さんは居眠りをしだす。このところ、忙しくて寝ていないと言う。
「今は、とにかくお家が欲しい!」
てな訳で、道路の端が、本日の幕場となってしまった。湿度の高い雪は、遅くなるまで降り続き、テントの中は、ベッタリ。酸欠が気になった。
【12月31日】
 4:30起床。外は満天の星空。身支度に時間がかかる。バリバリに凍ったテントを小林さんにお願いして7:15出発。
 釜無山登山口まで、しばらくまた車の轍を歩く。昨日よりも雪が多い。何ともつまらない道。登山口からは、我々のみの足跡になる。ここからは、俺達の世界。少しやる気になった。籔っぽいけど、雪も膝まで。美しい樹氷の中、鹿、兎たちの足跡が至る所に。
 「自然は友達。進め!進め!平坦な尾根。今年は、去年と違うんだ!」
 釜無山は、大きな鹿のヌタ場のような山頂。展望なし。山頂から先は未開の地。藤井さんは嬉しそう。尾根上には黄色テープと鹿トレースが我々を待っている、迷うことはない。
ヌタ場のような釜無山山頂  しばらく行くと、急な下りに入る。同時に、展望も始まる。山の名前を言い当てるのも忙しい。また、すべての名前が言える、自分が恐ろしい。鞍部から始まる今日中に越えなきゃならないピーク。今回、一番きつい登り。体力、年齢の差を感じる。鹿トレースが頼みの綱。傾斜が緩く安定している所を選ぶ彼らの本能には敬服。全員登りきった日だまりで大休止。展望と、日差しに心安らぐ。
 相談の結果、2,079Pは広いから、幕場にしようと決定。ところが、辿りつけばそこは、熊が日向ぼっこ、鹿の大群が目の前を横切る。動物の楽園地。夜が恐い。展望も良くないので先に進むことにした。
素晴らしい天候の中、未開のルートを突き進む  次の希望は、初日の見えるところ。気が付けば、何故か痩せ尾根の岩場の上。今夜の家は庭が狭い。早着きで、夜が長~い。ノンビリ、ノンビリ過ごす。酒一滴もないパーティー、それもまた良い。誰が話し出したのか
「『箱根駅伝』が見たい。」
「アレには、毎年、ドラマが有る。毎年欠かさず見ているンだ。」
19時に床に就いたが、「紅白を、俺は絶対聞く。」と小林さん。ラジオから、
「浜崎あゆみのベールが7m・・・」
それ以後、私は、記憶がない。
【1月1日】
 4時起床。日の出を待ちながら、食事、身支度をする。初日を拝み、出発。後、2ピーク通過で白岩岳。展望を楽しみながら、少しきつめの上り下りを繰り返す。尾根が平らになった辺り、細い木が密集したところに、大量の赤テープ。確認したところ、ここは白岩岳山頂ではなかった。恐らくここから下山できるポイントだろう。西側の尾根に向かって、テープが続いていた。
 そこから10分ほどで、素晴らしい展望の山頂に着いた。三角点、山名板もある。この素晴らしい展望もここで終わり。心おきなくなく見つめ下降点である次のピークへ。
 明瞭な尾根。ここから藤井さんはトップの人となる。嬉しそうにどんどん進む。途中、1か所、岩場に出るが左にトラバース気味にルートを取ると、登山道らしきものと合流。後は、その道に沿って大久保沢に降り、沢を4~5回渡ると小黒川にかかる丸木橋に出る。それを渡れば車道と合流。車道には、13:25着。雪は全くない。今回1度もアイゼンは使わなかった。ワカン持参の内藤さん、ご苦労様でした。
 ここから、仙流荘までの時間が測れなかったので、この林道の脇で1泊する予定だった私。ところが、
「『箱根駅伝』が見たい。アレには、毎年、ドラマがある。毎年欠かさず見ているンだ。」
 また、始まってしまった。私たちにも、今回、立派なドラマがあったじゃないですか(プンプン)。わがまま爺ども。
「ハイハイ、判りましたよ。帰りましょ!モー 全く・・・」
 戸台橋まで1時間、仙流荘まで1時間。計2時間で歩き通せたが、冬登山靴に、舗装道路は辛い。とっても不幸せな気分。バスは17:15最終には乗れそう。
 入浴を済ませ、のんびりとホテルで休んでいると、餅つきが始まり、食べさせてくれた。やはり、今日、下山した恵みはあったのか?バスは17:15を過ぎても来ない。
「今日は、正月だから遅れているのだろう」
と、全員。ところが、隣で、新宿行き直通のバスを待っていた単独の男性(黒戸尾根~甲斐駒~北沢峠~仙丈~北沢峠をラッセルして来た)が、「今日は全面運休ですよ」と教えてくれた。急いで、タクシーを呼び伊那市駅へ。ドライバーの話では、18:25発 新宿行きのバスに間に合いますよとアドバイス。急遽、行先を変更。18:15着、急いで空席を訪ねると、「バラバラなら有りますよ」「何でもいいから下さい!駅伝を見なければいけないの!」
 バスは、眠りに付いている私を、「あっ」と言う間に、新宿に連れ帰った。
 新宿で解散。今年の正月山行も無事に終わることができました。皆様に感謝。
 しかし、明日からの『箱根駅伝』、爺どもは、どんな格好をして、テレビの前に居るのだろうか。筋肉痛が出るのは、まだまだ先のことだろうが。きっと。

〈コースタイム〉
12月30日(雪) 富士見駅〈シャトルバス〉=スキー場=〈ゴンドラ〉=山頂駅(11:00) → 入笠山山頂(12:15) → 程久保山直下(幕)(14:30)
12月31日(晴、北風強) 幕場(07:15) → 2,129P(08:06) → 2,079P辺り(13:00) → 幕場(13:40)
1月1日(晴) 幕場(07:06) → 2,193P(08:06) → 白岩岳(09:30~40) → 2,189P(下降点)(10:00~15) → 大久保(車道)(13:25~45) → 戸台橋(14:20~30) → 仙流荘(15:30)=〈タクシー〉=伊那市駅〈高速バス〉=新宿

〈諸経費〉
仙流荘 入浴 ¥600-
タクシー 仙流荘~伊那市駅 ¥7,380-
高速バス 伊那市駅~新宿 ¥3,125-


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