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縦走・早池峰山
鈴木 章子

山行日 2010年10月10日~11日
メンバー (L)鈴木(章)、箭内、勝部、小山、澁谷、川崎、渡辺(智)、原田

 遠い、遠い昔、岩手山と姫神山は仲の良い夫婦だった。ところが、ある日、岩手山は、早池峰山に恋をしてしまい、泣き悲しむ、姫神山を追い出してしまった。
 その時、早池峰山が、どんな態度をとったかは知らないが、憎むべきは、岩手山、かな。
 そんな伝説のある美しい名前と、容姿を持つ早池峰山に、20年振りに、ほのぼのとした7人と登って来た。
 前夜、夜行バスで盛岡へ。駅前で、予約していたタクシーに乗る。と、ここまでは予定通り。タクシー会社の連絡不足か、河原ノ坊登山口(花巻)へ行ってしまった。そこは、早池峰山に登る最短コース。登山道は荒れ、20年前も痛ましかった。
「ここからは、登りたくない!」と、私。
 タクシーは、引き返し、最初の目的地、門馬からの登山口へ。車に乗ること3時間。下車する時、全員、車酔いでもどす一歩手前。料金は、契約通りの支払いで済んだ。全員で、ドライバーに深々と頭を下げ別れた。
 天気予報は雨。でも、降ってはこない様子。出発が予定より3時間遅くなってしまった。歩きだしてからしばらくは、平坦な道が続く。所々に茸が顔を出し、今宵の食卓の楽しみを増やしてくれそう。
 途中、キノコ採りの人に出会った。彼はナラ茸を見せながら、「大根おろしで食べると最高!」と、脳裏に晩酌姿を浮かべているようだった。
 五合目で、鳥居をくぐり、いよいよ登りになる。
五合目の鳥居では、みんな鐘を叩きました  六合目で、平津戸口登山道と合流。合目を上げるごとに斜度が強くなる。茸は、七合目辺りが上限、七合目から上は、スギヒラ茸以外目にしなかった。このキノコは、私の判断で採らなかった。山中は、ブナの木は見当たらなかった。アスナロの木が目に付く。山の恵みには、少し寂しい山だろうか。
 九合目、最後の水場。雨だれを一つ一つ集めるような水場だった。1人2~3L給水、終わった人から山頂を目指す。全員、給水が終わるまでには、40分もかかった。
 山頂着、15:50。霧が立ち込め、風と小雨が。これから、小田越小屋までは無理と判断。申し訳ないが、山頂小屋に、泊ることにした。全員で、小雨降る中、山頂の、早池峰神社にお参り。急いで小屋に戻る。
霧がたちこめて先が見えないけどもうすぐ山頂  と、すぐ、『料亭 カツベ』と、『居酒屋 ヤナイ』の、のれんが下がる。『料亭 カツベ』は、卵料理、『居酒屋 ヤナイ』は、乾き物が並ぶ。採った茸を、サラミで炒め、カボスをかける。最高の恵み、ワカルカナー。
 例会後の、打ち合わせ時間が短くて、往路以外は、山中で決めることにした。が、呑ンベー連中、なかなか話に乗ってこない。挙句の果て、箭内さんが
「リーダーが、決めれば。」の一言。
「ムッ!」、「酒がそんなに大切か!ヤナイサン!」
『寝ぼけ、イビキ』にどれたけ迷惑を受けてきたことか。現に、今宵も・・・。呑ンベー騒ぎの中、智世さんが、蚊の鳴く声で、「鶏頭山も面白そう。」と一言。何とか決着。呑ンベーには付き合えない私は、さっさと床に就いた。
 8人での貸切小屋。夜中に、大なり小なり事件はあったが、朝は確実に来てくれる。外は思いのほか悪天。錦の景色を楽しみにしてきたが霧雨。全員、雨具を着て、予定通り出発。視界10m。山頂~鶏頭山は地図上ではゆったりと下る展望の尾根(予定)。
 濡れた岩尾根、濡れた靴底、けっこう気を使う。晴れていれば、高山植物と展望に恵まれ楽しい道なのに。
しっかり雨具を着込んで二日目がスタート  ミニナイフリッジを過ぎると間もなく、樹林帯に入る。時折、青空も見えだすが、足元は泥沼と化す。これもなかなか大変。泥濘に足を取られるたびに、どこかで、悲鳴が聞こえる。山歩きとは、大変なんだねー、きっと。
 鶏頭山への最後の登り、さほどの傾斜もないのに大騒ぎ。大人は心底、役者だよ。足元には、秋を迎えたハヤチネウスユキソウ、迷惑だったろうね、きっと。
雨も上がり、鶏頭山への展望のいいルート  鶏頭山山頂から、早池峰山頂は、雲で見えなかったけれど、青空のもと、眼下に広がる錦絵。早池峰山の小袖の裾のようだ。美しい!目前の、円錐形の薬師岳も気にかかる。
 鶏頭山山頂直下に、岩場が見える。ニセ鶏頭山だ。
「下からは、鳥の鶏冠に見えるのだろう。山名の由来かな。」と、勝部氏。
「フムフム」と、私。
 山頂から一気に2時間半の下り。落ち葉の乗った下山道は滑りやすい。思いのほかスピードが上がらない。それでも、私と、箭内さんはキノコ採りに夢中。採れた茸は、ナラ茸とヌメリスギ茸のみ。こちらでも、ブナは、細い木を数本しか目にしなかった。
 下山口、岳パーキングで、タクシーを呼んだ。タクシーの来る間、身支度を整えていると、土地の人が色々訪ねてくる。犬や猫もやってくる。
『ネエ、私たちって、有名人!』
 タクシーに乗るなり、「何が、何でも風呂!」と、叫ぶ連中。ドライバーが連れて行ってくれた風呂は、花巻駅には少し遠いが、とても気持ちの良い温泉だった。ヌルヌルしていた。
 入浴後、荷物を預けたままのタクシーがお迎え、新花巻駅に着いた。切符を購入後、一軒だけ有る駅前の食堂に入る。ここで、これまで静かだった小山さんが輝く。
「僕が、ビールをおごりますたい。」(借金しておごってくれた)。下山祝いは、いつも、旨い!
 別々だが、一応、全員席を確保。一路、新幹線で東京へ。同席でないことに、幸せを感じた?私。2日間だったが、3~4日分楽しんだ山行になった。

〈コースタイム〉
10月10日 盛岡=門馬=登山(10:15) → 六合目(11:45) → 七合目(12:30) → 八合目(13:30) → 九合目(14:25~15:06) → 山頂小屋(15:50)
10月11日 山頂小屋(06:50) → 中岳(08:20) → 鶏頭山山頂(11:25~35) → 岳駐車場(13:45)=ひまわり温泉=新花巻駅
〈諸経費〉
タクシー:盛岡~登山口 ¥16,120
タクシー:岳~温泉 ¥15,620
タクシー:温泉~新花巻駅 ¥5,520

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