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八ヶ岳 旭岳東稜
小幡 信義

山行日 2011年4月9日~10日
メンバー (L)小幡、渡辺(守)、星野

 2月の建国記念日と土・日の3日間を利用し、旭岳東稜を計画しました。三峰5名と関西方面から来た6名のパーティーと交替でラッセルし前進したが積雪量の多さに五段ノ宮と呼ばれる岩場も見ることなく敗退となりました。帰りにカモシカに睨まれていたのか?見送っていたのか?ずーっと動かず・・・「また出直して来いよ!」と話しかけているようでもあった・・・。
 3月の春分の日と土・日を利用し再度、個人山行として計画していたが、3月11日の東北地方の大地震により日本全国自粛ムードとなり計画中止。
 4月に入り厳しさ、困難さは劣ってしまうものの、何時までも心に引っかかっていて何とか完登したい気持ちで行ってきました。
 4月8日、高尾駅発22:26、小淵沢駅ホームのログハウスで今回もお世話になる。初電の小海線で清里駅下車。

【4月9日 雨】
 朝より雨で雨具を着ての出発となる。川俣沿いの林道を2時間歩き河原に降りる。2月は堰堤辺りからワカンを付けてのラッセルであった。4月は雪も締まって歩き易いが、かわりに雪溶け水が増して河原を飛び移るのに苦労し時間が掛ってしまった。雨も次第に強くなり登山意欲をそがれる。
 赤岳沢出合いに10:30着、すでにエスパーステント1張りあり。明日は権現東稜に行くとのことである。体がかなり濡れてしまい寒いくらいだ。出合小屋内で休憩している間に、今回の予定を変更し本日は小屋泊まりとし明日4:00出発で旭岳東稜を目指す旨を2人に話す。守氏は今回も敗退かと?と考えているのかやや納得のいかない顔つきだ・・・。濡れた雨具を干し、エスパーステント3人用を小屋内に張る。テント内でゆっくり寛ぎアルコールで明日の完登の乾杯、後は就寝まで、ちびりちびりと飲みつづける。外は当分降り続くような天気だ・・・。夕方になって1パーティー入ってくる。19:00頃にはシュラフに潜りこむ。

【4月10日 晴れ】
 3:45テントを張ったまま小屋を出発する。隣のテントはまだごそごそやっているようだ。空は星が幾つかみえる。天気は回復の傾向だ。地獄谷を20分程詰めると広い二股に出るのだが懐電歩行の為全体の地形の把握が出来ず、うろうろしていると下から2つのライトが近づいて来る。権現東稜のパーティーだろう。少し地獄谷を登り過ぎたようで戻ることにする。そのうちに前に来た取り付きを思いだす。急登して30分程で尾根に上がれた。コメツガの樹林の中を2時間登ると両側がスッパリ切れたリッジに到着。前は懸垂して降りたところだ。リッジ上の雪も無く問題なく通過する。この先からは尾根が急になる。2月の時は腰上のラッセルで、11名で交替で前進するも、一向に高度を稼げなかった。関西パーティーは早々に撤退を決め下山していった。我々パーティー紺野氏も以前来て敗退した積雪量と似たようなもので、最初から抜けるのは無理と諦めモードだった。あの時の苦労が嘘のように快調に進む。
 ダケカンバの木が疎らになると上部が開けてきて、いよいよ旭岳東稜の核心部である。前回撤退した場所だ。右側は岩壁となっているので左気味の雪壁を登る。もう太陽も照りつけ雪が腐っている状態で時々ずりずり崩れる。ナイフリッジの雪稜に出ると、やっと目の前に五段ノ宮と呼ばれる岩稜が姿を現す。ここで一服し登攀準備にかかる。左側の権現東稜のバットレスが威圧感を持ってみえる。あの2人連れも果敢に挑戦していることだろう・・・。
 1段目の岩場に取り付くも、アイゼンでしっかり踏み込めない。右、左と移動して乗っ越そうとするが、どうも不安定だ。結局諦めて左へトラバースし灌木混じりの草つきを登ることにした。どの岩が2段か3段か数える余裕もなく、アックスを差し込み、またはブッシュを掴みながら、またまた木に捕まりながらの冷や汗ものでザイルを伸ばす。「あと5m」のコールでビレーポイントを探す。足場は不安定だが丁度ピンが2本打ってあったところにセットし、星野氏、守氏を待つ。岩の出っ張りから雪解け水がぽとぽと流れ落ち良いポイントとはいえなかった。2Pで何とか五段ノ宮を越したようだ。その後は右側がスッパリと切れた雪稜歩きで、ハイマツやダケカンバで支点を取りながら気持ちよく進む。少し余裕も出てきて権現東稜を仰ぐと2人のパーティーも山頂にみえる。
 最後の1Pは星野氏リードで左から巻くようにして消えていった。旭岳山頂に出たようだ。出発してから7時間30分であった。
 下降路はツルネ東稜と決めていたので15分程休憩し下山にかかる。40分程で分岐に到着。権現メンバーのトレースがしっかり見受けられる。ツルネ東稜の下りは2か所上ノ権現沢に落ちる尾根に迷い易いと注意書きがあったので、枝尾根の際には赤布テープをよく探して降りた。下りはかなり飛ばし小屋に14:25着く。テント撤収し星野氏を待つ。体調を崩したようで足取りが重たいようだ。捻挫でもしたのか?
 帰りの河原は更に雪解けが進み、来た時に飛び越えた個所も行けずじまいであった。林道に入った頃には靴の中はびしょ濡れであった。林道に入ってからも星野氏の体調は優れず、ザックを二重に守氏が持つこととなる。ギシギシ音を立てながらも、トコトコ歩いて行く。美し森からタクシーを呼び清里駅で帰京となる。今回の山行に付き合って戴いた守氏、星野氏により何とか旭岳東稜を終えることが出来たことに感謝致します

〈コースタイム〉
【4月9日】 清里(07:00) → 出合小屋(10:30)
【4月10日】 出合小屋(03:45) → 旭岳(11:30) → ツルネ東稜 → 出合小屋(14:25) → 美しの森(17:30)

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