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北奥千丈岳
天城 敞彦

山行日 2011年2月11日~14日
メンバー (L)天城、星野

 昨年の同じ時期に、別所リーダーのもと、柳平~白檜平~北奧千丈岳~国師岳~甲武信ヶ岳を目指して5人で山行を行ったが、初日の思いがけない降雨やモナカ状の深雪のラッセルに阻まれて、奧千丈岳までしかとどかず引き返した。今年は別所さんが仕事の都合で行かれないというので、私がリーダーを引き受け、甲武信までの縦走などという無茶な目標は掲げず、少なくとも奥秩父の最高峰、北奧千丈岳(2,601m)の山頂は踏んでくるという目的で山行を組んだ。
 実は昨年もラッセルを考えて、輪かんの代わりにスノーシューにしようという話はあったのだが、全員に買わせるわけにもいかなかった。しかし今年は星野君と2人になったので、思い切ってそれぞれ35,000円の大枚をはたいてスノーシューを買い込んでこの山行に備えた。

【2月11日(金)】
 前夜のうちに車で牧丘の道の駅に泊まり8時30分に柳平の林道の通行止めがあるところから歩き始める。意外にもトレースがあり、この時期にこのコースに入る人もいるのかと思ったが、しばらく行くと突然銃の発射音が響き渡り、これは鹿撃ちのものだとわかった。
 積雪は昨年よりやや多めだがスノーシューのおかげかラッセルは昨年より楽なように思える。しかしなかなかはかどらず昨年のテン場に着いたのは13時30分だった。
 もう少し先まで伸ばそうかとも考えたが、ここは水がとれるので、やや早いがここに泊まることにした。

【2月12日(土)】
 空身で北奧千丈を目指し、届かなかったらそのトレースを利用して、明日もう一度ここからアタックするというタクティクスもあり得たが、スノーシューは輪かんに比べてトレースの有無によるスピードの差が小さいようなので、奧千丈あたりまで荷を担ぎ上げ、明日そこから北奧千丈を往復することにする。
 7時発。今日も曇空。30分ほどで白檜平へ。ここから石楠花新道といわれる国師岳へ至る尾根にとりつく。昨年は空身の5人が交代で苦労してラッセルしたところだが、今年も楽ではないもののスノーシューは威力を発揮してくれてはいる。シラビソの樹皮がはがれているのが見える。このあたりも鹿がいるのだろう。
 12時に昨年の最高到達点の奧千丈岳(2,409m)に到着。昨年はここで別所さん特製のいなり寿司をいただいてから引き返した。ここから1時間ほど先へ進み、急登にかわる直前の平坦なところにテントを張る。いわば前進キャンプということになる。
 次の2,511mのピークあたりまで偵察をかねてトレースを付けにいく。ところがこれまで丁寧につけられていた赤布が突然見えなくなった。2人で地図を見てルートの確認をするが間違いはなさそうである。ともかく尾根を外さず登っていくとやがて灌木帯になり、行く手を阻まれたので左に尾根を外すと赤布が現れた。一安心してそこから引き返し、15時ころテントに戻った。星野君食担の夕食を食べ、あまり酒も飲まずに今日も早めに就寝。

【2月13日(日)】
 7時30分発。今日は晴れている。しかし樹林帯の山で、ほとんど展望はない。スノーシューで心地よく進み、最後の急登のラッセルを終えると千丈岳の山頂の一角に飛び出す。
山頂へ向かってラッセルを続ける  一挙に360度の大展望が広がり金峰山が堂々とした山容を見せている。細長い尾根をさらに5分くらい北上すると山頂があった(10時15分)。2年越し、今回も3日かけてようやくたどり着いた山頂である。一区切りついたようでほっとした。国師岳から甲武信へつづく稜線も見える。厳冬期に国師、甲武信間を縦走するには何日かかるのだろう。最低4泊は必要だろうな。別所さんが帰ってきたら行こうというのかなぁ。
 しばし山頂の幸福感を味わいテント場には12時に帰着。12時40分下山開始。14時半ころに白檜平へ。ここを通るのは昨年から数えて都合6回目になる。このまま今日中に帰る予定だったが、車に着くころは暗くなっているだろうし、温泉に入り夕食をとると帰宅は深夜になりそうなので、1日目のテント場にもう1泊することにした。このテント場も都合4泊目になる。なおこの日の私の凍傷騒動については「岩つばめ」335号の編集後記に書いたので、ここでは繰り返しません。

頂上からは金峰山などの山々が一望できました

【2月14日(月)】
 8時発。3時間かけて下り、11時に林道のゲートへ。星野君が知っていた「はやぶさの湯」と中華料理屋を経由して夕方帰宅した。
 さて、新たに購入したスノーシューだが、倒木を乗り越えるのにはやや苦労したが、今回のような緩傾斜の山では十分機能したと思う。下りが不安定という話も聞いたが転んだのは1回だけだった。慣れればもう少しうまく扱えるようになるであろう。この冬は凍傷もありほかに使えなかったが、来年はスノーシューをメインにした山行を楽しんでみたいと星野君とも話している。


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