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花の坪山
渡辺 智世

山行日 2011年4月17日
メンバー (L)川崎、森田(純)、渡辺(智)

 あれは確か昨年の12月初め、牛飼尾根を登って三頭山を目指す読図山行に向かうバスの中、車窓から飯尾の御岳神社が見えた時でした。
 「この神社の裏手からも登ることのできる坪山は、ほんの十年前のハイキングマップには名前すら載っていない知る人ぞ知る山だったのに、最近、ヒカゲツツジやイワカガミ、イワウチワの咲く山として有名になり、花の季節には麓の車道に旅行会社の仕立てた登山ツアーのバスが何台も連なるほど人気のある山になってしまったのよ」と話してくださったのは、花咲く山々に精通しているリーダーの川崎さんでした。
 そんな多くの人々を魅了してやまない花の坪山に、ぜひ私も登ってみたい。でも、行列の出来た登山道や大勢の人で溢れる山頂は苦手だなぁ・・・。
 そんなジレンマを一気に解決してくれる「時間差作戦」による山行を、何と、早速、川崎さんが計画してくださったではありませんか。

 今年は何時になく厳しい寒さが続き春の訪れが大分遅れていたので、ちゃんと、花、咲いているだろうか?という若干の心配と、いやいや、きっと待っていてくれるに違いない!という期待に胸を膨らませ、私たちは、いざ坪山を目指したのでした。
 そして、その結果は大成功でした。
 尾名手尾根を登り大寺山、小寺山を経由して坪山西尾根に取り付く遠回りのルートを敢えて使うことで、ツアー登山者が下山した後の静かな坪山で花を満喫しようという川崎リーダーの作戦は見事に功を奏し、優しく上品な黄色い花の咲き揃ったヒカゲツツジのトンネルを私たち3人だけで独占して歩き、その足元にふと目をやれば、柔らかなピンク色の花びらをヒラヒラさせたイワウチワの花たちが肩を寄せ合って咲いているという、まるで夢のように美しいパステルカラーの世界を満喫することができたのでした。
ヒカゲツツジのトンネルを独占して進む  その朝、阿寺沢入口バス停を降り尾名手尾根に取り付く手前の集落で「どこに登るの?」と声を掛けてくださった地元のお年寄りに「坪山です」と答えると、一瞬「ん?登山口を間違ってない?」と言いたげな不思議そうな顔をされ、「尾名手尾根から大寺山、小寺山を経由して坪山まで行きます」と説明すると、一転「ああ、そうかそうか!気を付けて行ってらっしゃい」と笑顔で見送っていただいたり、西原峠を過ぎ坪山西尾根へと続く登山道入口周辺が3月11日の大地震の影響なのか崩壊していた為に、どこから尾根に取り付こうかと地形図とコンパスを頼りに右往左往し、ぐずぐずザレザレの道を進む場面があったりと、バリエーションルートならではの醍醐味も体験できた、とても充実した一日となりました。
 素敵な花の坪山に案内してくださったリーダーの川崎さん、そして、道端で花を見つける度に前へ進まなくなってしまう私に付き合ってくださったお2人に感謝します。
 今回も大変お世話になり、どうもありがとうございました。

 そういえば、イワウチワから1月程遅れて咲き出すイワカガミの花は、この日、まだ蕾すらありませんでしたが、また機会を見つけ、ぜひ会いに行きたいものです。
 さて、その時は、どんな作戦を立てて行きましょうか!?

〈コースタイム〉
阿寺沢入口バス停(09:00) → 尾名手尾根取り付き(09:14) → 大寺山(11:17) → 西原峠(12:15) → 坪山(13:26) → 御岳神社前バス停(14:55)


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