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山スキー・焼岳&乗鞍岳
藤井 和義

山行日 2011年4月29日~5月1日
メンバー (L)箭内、藤井

【4月29日 晴れのち曇り】
 釜トンネルを抜けて、梓川にかかる最初の「からまつ橋」でタクシーから降りた。大正池のすぐ下流である。晴天で岳沢を包んだ穂高が青空にクッキリだ。ここから我々は登る。中堀沢と下掘沢に挟まれた尾根のルートを下から上へ眼で追いかけた。上部はしっかり雪がついている様子だ。
 橋を渡って100m付近から左手、林の中に入ると、ここもしっかり雪が残っていた。すぐに急斜面となりジグザグ登って、一汗かいたところで緩斜面になる。500m程楽しく歩いてから再び急斜面である。特に広い尾根というわけではないが、最短距離を狙って右側の中堀沢に沿うように登って行く。標高2,000m付近で立木が無くなり、なんとも嬉しい雪原が現れた。中堀沢もここまでで、岩稜が右側から迫ってくる。岩稜の基部に沿って高度を上げていく。左側下堀沢側面の2,200mあたりでシュルンドがバックリと登場する。気持ち悪いので、その上側と岩場の間の狭いところをトラバース気味に登って行く。程なく下堀沢上部の大雪渓に入り込むと、夏道を辿ってきたと思われる2パーティーを見かけた。
 この先は、上に向かって登るだけだ。見上げると、コル付近に噴煙が見えた。風は西風だが、途中一度だけ南風になったとき、硫黄臭が鼻をついた。
 コルに着いて大休止である。目の前では、噴煙が不気味な音を立てている。休止後アイゼンを履いて、西側の最高地点に向かったが、かなり大きく廻りこまなければならなそうなので、アッサリと断念した。飯も食べたいし、雲も降りてきたので、滑降開始だ!。
焼岳南方直下です  大雪渓とシュルンドを越えたところの雪原を笑いながら滑った。樹林帯に入るも、比較的疎林なので、苦労もなく出発点に戻れた。
 駐車場に戻ってから、明日の乗鞍岳の入口である三本滝へ向かった。閉じられたゲートの前にある三本滝ロッヂのテラスに天張って本日終了となった。

【4月30日 晴れのち曇りのち雨】
 8時20分にバスが来るとのことで、のんびりしていると、集まってきたスキーヤー達が目の前をゾロゾロと登っていく。「位ヶ原山荘までバスがでるのに、何で登っていくんだろう?」と二人で首をひねっていた。バス停まで行ってみると、貼り紙に「運行中止」とあった。「あーア」とボヤいたが、すぐに気を取り直して斜面を登り始めた。少し上がると、バス道が現れた。除雪された道路である為、大きな段差がついている。ここは、板を外して渡った。それから30分位緩斜面を進むと、巾が狭くなって急斜面の登場となった。登りきると、防火帯のように切り開かれた、程良い傾斜の雪原が現れた。樹林帯をうねりながら、遥かな頂きに向かって延びている。しばらく登って行くと、樹林帯の上に乗鞍の峰々が姿を現してきた。風が強いけど視界良好である。
 森林限界を過ぎたあたりから、傾斜は大分緩くなったが、突風がアゲインスト気味に吹き始めてきた。時間をかけて肩の小屋口まで辿り着いたが、ここで中止の決断を下した。
最終地点 肩の小屋口  さて、一服してから滑りだしたが、突風に背中を押されて、吹き溜まりとカリカリの縞模様を姿勢を低くして、転ばぬ様に滑った。
 樹林帯に入ってゲレンデみたいな雪原を笑顔で滑るが、最後は体力勝負になった。
 三本滝ロッヂのテラスで片付け終わった途端、激しい雷雨になった。テラスの広い屋根に守られて濡れずに済んだ。
 ほどなく、雨が上がったところで、Y氏の息がかかっているペンションに向かう。10分程で玄関前に到着したとき、また、小雨が降り出した。小走りに荷物を運ぶ。「こんにちは~」段々声を大きくするが返事がない、というより誰もいない雰囲気である。車を一段下の駐車場に置いて戻ってくると、赤っぽいセダンが玄関前に停まった。見ると中年の女性だ、「こちらの方ですか?」と聞くと、「お客さん、遅くなってすいません」と答えて、車を下の駐車場に置きに行った。勝手にロビーへ上がりこんで「女将」を待った。大きくて洒落た建築物である。うろつけば、調度品も凝っている。
 戻ってきた女将は、立派なペンションだと感心している我々に、旦那の急逝後の苦労話を元気に語ってくれた。かなりの話好きタイプとみた。今日は、客が多くないので(4組の計8人)全て自分一人でやるとのことだ。夕食はフランス?料理であった。地元の新鮮野菜のサラダが食堂の真ん中に山のように盛られ、何度もおかわりをした。極め付けは、ピッチャーになみなみと注がれたワインや日本酒類の飲み放題だ。Y氏の顔は、興奮と歓喜で説明のつかない顔になっていた。

【5月1日 小雨のち曇り】
 宿を出発して島々に近づいた頃、Y氏が「あッ、靴忘れた!」と軽い叫び。話し合った結果着払いで送って貰うこととなった。
 それから30分位経って、今度は自分の番だ、「携帯が無い!」。Y氏の携帯で呼んでみたが車のどこからも返事がない。そこで、また女将へ電話!。音を頼りに探してもらったら、なんと枕の脇に転がっていたとのこと。Y氏の靴の中に入れてもらうことで一件落着。年のせいにはしたくないけど!?
 「女将」お世話になりました!


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