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沢登り・鬼怒川黒沢赤岩沢~魚沢下降
金子 隆雄

山行日 2011年9月24日~25日
メンバー (L)金子、飯塚、深谷、斎藤(吉)

 今回の例会山行は当初の計画では2泊3日で奥只見の大白沢シロウ沢に行くことになっていたのだが国道352線が通行止めとなっていて入れなくなってしまった。代替えとして南アルプス深南部の遠山川の池口沢へ行くことに決めたが直前で台風15号による大雨でこれも無理となってしまった。紆余曲折の果て、日程を短くして1泊2日で帝釈山脈の黒沢の支流の赤岩沢へ行くことになった。

 23日の夜、早めの21:30に東川口駅に集合し車で女夫渕温泉を目指す。運転手がおしゃべりに夢中になって高速の入口を見過ごしてしまったり、宇都宮で日光方面への分岐を見落として行き過ぎてしまったりと波乱の幕開けだった。
 午前1時に女夫渕温泉の駐車場に到着。駐車場はほぼ満杯状態、運良く1台分のスペースが空いていたので停めることができた。大型車用の駐車場は1台も停まっていないので隅のほうにテントを張ってちょっと一杯やって就寝。

【9月24日(土) 晴れ】
 夜は沢なんか行きたくないというほど寒くて熟睡できなかった。7:25駐車場から林道を歩き始める。林道上は水が流れている所が多く靴はぐちゃぐちゃ、沢靴を履いてくればよかったと後悔する。1時間強で赤岩沢出合いに到着。出合いの直ぐ下流に大きな堰堤があるがこの辺は林道のはるか数メートル上の藪まで泥が被っている。台風による大雨で大増水した跡だと思われる。
 赤岩沢に入ると直ぐに堰堤があり右岸より捲いて越える。もう一つ堰堤があるのかと思っていたが二つ続いていたようでこの先には堰堤はなかった。水量は多いように思えるが溯行に支障はなさそうだ。ただ、水がものすごく冷たくてシャワークライムなんてもっての外だ。
赤岩の大滝 2段35m  しばらくは滝もなくゴーロ帯が続く。ナメ滝を二つ越えると赤岩沢に二つある大滝の内の一つ、赤岩の大滝 2段35mが現れる。下段は簡単に登れるが水量が多いので上段はシャワークライム必至だ。滝の左側の浅いルンゼ状を登る。ここも水が流れているが灌木が上まであるので容易だ。
 大滝の上からはナメとナメ滝が続く。滝はどれも登れるので楽しい。ナメは水量が多いせいか白い絨毯でも敷いたようで美しい。
 左岸から枝沢が入った1,730m付近に広くなった場所があったので今日の泊りはここにすることにした。まだ正午前であまりにも早い行動終了だがこの先に泊まれる場所は沢を抜けた樹林帯しかないのでまあこれでいいのだ。時間をかけて整地して立派な幕場ができあがった。焚火は湿った木しかないのでしばらくくすぶっていたが時間と共に盛大な焚火になってきた。明るいうちから飲み始めたが、こんなこともあろうかと酒は多目に持ってきていたので心配ない。夕方には酔っ払って早々に寝てしまった。

【9月25日(日) 晴れ】
 昨夜もかなり寒かったが駐車場で寝たときほどではなかった。今日は行動時間が長くなりそうなので手早く朝食を済ませ6:30に出発する。
 小滝を2、3越えるともう一つの大滝が現れる。50mはありそうな大滝で2段になっている。登る気はさらさらない。さて、どちらを捲くかが運命の分かれ道である。右にも左にもルンゼがあり捲くならどちらかのルンゼを登るしかないようだ。左のルンゼは一直線に続いており水もジャンジャン流れているし傾斜も強い。右のルンゼは途中で二俣になっていて同じく水は流れているが左のルンゼよりは傾斜は緩い。我々は右を選択した。冷たい水を我慢して少し登ると二俣になり左へ入る。その上は滝状になっていて直上できず左の草付きへ上がるしかないが、そこが極めて悪い。抉れていてホールドにできるのは根の浮いた灌木しかなく立っている足場は今にも崩れそうだ。ここはモキチを踏み台にして何とかショルダーでクリアした。後続はザイルを出して確保した。ルンゼに戻って少し登ると藪に突入して傾斜が緩んだ所でトラバースする。ルンゼを1本横断して笹につかまりながら下降すると滝の落ち口に降りた。少し上流に降りてくる踏跡があったのでもう少し上へ登れば楽だったのかも知れない。この高捲きに1時間近くを要した。
 この先にもう悪場はない、階段状の12m滝を快適に登ってしばらく行くと二俣になり左にルートを取る。両岸から笹が被さってきてまもなく樹林帯に出る。下降する魚沢の源頭に出るために標高2,000m辺りで黒沼田代へ向けて藪をトラバースするつもりでいたのだが登り過ぎてしまったようなのでGPSで確認するとやはり登り過ぎていた。少し戻って2,030mくらいから下り気味に藪をトラバースしていくと10分くらいの藪漕ぎで黒沼田代の北端に出た。
黒沼田代にて  黒沼田代は想像していたほど広くはなくこじんまりしていた。黒沼田代の南端から踏跡を辿ると直ぐに沢形が現れる。魚沢の源頭のようなのでこれを下る。水が流れるようになりナメを下って行くと右岸より沢が合流し3mほどの滝となるがこれが降りられず懸垂する。右岸の沢は傾斜の強いスラブ滝となっている。ここで下から登ってきた4人パーティに出会う。昨日駐車場を出るときに沢装備で準備していたパーティのようだ。
 どんどん下って行くと三俣に出る。出合いには3条に水を落とす滝がかかっていて懸垂で降りる。真ん中の沢はしょぼいが下から見て一番左の沢は見事な滝で出合っている。そこからは長いナメが続くようになる。魚沢のナメは赤岩沢のナメ以上に長く素晴らしい。時々出てくる滝はよく探せば巻き道があるのだろうが上からだとよく分からないので懸垂を多用した。
素晴らしいナメが続く  滝の下降も嫌になってきたので1,350m付近で林道が近づくので林道に上がろうと話していたがその前にゴルジュに行き当たった。ゴルジュの中には深い釜を持った滝があり、これを降りようとすれば泳ぎになるだろう。左岸にトラバースしてゴルジュを捲く踏跡が付いているのでこれを辿るが結構怖いトラバースだ。我々は途中で懸垂したがトラバースを続けて行けば歩いて降りられたようだ。
 このゴルジュより先に悪場はないようなので林道に上がるのは止めて沢通しに出合いまで下ることにした。長いナメが続いた後、20mの美しい滝となる。これは右岸を下ることができた。小滝を2、3下るとようやく黒沢に出た。結構長い下りだった。
 林道に上がって一息入れてから30分の林道歩きで駐車場に帰り着いた。
 今回下降した魚沢は赤岩沢のような大滝はないがナメが綺麗で登っても楽しい沢だと思う。下降路をどうするかが問題ではあるけれど。

〈コースタイム〉
【9月24日】 女夫渕温泉駐車場(07:25) → 赤岩沢出合(08:35~09:15) → 1,730m付近幕場(11:30)
【9月25日】 幕場出発(06:30) → 黒沼田代(09:50) → 魚沢下降開始(10:00) → 林道(15:50) → 女夫渕温泉駐車場(16:40)

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