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縦走・白山
山崎 邦子

山行日 2011年7月22日~24日
メンバー (L)山崎、高木、藤井

 久々に高山植物を愛でながらの山旅に行きたくなり、遠くてなかなか登る機会の無かった白山へ。その名を冠する花の多さでも知られる花の名山を、開花のベストシーズンを狙っての縦走計画だ。今回はせっかくなので別山にも登り、加賀禅定道を下って北側へ抜ける2泊3日のたっぷりコースを計画した。

【1日目・7月22日(金)】
快適だった南竜山荘のケビン  21日、新宿発22時の夜行高速バスで金沢へ。朝1便6:45発で登山口に向かう。当初の1日目の計画は、白山温泉からチブリ尾根を登り、別山を経て南竜ヶ馬場に泊まる予定だったが、天候は小雨混じりで山々はスッポリと雲の中。これでは展望も望めないし、夜行で来て1日目から行動8時間はきつい・・・ということで早々に計画変更。別当出合~砂防新道コースで、直接竜ヶ馬場に入ることにした。最も手軽な人気コースだけあって登山者の多さは格別だ。しばらく展望の無い樹林帯が続くが、甚之助避難小屋あたりからガスが晴れ展望が良くなってきた。避難小屋は立派で水場もある。休憩や食事をしている登山者で混雑していたのでトイレだけ済ませてさっさと退散。南竜道のトラバースに入ると青空も見え始め、斜面には濃厚なピンク色のハクサンフウロやイワオトギリ、イブキトラノオなど様々な花が咲き始めた。エコーラインの分岐あたりには白山を代表する花・クロユリも見られた。時間も早いので花を見ながらのんびり歩く。藤井さんは新調したばかりのデジカメで花の写真を撮りまくっていた。
 かなりのんびり登ったが、南竜ヶ馬場には14時前に到着。今日の泊まりは南竜山荘のケビンだ(要事前予約)。1棟12,000円で6人くらいまで泊まれるので、人数がいればかなり割安。今回は1人4,000円だが、自炊で山小屋の個室に泊まったと思えば手ごろな料金だ。一応、毛布、ふとんも付いている。今日は平日だから何とか予約できたが、7~8月の白山の花シーズンの週末は人気があり、早くから予約しないと取れないようだ。
 この日は夜行疲れもあり、飲んで食事をして早々に就寝となった。

【2日目・7月23日(土)】
 2日目は快晴。今日は行程が長いので5:50に出発する。南竜ヶ馬場から白山室堂までのルートは数本あるが、我々は一番東側の展望歩道を登ることにした。
 数十メートル登って振り向くと、昨日登れなかった別山の雄大な山容を一望。その下に竜ヶ馬場が広がっている。
展望歩道から別山を望んで  樹林帯を抜けると「アルプス展望台」。槍ヶ岳を筆頭にうっすらと北アルプスが望めた。大倉尾根と合流すると道は平坦になり、山頂の御前峰を見ながら白山室堂までの気持ちの良いお花畑コースとなる。ハクサンコザクラ、コバイケイソウ、ミヤマキンバイなど花、また花。特にクロユリの群落は見事だった。
 白山の中心・室堂には7:55着。山小屋の他、登山センターや白山神社奥宮の社殿があって大賑わい。多くの登山者はここに泊まって空身で山頂往復というパターンのようだ。
 御前峰を仰ぎながら社殿前のベンチで大休止後、山頂へ向かう。神聖な白山神社の参道だけあり、石畳が整備されたしっかりした道だ。眼下に広がる別山や室堂の景色を楽しみながら約35分で白山最高峰・御前峰に到着。
 展望はまさに360度。正面には荒々しい岩肌の剣ヶ峰、その先に大汝峰と、白山の名だたるピークが連なり、雪渓と花畑を抱いた山上湖が点在していた。
油ヶ池越し御前峰を望む  山頂からの展望を満喫し、大汝峰へ向かう。油ヶ池、紺屋ヶ池、翠ヶ池、血ノ池など池めぐりをしながらの楽しい山上散歩ルートだ。チングルマやミヤマダイコンソウなど池畔は花の宝庫。大汝峰の登りは岩場の急登で、広々とした山頂には石室と大汝神社の祠があった。かつて北麓からの登拝ルートでは白山主峰として崇められた時代もあったそうだ。
 大汝峰までは登山者が多く、白山の人気のほどが窺えたが、ここから北ルートに入ると室堂の喧騒が嘘のようにパッタリと人が少なくなった。大汝峰からは自然石「御手水鉢」まで一気に下る。窪みに溜まった水は枯れることがないとか。ここから七倉山分岐まで再び登り返し、分岐からいよいよ加賀禅定道へ。
御手水鉢と七倉山への登路  「禅定」とは、古くは山岳信仰の山の山頂部を指し、その登拝路のことを「禅定道」と言ったそうだ。加賀禅定道は数ある白山登山道の中でも平安時代に開かれた歴史のある道で、昭和61年に復元・整備された。古いだけでなく行程も長い。全長約17km、累積標高差は2,500mにも及ぶ。登山者が少ないのもなるほど納得の数値だ。それだけに静かで、白山の悠久の歴史や自然にしっぽり触れながら歩くことができる。
 しかし静かな山歩きに浸れるのは良かったが、昼を過ぎた頃から雲が出始め視界が悪くなってきた。しかも道は室堂方面とは打って変わって荒れ気味&一部不明瞭になってきた。あまり歩かれていないことがよくわかる。前半のんびりしすぎた・・・と歩を早めるが、歩行タイムはエアリアマップのタイムでギリギリ。しかもアテにしていた油池の水場が見つからない(枯れていた?)。仕方ないので雪渓から水を取ろうとしたが、今年は雪解けが早いのか雪渓もほとんど無く、やっと乏しい雪渓下の沢で水汲み。そのために一部廃道となったルートに入ってしまい、急坂を登り返すなど予定以上に時間がかかってしまった。途中からはまったくガスの中になり、登山道に覆いかぶさる草木の露で衣類はびっしょり。天候が良ければ、美しい湿原のお花畑を見たり、丸石谷の渓谷を見下ろしたりと景色の良いルートなだけに残念。虹がかかる風景を期待していた「百四丈滝」の展望台も真っ白で何も見えず、ひたすら下る。
 最後は「美女坂」の急降下。ヤセ尾根の急坂で、濡れた石がゴロゴロしていて滑りやすい。美女坂とは誰が名づけたのか・・・。美女坂を下りきり、奥長倉山を登り返して下って、やっと奥長倉避難小屋に到着した。本日の行動時間約9時間。こんなにかかるとは予想していなかったのでとても長く感じた1日だった。

【3日目・7月24日(日)】
奥長倉避難小屋  最終日。「加賀禅定道」はコースタイムがギリギリという昨日の教訓を生かして早発ちする。今日は天候が良く、小屋から出ると朝焼けの中に昨日は見えなかった雄大な山並みが広がっていた。
 昨日と同じ、細い尾根を長倉山などいくつか小ピークを登り返しながら二俣の「しかり場」へ。女人禁制のころ、登頂しようとした女人に山神が怒って数十丈の谷を作った「しかりばる伝説」が名の由来だとか。ここから檜新宮参道へ。ブナ林が続くが、鬱蒼として湿気もあり、東北や関東周辺の明るいそれとは様相が違う。途中には、その昔女性や老人がここまで登って白山を拝んだという「檜新宮」があり、鳥居と祠がひっそりと建っていた。そのすぐ下のわき道を入ると最後の水場「御仏供水」がある。せっかくだから汲みに行こうと空身で向かったが、距離にして200mほどの急降下で結構疲れた。
 最後は道幅も広くなり、ジグザグと急坂を林道まで下って長い加賀禅定道をゴール! あとは林道を白山一里野温泉まで歩き、10:00開館の温泉センター「天領」で1番風呂に入って3日間の汗を流した。
 白山一里野温泉からは交通の便が悪いので、タクシーを呼んで鶴来町へ。こんなところに"つるぎ"が!と皆で喜んでしまったが、白山神社の里宮であり加賀一ノ宮である「白山比咩神社」があるので、そちらにもきちんと無事下山の御礼参りをする。
 その後は、のんびりロコ電車の北陸鉄道で金沢へ出て、JRで和倉温泉へ。北陸の名湯で白山縦走の疲れを癒し、翌日は能登半島、金沢観光をして帰宅。登山も温泉も観光もたっぷり満喫した3泊5日の旅だった。

〈コースタイム〉
【7月22日】 金沢発(06:45)=別当出合着(09:00)【2,000円】 → 中飯場(10:05) → 甚之助避難小屋(11:50) → 南竜山荘着(13:45)
【7月23日】 南竜山荘発(05:50) → アルプス展望台(06:55) → 白山室堂(07:55~08:40) → 御前峰(09:15) → 大汝峰(10:40) → 七倉山分岐(12:00) → 油池(13:30) → 百四丈滝展望台(15:00) → 奥長倉避難小屋着(16:05)
【7月24日】 奥長倉避難小屋発(05:15) → 長倉山(06:00) → しかり場分岐(06:40) → 御仏供水(07:30~50) → 下山口(09:10) → 白山一里野温泉着(09:40)

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