トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ337号目次

沢登り・一之瀬川本流~大常木谷
小幡 信義

山行日 2011年7月16日~18日
メンバー (L)小幡、藤井

 夏休みを利用し上ノ廊下を計画しているため、泳ぎのトレーニングとして今回の一之瀬川本流から大常木谷を計画しました。昨年も遡行したが水流が強すぎて全く泳げる状態でなかった。今回はどんなものか不安はあるものの土曜の朝8:00に青梅駅で集合し、藤井さんと2人での行程となりました。
 奥多摩湖から青梅街道を巧みなハンドルさばきで塩山方面へ向かう。一之瀬川橋を少し過ぎた「おいらん淵」のカーブあたりに3~4台分の駐車スペースを借りる。そしておもむろに沢装備に取り掛かる。9:40橋の下から入渓する。早くも泳げそうな淵が現れ水流もほどほど、ザックを背負って泳いでみるも上手くいかない。先ずはザック無しでと泳ぎの真似をしてみるが、服を着て、靴を履いての泳ぎは難しいと思った。しばらく浸かっていると体も冷え切り震えが止まらなくなって日向で休憩。それを見ていた藤井さんが「こうやって泳ぐんだよ!」と見本。なるほどと思いながらも体の震えは止まらず、この先もこれでもかというほど泳ぎの連続が待っているので、練習には程遠いものであったが取りあえず先に進む。
 しばらく河原歩きが続き第1ゴルジュに突入する。幅2m程の細いゴルジュで、とうとうと水が流れている。水流はかなり強そうだ。ここは泳いでいったのか、巻いたのか忘れてしまった。また来年来て確認したい。そして第2ゴルジュ、昨年来た時と変わらず水量、水流共に厳しい状態だ!出口は泡だって渦を巻いている。引き込まれたら出てこられないだろうと考えながらしばらく様子を見るが、すんなり諦め左岸の古いフィクスロープの垂れ下がった岩場を登る。ここはロープで確保してもらう。結構つるつるの岩で油断できない。
 しばらくするとスケールの大きなナイヤガラの滝を右側から巻き気味に越え二股手前の最後のゴルジュとなる。右側をへつりながら2~3mの岩登りで通過する。13:00一之瀬川本流から大常木谷に入る。泳ぎのトレーニングで来たのだが、水流が強くほとんど練習出来なかった。上ノ廊下、源流まで本当に行けるのか不安が残る。
 大常木谷に入ってしばらくは穏やかな流れだ。右岸から40mの滝の小沢を過ぎると沢はゴルジュ状となる。8mの五間ノ滝は遠くから見るとロープを出したいところだが、釜に入り水流の下に立つと意外と簡単に登れそうだ。ホールドもしっかりして快適に越える。小さな滝を幾つか越えると大常木谷最大の25m千苦ノ滝だ。単独の釣り師が滝の周辺でウロウロしていた。左岸の踏み跡をたどり高巻く。途中のルンゼを横切る個所はフィクスロープが張られており、しっかり捕まりながら越えるが、どうもルンゼの下で単独の釣り師が弁当を広げているようだ。落石させないよう気を使う。
 アサノハ窪の小沢を左岸に、その後は淵の連続するゴルジュだ。最初に山女魚淵に出くわす。この淵は泳いだのか巻いたのか確かな記憶がない。続いての早川淵は途中まで水に浸かる。その後は丸太が岸まで伸びているので利用して丸太に這い上がろうとするがザックの重みで少々てこずる。
 4mと3mの連瀑をまとめて左岸から高巻きモミジ窪の沢手前で手頃な幕営場所が有った為本日の行動を打ち切る。
 2日目の予定は会所小屋跡までなので急ぐこともなく、釣り竿を出しながら7:00に出発する。最初に現れる不動の滝は手強そうなので早々に巻く。その後は手頃な滑滝が続く。藤井さんよりブドウ虫を半分戴く(実は出発前に、溝ノ口駅より2キロ位行ったところに上州屋があったことを思い出し、自転車に乗って餌を買いに走ったが営業していないので引き返したが、自宅2キロ手前で前輪がパンク、集合時間に遅れると思いそのままガタガタ音を立てながら走った。自宅に着いた時は汗でダラダラになった。そんな事情で餌を戴くことになってしまった)。
 早速糸を垂らす。直ぐに引きがあった。(おお!いるいる・・)私は心が躍った。しかしそれっきり食いつかなくなった。5~6回流したが駄目な為、上流へと急ぐ。糸を垂らすとまた直ぐに引きがあって、今度こそと思いきや引き上げたが水面すれすれで逃げられた。「藤井さん、居ることは居ますが釣れませんねー」と言うと、「小さい物ばかりで、餌を飲み込めないのだー」と言う。私はなるほどねえと思いながら更に上流へと急ぐ。ついに釣り上げたが大分小ぶりだ。逃がしてやりたいところだが、奥までハリを飲み込みなかなかとれず、ナイフでえぐり取る形となってしまった。水に放しても、もう動かなかった。可哀そうでもあったが私のスーパーの買い物袋に収めた。下流の藤井さんも何匹か釣り上げているようだ。更に上流へと急ぐと昨日の単独の釣り師が降りてきて「釣り竿落ちていませんでしたか?」と聞く。私たちは「気が付きませんでしたね」と言うが、諦めがつかないのか下流に探しに行ったようだ。
 結局私は6匹釣り上げた。腰にぶら下げた袋は重く、とても誇らしげに感じた。のんびり釣り三昧で遡行していたので後続の5人パーティーに追い越されていく。会所小屋跡に着いた時は、絶好のビバーク地はすでに占領されていた。我々は2人用テントなのでどこでも張れる。50m離れた河原に近い台地に張る。
 早速焚火の用意と釣り上げた魚の調理を行う。藤井さん曰く、この魚は(岩魚と思っていたが・・・)アマゴだと言う。そおなんだーと思いながらも私としては釣れればどちらでもよいのだ。
 薪に火がつくまで、もくもくと煙が立ち上る。酒を飲みながら寛いでいると上空にヘリが旋回している。去って行ったと思ったらまた来た。藤井さんと「山火事だと勘違いしてきたのかな?」等と話していると、5人パーティーのほぼ上空に接近しホバーリングを始めた。「なんだ!何だ!如何なっているのだ!」と遠くで見つめていると、張ってあったタープ、焚火、銀マット類は風圧で吹き飛ばされて叔母ちゃんが、ギャーギャー喚いていた。そんな中、隊員がロープに吊られ陸地に降りてリーダーらしき者と会話をして、また吊りあげられ、あっと言う間に引き上げて行ってしまった。如何したのか?と叔母ちゃんに聞きに行くと「救助の要請もしていないのに勝手に降りて来て、たまったものではないよ!」とかなり怒っていた。私もテント周辺の有様を見て納得していたが、少し苦笑いも出てしまった。我々も同じ場所に張っていたら、折角苦労して釣ったアマゴも灰にまみれ、食えなかったと思うと、同じ場所に張らなくてよかったとつくづく思った。
 ヘリが去ってからはまた静かな時間となり、あたりも薄暗くなりかけて少し寒くなったようだ。雨具を着こむ。酒、焚火の周りには竹に刺したアマゴ、そして空は木々の葉に覆われて星は一部しか見えないが、この時間こそが沢登りの醍醐味である。明日の行程は長いので早めの就寝となる。5人パーティーの歌声が遅くまで続いていた。夜中に小キジを打ちに外へ出たら、目の前をホタルが飛んでいた。ほのかな明かりが、消えたり点いたり、しばらくぼーっと見つめていた。
 3日目の朝は5:00に出発した。前回来た時は大常木林道を使って降りてしまったが、この先はどんなものか見てみたいと思い今回は上流をつめる。しばらくはゴーロ、ナメ、小滝の連続で単調な沢歩きだ。タエモン沢の10m滝を左に見送り少し行くと15m滝に大岩が乗った処が現れる。遡行図のガイドによると左側をシャワークライミングで越すと書いてあるが、早朝から濡れるのは抵抗があり、右側の小滝を登る。とにかく大きな岩が乗ったものだと感心。ここで一本とる。
 4mのトイ状の滝を左から巻くと後は本流に向かってどんどんつめる。傾斜もきつくなり、水流もほぼなくなる寸前で最後の水を補充する。最後のガレ場を落石に注意しながらつめると7:40奥秩父主脈縦走路に到着する。休んでいると虫が寄ってくるので早々に沢装備をかたづけ、将監小屋へ向け歩きだす。途中単独行の人と挨拶。竜喰谷を遡行し丹波まで下山するとのことだ。小屋の前の小川では犬が水浴びをしていたと藤井さんが言う。私は見過ごしてしまったが、今日も暑い一日になりそうだ。
 小屋から道幅も広くなり、車の通れる林道となる。三ノ瀬、二ノ瀬という地名の集落を通り越し、一之瀬林道をひたすら歩く。青梅街道に入ると車の量が多くなる。思っていたより早く、駐車してあったオイラン淵に12:15に到着する。後は風呂に入って、旨い蕎麦でも食って帰ろうということで3日間の泳ぎの沢は終了とする。

〈コースタイム〉
【7月16日】 オイラン淵(09:40) → 大常木出合(13:00) → モミジ窪手前(15:30)
【7月17日】 幕場(07:00) → 会所小屋跡(15:00)
【7月18日】 幕場(05:00) → 奥秩父主脈縦走路(07:40) → オイラン淵(12:15)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ337号目次