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縦走・乾徳山~黒金山
天城 敞彦

山行日 2011年9月10日~11日
メンバー (L)川崎、森田(純)、渡辺(智)、天城

 2004年11月に、先日亡くなった野口芳裕さんリーダーで乾徳山に行ったときの帰路、以前は大平牧場の牛乳などの売店だった小屋が無人小屋として開放されているのを発見した。小屋の前には草地が広がり、とても気持ちのよいところで、「いつかこの小屋に泊まって宴会でもしたいね」とメンバーで話し合ったものだった。それを川崎さんが覚えていて、例会を出してくださった。

【9月10日(土)】
 残暑厳しい土曜日の午後、塩山駅からバスで登山口の入り口まで行き1時間近く車道を歩く予定だったが、4人だし、この暑さの中アプローチを短縮するためにタクシーを利用した。4,040円というなんとも4等分しやすい料金だった。
 林道から山道になり歩きやすくはあったがとにかく暑い。林道を横切るところで最初の1本をとったとき、近くに水が流れているのを見つけて火照った身体を冷やす。ガイドブックによれば、小屋までの間に銀晶水、錦晶水という2つの水場があるはずなのだがなかなか銀晶水に行き着かない。
小屋の前の広場でお店を広げる  日帰りで乾徳山を往復してきたと思われるいくつかのパーティ-とすれちがうので水場の様子を聞いてみると、「たくさん流れていますよ」と言う人もいれば「上の水場はあまり流れていませんでした」という人もいる。「避難小屋に泊まる予定です」と言うと「それはいいですね」と言う人もいれば、「小屋は完全に倒壊していて使えませんよ」と言う人もいる。何を信じたらいいのやら。
 上の水場(錦晶水)は冷たい水がたくさん流れていたし、分岐を左にとるとやがて立派な小屋が現れた。窓ガラスが一部割れていてほこりが積もってはいたが10人くらいは泊まれる立派な小屋だった。さっきの人は何をもって倒壊と言ったのだろう。鹿の一家(数えてみたら7頭いた)が走り回りあまり人を恐れる様子もなく近くまで寄ってきてかわいらしい。
 記憶のとおり小屋の前には草地が広がり気持ちがよい。さっそく銀マットを広げて宴会を始める。各自1品ずつ持ち寄ることという指示があったので、私はカレーを持っていったが、純子さんは蛸とミョウガと海苔の酢の物、渡辺さんは生のジャガイモから作るポテトサラダ、川崎リーダーはなんと煮貝、煮マグロ、豆腐、ワカメ等の盛り合わせと、すばらしい食卓だった。女性陣と一緒だと食事が豊かだし華やかである。
 チビチビやりながら暮れなずむ山の景色と鹿を見ながらゆったりとした時間を過ごす。
 夜中に目を覚ますとカランカランという音がする。鹿がカンチュウハイの空き缶をなめているらしい。表に出るとたくさんの目が光っている。鹿だと分かっていたからいいようなものだが、そうでなければかなり不気味だっただろう。

【9月11日(日)】
 天気はよい。傾斜が増した道をひと登りで月見岩へ。ここは道満尾根との分岐になる。樹林帯に入るとやがて鎖場が現れる。鎖や梯子を使っていくつかの岩をよじ登ると、ようやく乾徳山の山頂である。金峰山、国師岳、そして今年の2月に苦労してたどった北奧千丈岳へつながる石楠花新道などが見える。

乾徳山山頂TITLE=""北面から見る乾徳山の雄姿

 山頂を過ぎると水ノタルで先ほどの小屋に至る道を左に見送る。ここから先は苔むした樹林帯になり急に奥秩父らしくなった。
 小さなピークを2つ越していく。振り返ると乾徳山が堂々としたピラミダスな雄姿を見せている。
 大ダオ分岐からの急登をひと登りすると傾斜は落ち2,231メートルの黒金山の山頂へ。ここは近くて遠い山だ。徳和からの日帰りではちょっときつく、あの避難小屋に泊まるという今回のプランは素晴らしい。
 山頂から右に折れてしばらく下ると牛首ノタル。まっすぐ行くと西沢渓谷だがわれわれは右に天科への道を下る。マップには2時間ほどの行程とあったが、2時間30分近くかかる結構長い下りだった。
 川崎さんは花に詳しく、ハナイカリという緑色の可憐な花を笹の中から見つけて教えてくれた。また私はいいかげんでエリアマップしか持ってこなかったけれど、3人ともこまめに地形図とコンパスを出して現在地を確認していた。
 下り着いた天科は1軒あった温泉旅館は廃業しており、かなり大きな集落なのにビールを買おうにも店がない。次のバスまで1時間半以上あるので民宿に行っておばさんからビンビールを売ってもらった。「どこで飲むのかね」と訊かれたので「バス停の前」と答えたらほどなく葡萄を差し入れにきてくれた。いい人だ。
 川崎さんが行きつけの塩山温泉の公衆浴場で汗を流し、やはり川崎さん行きつけの店で美味しい「ほうとう」を食べ、満足して車中の人となった。

 この夏は個人的な事情であまり山に行けなかったので、直前にエントリーしたのだが、おかげさまでずっと気になっていた黒金山にも登れたし、楽しい山行になりました。ありがとうございました。

〈コースタイム〉
【9月10日】 乾徳山登山口(13:15) → 避難小屋(15:25)
【9月11日】 小屋発(05:40) → 月見岩(06:15) → 乾徳山(07:15~30) → 黒金山(9:45~10:00) → 牛首ノタル(10:50) → 天科バス停(13:15)

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