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救助訓練・奥多摩
星野 剛
山行日 2011年6月11日~12日
メンバー (L)星野、YUKI、天内、杉本、内田、飯塚、金子、樺沢、小芝、エドワーズ、曾、三澤、森田(純)、安成、小堀、渡辺(智)、山口(敦)、内藤、小幡

 冬に「雪崩レスキュー」の訓練をした時に一つ疑問に思ったのが、「じゃあ、掘り出した後はどうすればいいの?」ということであった。長時間埋没し、低体温症を起こしている可能性がある場合、どのような処置をするかは判断が難しいようだが、早い段階で助け出せた時には「心肺蘇生法(CPR)」が有効となる。先日消防署で救命講習を受講し、最新の知識や技術を持つ専門家から指導を受けることの大事さを改めて実感していたのだが、消防署以外の場所でも講習を行うことが可能だということを知り、より多くの会員にこのスキルを身に付けてもらいたいと思い、今回の訓練内容に盛り込むこととなった。

【6月11日(土) 雨のち曇り】
 午前中は雨が降っていたため、室内で「安全登山マニュアル」の内容を読み合わせ。全会員に配布されている会員IDカードの裏側には、「道に迷った時」「事故に遭った時」どうすれば良いかということが簡潔に書かれている。作成に携わった人の話を聞くと、他にもたくさん記載したいことがあったのだが、小さな紙に収まるように内容を吟味して今の内容になったということであった。カードの内容をただ読むだけでは足りない。各人がどうしてこのような表現になっているのか考え、疑問を無くすことが必要だ。
懸垂下降の練習  午後になり雨が上がったので、近くの岩場に移動し、懸垂下降及び下降中の仮固定を練習した。 初めて体験する人もいたが、ベテランの方に指導して頂き安心して降りられるようになった。懸垂下降はある状況においては一番安全に下ることのできる手段となる。そして登山道以外の場所を歩く際にはそんな状況になることは珍しくない(と、三峰に入ってから知った)。確実な下降器のセットやセルフビレイは「脱・初心者」の大事な要素。その時に慌てないように繰り返し練習したい。
 雨が少し降ってきたため室内に移動。 今回会場に選んだ鳩ノ巣キャンプ場は、大きなバンガローのすぐ近くにちょっとした岩場があり、座学と実技をすぐ切り替えることができて便利。 紺野さんから「1/3引き上げ」のより実践的な方法を教えてもらう。岩場の途中ではロープを引くためのスペースが取れないため、セットの仕方に少し工夫が必要となる。搬送法の練習をして初日のメニューは終了、懇親会の後、明日に備えて就寝。

【6月12日(日) 曇り】
 2日目は外部講師を招き、救命講習を実施。消防署などで行われる「普通救命講習I」の内容に加えて、登山中のケガに対処するための三角巾の使い方なども練習した。救命処置の講義は、ダミー人形や練習用のAEDを使用した本格的なもの。胸骨圧迫(圧迫する位置に誤解が起きないよう、現在は敢えて「心臓マッサージ」とは言わないらしい)の位置や強さ、人工呼吸の適切な息の吹き込み量をメーターで確認することができる。
 胸骨圧迫は想像したより力が必要。押す力が弱かったり、押すテンポが遅いと、心臓がポンプの役割ができず効果が無いのだそうだ。またAEDは止まった心臓を動かすためのものではなく、心室細動(心室が不規則に小刻みに震え、全身に血液を送ることができない状態)を起こしている心臓を一旦止めるためのものである。そのため、ただ道具があればいいのではなく心肺蘇生法の技術が必須であることなど、誤解されがちな、また正しく知らなくてはいけないことを色々と教えてもらった。
胸骨圧迫のお手本  「事故発生→安全確認」のところから「胸骨圧迫~人工呼吸」のサイクルを確立し、途中で運ばれてきたAEDで除細動(電気ショック)を実施するまでを繰り返し行った。 山ではAEDはなかなか見つからないかもしれない(最近はAEDをおいてある山小屋も増えているらしい)。けれど、心肺蘇生法の技術は重要だし、山以外の場所で使う可能性もある。これもいざという時、慌てずにできるようにしたい。
 三角巾の使い方、搬送法のおさらいをして講義は終了。非常に密度の高い訓練となった。 参加者は非常に刺激を受けたようで、帰りの電車の中ではテキストで講習の内容を復習する人や、講習の内容について討論する人の姿も見られた。
 講習を受講してから、 どこにAEDが置いてあるのか気にするようになった。山の中でも時折、「ここで事故が起きたらどうすればいいんだろう」と考えながら行動するようにしている。

【追記】
 心肺蘇生法は、より効果的に行えるように最新の科学データから常に手順の更新が行われています。既に消防署で上級救命講習を受講していた参加者からも、「前に教わった方法とは変わっているな」という声が聞かれました。最近では、「ガイドライン2010」という新しい指針が出て、現在これをもとに救命講習の内容を改訂する作業が行われているとのこと。最新の情報を入手できるよう、更に覚えたスキルを維持できるよう、定期的にこのような講習に参加されることを望みます。


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