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沢登り・王滝川鈴ガ沢東股
内藤 美智子

山行日 2011年8月27日~28日
メンバー (L)高木、金子、斎藤(吉)、山崎、大田、成田(義)、森田(純)、樺沢、内藤

 前夜、東京を2台の車に分乗して出発。道の駅『みたけ』で2時頃から5時過ぎまで仮眠。朝、林道を車止めゲートがある鈴ガ沢橋まで移動。30分くらい。
 計画では中股下降だが、9名もの大人数なので、遡行に時間がかかった場合は田の原にツメ上がることを考えて車をまわしておく。高木さんと成田さんが田の原へ。この待ち時間が意外と長く二人が戻ってくるのに1時間半ほどかかった。この時にテント設営や薪集めなどしておくとよかったかも。待っている間に二人パーティーが入山して行った。
 全員がそろったところでゲートを越えて出発。30分ほどで三沢橋。ここから入渓する場合が多いようだが、ゲート手前で釣り人にあったので無用のトラブルを避けるために東股橋まで林道を行く。東股橋で入渓準備。先行パーティーは三沢橋から入渓したらしく、ちょうど通過するのが橋上から見えた。
 入渓直後はゴーロ状、少し行くとナメが始まり、小滝を越える。やがてまっすぐに落ちる大滝が見えてくる。手前から2条7m、5m、20mの三段の滝だ。先行パーティーが小さく見えていた。巻きは踏み跡に従って右岸の草付きを中段まで登る。そこからやや左に向かって泥壁を直上する。泥が濡れて滑りやすく浮き石もあったので2ピッチロープを出す。さらに草付きを左にトラバースした後、ブッシュの中を右トラバース。小尾根を越えたところでブッシュをつかみ下ると滝の落ち口よりわずかに上に出た。この滝の巻きが鈴ガ沢の核心部らしい。1時間くらいかかってしまった。大滝上で1回目の休憩。
 大滝すぐ上の4m滝は右壁を登る。ホールドはあるが、足場が外傾していてちょっと怖い。まず金子さんが登り、2人目以降はお助けひもを出してもらう。滝上にはビレイ用の残置があった。その上は右岸からきれいなナメ滝で支流が入る。この支流は水が凍るように冷たかった。
 6mトイ状滝でウォータースライダーを楽しむ写真をネットで見ていたが、今日は水量が多く飛びこんだらそのまま釜に引き込まれてしまいそうだ。また気温も低めの曇り空で積極的に水に入る気にはなれない。続く3mは左から、5mは右から小さく巻く。その上はナメが続き美しいところだ。12mくらいの直瀑は右から巻く。大きな釜を持つ5mくらいのトイ状滝は巻く人、水流近くを登る人いろいろ。
 続いて現れた不思議な釜のところで2回目の休憩。ここは水が上部からは流れ込んでいないのに下流にはどんどん流れ出している。実は底の方で上部と繋がっていて水が流れこんでいるようだ。透き通った水底に目を凝らして見るが、どこが通じているのかは見えない。元気な大田さんはここに飛び込み、泳ぐ!!!。
不思議な釜をのぞいてみる  この釜の上部はトイ状のナメが続いている。過去の記録を見るとこの廊下状のところを通って左岸から滝を小さく巻いてトイ状ナメは水線通しに行く人が多いようだが、この日は足が掬われそうなほど水勢が強いので釜のところからずっと右岸を巻いて進んだ。巻き終わると広いナメとなり、10mの斜瀑がある。右から簡単に越える。
 次は両門の滝のように二つのナメ滝が流れ込むところ。左の支流の滝は苔のじゅうたんに覆われている。本流の滝は一見難しそうに見えたので金子さんが支流の滝から巻いて行こうとしたが、苔で滑って登りにくい様子。斎藤さんが本流の滝を右から登って行き、大きな○の合図を送ってくれたので全員そちらへ。登ってみると簡単に越えることができた。その滝の上はナメとなっており、斎藤さん、大田さん、純子さんは滑り台をやってみる。傾斜がゆるいのであまり滑りは良くない。でも滑りが良いと滝の落ち口まで行っちゃいそうな場所で怖い。
10m斜瀑の前で、満面の笑顔  次はスダレ状15mの滝。階段状で登るのは容易。その上には左岸に洞窟が大きな口を開けている。洞窟横の滝は左から巻いた。ナメを少し進むとトイ状20m滝。広くて深そうな釜を持つ。両岸はスラブ。左には倒木が何本か重なっている。金子さんは枝をくぐり、橋のようにかかっている太い倒木の上を器用に渡って行った。他のメンバーは真似できないので右岸スラブを巻く。滑りそうで緊張した。この滝を越えたあたりから沢はゴーロ状となる。今までのナメは歩きやすかったが、大きめな岩のゴーロはとても登りにくい。
 遡行図によると30m大滝の手前は三俣状になっているはず。右岸からのガレは見えたが、左岸の支流は確認できないまま30m大滝が見えてきた。ここで3回目の休憩。水量は少なく一条の流れが落ちている。ガイドブックには「少し戻った左岸の草付きから壁を大きく巻き、落ち口に出る」と書いてある。高木さんは以前遡行したときには滝直下から巻いたそうだ。皆が休んでいる間に山崎さんが偵察に行ってくれて、左岸にルンゼがあり登れそうとのこと。今まで何度か姿を見ていた先行パーティーが滝手前左岸のヤブを登っていたが、下流に向かって周回して戻ってきた。不思議に思って尋ねるとヤブがひどくてルートが分からないと言う。ガイドブックのルートは登る人がいなくて踏み跡が消えてしまったのかもしれない。ルンゼのことを伝えるとそちらへ先行して行った。
 さてこの時、午後2時過ぎ。9人の大パーティーの割には順調に遡行してきたと思う。とはいえ中股を下降するのは時間的に無理そう。大滝を巻いた後は田の原へ向かうことになる。1時間くらいで抜けられるだろうか?
 大滝直下から右のルンゼを登る。非常に脆くて先行者の落石があり、注意しながら登る。岩壁基部まで登ったら右へトラバースする。ここも脆い。ずっとトラバースしたのち壁の切れ目をササヤブをこいで登って行き、最後は岩混じりの急斜面を木の根を手掛かりに登る。出たところは右岸の支流との尾根のようだった。ガイドブックには「落ち口手前の小尾根を越えて、小滝が連なる支沢を詰める」とある。そこはヤセ尾根で支流に下りるのには急すぎるのでそのまま上に登って行った。やがて尾根は広がり、傾斜の緩いササヤブになる。
 当然右の支沢に下りる場所を探すものと思っていたが、先頭グループはどんどん先に行ってしまう。こういう時は人数が多いとかなり間が広がってしまう。わたしを含めたしんがりグループは沢に下りた方がいいのでは?と戸惑っていた。ヤブの中でバラバラになってしまうのはまずい。高木さんが声をかけて集まり、現状確認してこのまま尾根を行くことになる。
 ルートは多少薄い濃いはあるがずっとササヤブで中間部がやや傾斜が強かった。ヤブの中に倒木が隠れているのが厄介だ。途中2回ほど成田さんのGPSで現在地確認をする。尾根といっても緩いぶん地形がはっきりせず、ともすれば歩きやすい方に行ってしまう。左へ行くと目指す田の原の道路を外してしまうのでなるべく右へ行くようにしなければならない。後ろから見ていると、先頭は無意識のうちにか、傾斜が緩い左へ行きがちになってしまうのがよくわかる。先頭グループは樺沢さん成田さんの60'コンビ。後ろから斎藤さんが「もっと右~」と何度も叫ぶ。そのうち業を煮やしたのか、斎藤さんが先頭に出て最後のひと踏ん張り。ヤブこぎ2時間でようやく田の原に出た。そこは駐車場から200mくらい手前の道路だった。
 高木さんと男性陣にテントや焚き火の準備をしてもらうべく、先に下山。わたしを含め女性4人は田の原で待機。おしゃべりしていれば時間は苦にならなかったけれど、休憩所がしまっていて建物に入れなかったのは誤算だった。わたしはTシャツは持っていたので着替えたけれど、それでも迎えが来るまで1時間半、雨も降ってきてとても寒かった。着替えもせずすぐに迎えに来てくれた高木さんに感謝したい。
 この日は鈴ガ沢橋まで戻り、沢近くの台地でテント泊。雨の中、タープの下で宴会。翌日は帰るだけなのでみな心おきなく盛り上がる。楽しみにしていた焚き火ができなかったのだけが残念だった。
 翌日はのんびり撤収していざ温泉へ!という所でトラブル発生。成田さんの車のタイヤがパンクしてしまった。スペアタイヤをつけて最寄りのガソリンスタンドで見てもらうが修理ができない個所ということだった。こんなアクシデントもあるので車を出してくれる人は大変だし、感謝しなければ。今回は高木さんと成田さん、ありがとうございました。その後、開田高原のやまゆり荘で温泉に入り、木曽福島でおそばを食べて帰京した。

〈コースタイム〉
【8月27日】
鈴ガ沢橋(08:30) → 東股沢橋(09:20~35) → 三段大滝上(11:00~20) → 水が流れ込まない釜(12:30~50) → 最後の大滝下(14:00~20) → 田の原(16:35)


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