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相馬岳北稜
金子 隆雄

山行日 2011年11月26日~27日
メンバー (L)紺野、大田、金子

 妙義のバリエーション中でもルートファインディングの難しさで定評があり、一筋縄ではいかない、それが相馬岳北稜である。三峰では過去に2回挑戦しているがいずれも途中で敗退している。今回3度目の挑戦をするということでメンバーに加えてもらうことになった。リーダーは過去2回ともに参加している紺野さんだ。大抵は日帰りで挑むが1泊2日の予定で計画された、それが三峰流なのかな。
 金曜深夜に国民宿舎まで入り東屋で仮眠。翌土曜日、車を国民宿舎の駐車場に置いて北稜の取付きまで歩く。車道を横川駅方面へ戻り中木ダム方面への道へ入り、橋を渡った先の道が大きく右にカーブする辺りが取付きとなる。取付き付近に群馬ナンバーの車が停まっていて登攀装備に身を固めた3人パーティが出発準備中だった。我々と同じく北稜を目指すらしいが取付きが分からないみたいだったので紺野さんが教えてあげて先行して行った。我々は20分ほど遅れて出発した。
 取付きからいきなりの急登で始まる。この急登はP1まで続く。今はもう木々も葉を落として見通しが良くなりルートファインディングも随分と楽になっているが、前回は9月だったので分かりづらかったそうだ。P1からは傾斜も緩み細い岩稜となる。P2からP4はどれがそうだか分からないまま通過する。東側は切れ落ちていて西側がやや緩いので捲く場合は主に西側を行く。P5で先行した3人に追いつく。P5とP6間は深いギャップになっているので西側から回り込んでギャップの下に降り立つ。ここは懸垂しなくてもクライムダウン可能だ。P6へは正面の薄暗いチムニーを登る。チムニーの中に入ると登りづらいのでチムニーの右側を登る。見た目よりは易しく、ホールド豊富でロープも必要ない。
 P6とP7間は先ほどより更に深いギャップとなっていてクライムダウンはできない。西側から捲いて行ってギャップの縁を少し登ってからスリングが残置された太い木の所から懸垂で降りた。例の3人組は我々より下の方で懸垂していたが、そこからだと1回では降りられそうにない。ギャップの底はかなりの急傾斜なので上からだと1回で済む。P7へはギャップの底の一番高い所まで上がって最短距離で登ることを目論む。出だしは被り気味で、岩はコンクリートに石を埋め込んだような感じだ。空身で紺野さんがロープを引いて登る。上まで登り切ってしまうとロープの流れが悪く、ザックを引き上げられないので短く途中でピッチを切る。2番手はオオマサ、最後に自分が登った。ホールドは豊富だが掴んだ石が引っ張ったら抜けはしないかと心配になる。2ピッチ目は自分がそのままトップで登る。直上は傾斜も強くホールドも少ないので右へトラバースしてブッシュ帯へ入るのが良さそうだ。取りあえず数m上の灌木まで登ってランニングビレイをとる。そこからトラバースしようと思うがザックの重さで後ろに引かれてしまい踏ん切りがつかない。やむなくザックを置いて空身で行くことにする。空身だとどうということもなく、トラバース後にブッシュの中を直上する。
 P7から先は捲く所はあるが厳しい所もなく幕場に予定していたP11へ着く。随分早く着いたが、この先に泊まれる場所があるかどうかも分からないし、せっかく担ぎ上げた水や食料それに酒を無駄にはしたくない。それに明日のために少しでも軽くしておきたいということで予定通り泊まることにする。
 今日は天気が良く眺めも良い。眼下には赤、黄、緑のまだらの中に国民宿舎が間近に見える。尾根の反対側には街並みも見える。ちょっとした里山にでも登っているような中途半端な感じで、いったいオレ達はこんな所で何やってんだという気分だ。P11の上は4~5人用テントを張ったら一杯一杯という広さしかない。酔っぱらって転落しないようにテントの周辺にロープを張り巡らしておく。
 翌日曜日も天気は上々だ。P11からは左手の斜面を20mほど懸垂してP12とのコルへ降り立つ。この先のP12への登りが本ルートの核心部となる。高さは15mほどで途中までは階段状の草付きだが、丁度中間辺りにホールドのない岩場があって厳しそうだ。紺野さんがロープを引いてトップで登り始める。出だしの草付きは特に問題はない。岩場の手前でザックを置いて空身で登る。古い残置のハーケンに腐ったようなスリングがかけてあり、これを掴んで強引に登るしかないようだ。スリングを掴んで立ち上がってもその先には枯れた草しかなくホールドは全くない。紺野さんはアイスハンマーのピックを突き刺してホールドにして何とかクリアした。後続はロープがあるから楽かと思えばそうでもなくやはり苦しい。古い残置ハーケンの隣に真新しいハーケンがもう1枚打ってあるのを見つけたが何の役にもたっていない。どうせ打つならもっと違う場所に打ってくれれば役立つのになぁと思うがしょうがない。
核心部のP12への登り  P12から少し先は切れ落ちていて左側のヤブの中を2ピッチの懸垂で降りる。その後細いリッジをしばらく行く。そろそろ仙人窟が現れるはずだがどこだろうと探しながら行くとハサミ岩に行く手を阻まれる。リッジから左手に2~3m降りると、今まで歩いていたリッジの下に広い空間が広がっていた。これが仙人窟のようだ。全体的には傾斜があって幕営は不向きだがわずかだが平らな所もある。
 ここから先は尾根も広くなり、踏み跡も明瞭で赤テープなども随所にあり問題ない。やがて富士稜と合流し、傾斜を増した尾根を登り詰めて行けば人の話し声が聞こえてきて登山者で賑わう相馬岳の山頂へ飛び出した。
相馬岳にて  下山は最短で国民宿舎へ降りられる相馬岳コースにとる。縦走路を星穴岳方面へ少し下った分岐から相馬岳コースに入る。長い鎖場の続く急なルートで結構大変な所だ。ただ、このルートからは相馬岳北稜の全貌が見渡せるので眺めは抜群だ。

 P6で別れてから姿を見なかった3人パーティがどうしたか気なっていたが、偶然彼らの記録をネットで見つけた。それによれば、我々より先を行っていたようだ。ただ、ルートファインディングに失敗したようでP11とP12のコルから下へ下りてしまい、仙人窟から相馬沢を下ったのだそうだ。

〈コースタイム〉
【11月26日】 尾根末端取付き(7:40) → P1(8:20) → P11幕場(12:45)
【11月27日】 出発(7:00) → 仙人窟(9:00) → 相馬岳(10:25) → 国民宿舎(12:00)

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