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笹山(黒河内岳)~広河内岳
山口 敦

山行日 2011年12月30日~2012年1月2日
メンバー (L)鈴木(章)、山口(敦)

【2011年12月30日】
 高尾駅でアッコさんと待ち合わせ。朝早いせいか駅のホームがとても寒く、東京でこんなに寒かったら、山は大丈夫かと不安になる。身延線の車中からは遠くに白峰三山が見える。稜線付近には雪があるが、下の方はあまりない。正月の南アルプスはこんなものなのだろうか。身延駅のバス停で諏訪から来たというご婦人と話をしたが、今年は八ヶ岳もまだ雪が少ないそうである。  13時過ぎにバスで奈良田着。雪が全くないので今日は水を上げる。準備を終えて13時30分頃出発した。尾根筋が随分と高いところに見え、最初から急登だ。2時間くらい歩き、尾根の広いところで幕を張ることにした。  アッコさんに冬山のテント生活の指導を受ける。靴紐は靴に入れない、靴は横に倒す、などなど。二人とも酒を飲まないので、食後は少しお茶を飲んだだけで19時には就寝した。

【2011年12月31日】
 寝不足だったのか、夜1回も目が覚めずに気付いたら朝4時半、起床予定時間を30分も過ぎてしまった。アッコさんも4時に起きられなかったようだった。薄明るくなる6時半に出発。今日は笹山のピークを越えて、行けるところまで行きたい。
 相変わらず急登の尾根だが、天気は素晴らしく森はきれいで、どこまでもいつまでも歩けるような、とても幸せな気分になる。右手はるか奥、北の方には真っ白な北岳が見える。ああ、なんてさわやかな朝なんだろうか。
遠くに見える北岳  標高2,700m付近から雪があらわれ、少しだけ冬山っぽくなってきた。ずっと急登が続くが出発から7時間近く経った13時20分にようやく稜線に出て笹山山頂に到着した。
 笹山ピークは広く、東に富士山、西側に塩見岳が見える。ここから見る塩見岳はまた一段と格好よかった。笹山北峰から先は樹林帯を抜けてしまうため、今日は少し早いが笹山(南峰)と笹山北峰の間の鞍部の樹林帯にテントを張ることにした。雪も豊富にあるので水の心配も要らない。この日の夜も19時には寝てしまった。

【2012年1月1日】
 幕場を出てすぐ、樹林帯を抜けて笹山北峰に到着。富士山の右側からちょうど太陽が昇るところだ。少し雲がかかっているが、初日の出だ。
富士山と初日の出  樹林帯を抜けてしまったので、風がきつくなる。誰も通っていないので踏み跡はないが、雪はほとんど積もっていないので、ほとんど夏道を歩ける。凍ったハイマツの上がとても歩きやすいことを学んだ。
 ところどころ道がわからなくなり、ハイマツや潅木の中を突破しなければならないことがあったが、その他は順調だった。しかし風が強かったせいもあり、広河内岳に着くころには二人ともすっかり疲れてしまっていた。少し深い雪の中を大門沢下降点まで下る。
広河内岳への最後の登り  大門沢下降点には昔正月にここで遭難した人を追悼する鐘が立っている。今年はほとんど雪がないが、年によっては正月でも結構な積雪があるのだと改めて思った。ここから下山を始めてしまうと、おそらく大門沢小屋までテントを張る場所がないので、今日も少し早いがこのあたりでテントを張ることにする。下降点から少し下った場所に平らな場所が見えたので、そこでテントを張る。テントを建てていると、雪が降ってきた。この山行で初めて降る雪だった。夜になって風も出てきて、雪もやまず、翌日の下山が少し心配になった。この日も19時に就寝。

【2012年1月2日】
 朝起きると、20cmぐらいの積雪で、テントの前にあるはずのトレースは完全に埋まってしまっていたため、適当に方向を見定めて下るが、潅木に阻まれてなかなか順調に下れない。ところどころ、雪に埋もれた人の歩いた足跡らしきものを見つけ、たどりながら何とか下る。いつの間にか雪もやみ、青空が見えていた。
青空と新雪  全く先が見えずに、少し疲れが出た頃、すぐ近くに人の声がした。半信半疑で、若干の藪漕ぎをして人の声のする方に出てみると、若者2人が登山道の立派な道の脇で休憩しているところに出会った。今回の山行で初めて会う登山者だ。しかも立派な登山道がすぐ脇を通っていた。ここでアイゼンを外し、大門沢の小屋をめがけてどんどん下ることにした。今まで先が見えなかったけれど、13時55分のバスに間に合いそうだ。
 大門沢小屋までは雪があったが、その先はほとんどなく、順調に下ることができた。下っている途中で単独登山者2人とすれ違った。今日の下りで4人とすれ違ったのが、この山行中で会った登山者の全てだった。正月だというのに、こんなものなのだろうか。
 13時20分、バス出発の30分前にバス停着。奈良田からのバスはちょうどこの正月から早川町営になり、下部温泉駅経由になったのに加え、運賃も下部温泉まで片道800円と大幅に値下げされた。下部温泉駅前のホテルの風呂に入り、帰途についた。

 山の大きさを感じることのできるとても素敵なコースだったのに加え、ほとんど人に会わなかったのが最高でした。こんな素敵なルートを出してくれたアッコさんに感謝します。

〈コースタイム〉
【2011年12月30日】 奈良田湖(13:30) → 標高1,400m地点【幕】(15:40)
【2011年12月31日】 幕場(6:30) → 標高2,256m地点(10:25) → 標高2,560m地点(12:30) → 笹山【黒河内岳】(13:20) → 笹山南峰と北峰の間の鞍部【幕】(13:50)
【2012年1月1日】 幕場(6:30) → 笹山北峰(7:10) → 白河内岳(9:00) → 大龍岳(10:10) → 広河内岳(12:40) → 大門沢下降点(13:25) → 大門沢下降点直下【幕】(13:40)
【2012年1月2日】 幕場(6:30) → 大門沢小屋(9:50) → 林道(12:25) → 奈良田バス停(13:20)

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