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雪崩レスキュー訓練・会津高原たかつえ周辺
和田 昌子

山行日 2012年1月28日~29日
メンバー (L)山崎/星野、三澤、別所、飯塚、斎藤(吉)、永岡、平尾、和田

 三澤さんご協力のもと会津まるみ荘周辺で行った冬山セルフレスキュー訓練に参加した。
 初日午前中は、2Fの大スクリーンを使って座学講習を行う。雪崩の発生要因や種類、地形、積雪要因のチェック方法、雪崩が起こってしまった場合の救出時間や対処など、山崎講師から図解入りテキストでわかりやすく説明して頂いた。以前はセルフレスキューと呼んでいた救助方法が、最近では、皆で力をあわせて救助することからコンパニオンレスキューと呼ばれているらしく、この呼び名に変な妄想している受講生が複数いたようだ。
 午後外へでて、まずは積層チェックの一つであるコンプレッションテストを一人ずつ行った。皆ほとんど同じ深さのところで明らかに層が変わったことを確認することができた。
コンプレッションテスト  次にビーコン操作の練習を行った。雪面に埋められたビーコン入りのザックを探すのだが、ビーコンに初めて触るという人もいて、なかなかうまく焦点を絞れない。何度か練習した後、3人チームにわかれ、リーダーを決めて模擬捜索を行うが、ビーコンばかりに気をとられてしまい、座学で聞いたように同時に色々なことに気を配ることができない。
 次に斜面を使って遭難者を複数人にした模擬捜索を行った。
複数遭難者を捜索  条件が複雑になるにつれ、適切な役割分担と柔軟な状況判断が必要なのだが、混乱してしまって一つ意識すると一つ忘れてしまう。ビーコンを持っていない遭難者の捜索も行ったが発見はほとんど不可能で、ビーコン携帯の重要性を改めて実感した。また、雪崩の流れた方向や地形を読んで探すことも重要だということも勉強した。一通りの流れを実践して、まるみ荘に戻り夕飯を食べながら、レスキューのDVDをみた。パーティのメンバーが役割に従って声をかけあいながら、冷静に捜索を行っており、模範となる映像を見て流れを復習することができ非常にためになった。
 2日目朝は、前日の復習に加え、埋没者の掘り出し方、掘り出した後の保護などを座学で勉強し、外の平地へ移動してV字掘り出し訓練を行った。掘り出した雪がたまらないように掘り出すが、時間がかかってなかなかうまくいかない。まだまだやり方に改善策がありそうだ。その後は昨日に引き続き、複数遭難者の捜索シミュレーション訓練を行った。前日の反省を踏まえながら遭難者にしたてたザックを掘り出していると、いきなりマネキンのイブちゃんが登場し、気道確保や体の保護など、より実践的な訓練になった。
イブちゃん掘り出し  その後も何度もシミュレーションを繰り返し、人数確認、保護者の安全確保、保護者へのヒアリング、警察への報告、ビーコン有無の確認とモード切り替え(保護者も含む)、二次雪崩時の対処確認、時間経過確認、遺留品確認、ビーコン距離の読み上げ、ゾンデはヒットしたら抜かない、スコップなど所持品をむやみに放置しない、二次雪崩を注意して上を見る、掘り出したら気道確保、首は動かさない、遭難者を冷やさない、安全な場所に移動する・・・などなどなど、毎回反省会を行いながらみんなで声をかけあい、最後はなんとか流れで動けるようになってきたと思う。
イブちゃんと記念撮影  個人的には、昨年、都岳連の同様の訓練に参加したが、頭では覚えていても実践となると行動できない部分がたくさんあり、定期的な訓練受講の必要性を感じた。また、一緒にいくメンバーも同じレベルの認識や体験があったほうがよりスムーズだと思った。雪山に入る会員には、次の機会の受講をお勧めします。

【雪崩レスキュー訓練計画の意図】(執筆:山崎 邦子)
 毎年、都内公園や12月の雪訓でビーコンの操作方法練習を行っていますが、ビーコン訓練だけ行うことで、雪崩対策としてビーコンを使えればそれで良いという誤認を招いているのではないか・・・との懸念がありました。
 はっきり言えば、ビーコンをつけているだけ、使えるだけでは雪崩レスキューは行えません。ビーコン、ゾンデ、スコップを使い、それらを使ったレスキュー活動の行動の約束ごとや、一連の流れ、システムを知って初めてグループでの雪崩レスキューができるのです。この3点が「雪山3種の神器」と言われる所以です。ビーコンは知っているけれど、ゾンデやスコップの必要性、使い方など知らない人は多いのではないでしょうか。
 この3点を使っての雪崩グループレスキューのシステムを知らない人がむやみにレスキュー活動を行うことは、二次遭難につながったり、捜索の邪魔になったり、むしろ捜索に加わらない方が良いとさえ言えるでしょう。
 雪山や山スキーに共に行くとき、そのパーティの仲間が、雪崩やレスキューに関する知識を共有し分かり合って、いざという時にグループレスキューができる・・・山岳会の仲間同士はそうありたいものです。
 12月の雪訓では時間がなく、ビーコン練習だけで終わってしまいます。そこで、別途、雪崩レスキュー訓練だけ行う計画を立てました。2日間しっかり時間をとることで座学も行え、「まずは雪崩に遭遇しないことが一番大事」という話もできました。
 雪崩レスキューは雪崩回避の対策をとったけれど遭遇してしまったときに初めて発動するもので、まずは「雪崩に遭わない!」ことが基本です。雪崩を回避する判断要素としては、天候、積雪・弱層チェック、地形、ルート選択、パーティの足並みなど様々なことが考えられます。これを知らず、行わずにレスキュー訓練だけ行うのも本末転倒?という気がします。
 また、今回は私が昨年12月に『北海道雪崩研究会』の講習会で学んだ『埋没者の初期評価』~“埋没者を掘り出した後、いかに傷害の少ない状態で組織レスキュー(警察や山岳救助隊)に引き渡すか”~という方法も人形を使って行いました。これは脊椎を動かさないように移動することが重要点ですが、従来のザックなどを埋めて掘り出す練習では着目できないことで、あまり講習会でも行っていない内容です。実際は手で脊椎を固定して人を動かすことはとても難しいことですが、知識として知っておいてもらえればと思います。
 今回はベテラン勢をはじめ、雪山や山スキーを活発に行っている若手の参加があり、とても頼もしい限りでした。今回、学んだ皆さんが次はリーダーとなってどんどん仲間に広げていってもらえることを願っています。

人形(イブちゃん)を使ってのログ(脊椎)固定での救出練習

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