【9月30日(金) 雨】
　韓国メンバーにとっては珍しい経験となった駐車場でのビバークの後、朝早く起きてみたら雨が降っていた。雨の中の山行経験がない参加者がいるが“若いから大丈夫だろう”と思いながら山行基点になる上高地へ移動した。上高地に到着すると雨がますます強くなってきたので、第2回を迎える交流山行が、韓国メンバーにとって楽しい思い出にならないのではないかと心配になり始めた。素敵な風景写真を見て期待の高まっていた韓国メンバーは雨の上高地を見て、ストレスレベルが上がりはじめた。気持ちがそのまま表情に出るタイプの私は気が重くなり、口数まで少なくなってしまった。翌日の宴会場所の徳沢園に到着して宴会用荷物を下ろした後、身を軽くして槍沢キャンプ場へ向けて出発! 経験が少ない韓国メンバーの顔をよく見たら、雨に濡れても意外に明るい表情。やっぱり20代か。気持ちがだんだん明るくなって話しながら登っていたら、いつのまにか目的地のキャンプサイトに到着。雨が降ったせいなのか、霧の向こうに滝が見える素敵なテント場。テントを張った後、韓国から持って来たスタミナ山ラーメンが夕方のメニュー。雨に濡れた身体を暖かくしてくれる。ニンニクと唐辛子粉がたっぷり入った辛いラーメンを皆さんおいしく召し上がってくれて嬉しかった。世代、 国境を越えて楽しい話で盛り上がった。明日の晴天を願いながらシュラフに入った。

【10月1日(土) 快晴】
　夜明けに起きたら星が見える良い天気。本当に幸運だ。好天のためか朝食後出発すると足がものすごく軽かった。やはり人間は気持ちのものか。だんだん明るくなる空を見たら昨日の雨の天気が嘘のように感じられるほどに真っ青だった。状況が180度変わった日になり昨日の心配を巡っての話が笑いながら出はじめた。頂上を見るのはむずかしいかなと予想したという飯塚さんの話、初めての海外遠征山行なのにちゃんとした景色も見られなさそうなのでがっかりしていたという韓国メンバーの話、昨日の悪い天気で暗くなったように見えた僕の表情の話等々。素敵な景色が目の前に開かれているからこそ、笑いながらできる話だった。 楽しく話しながら登っていたらいつのまにか鋭い形の槍ヶ岳の頂上が見えはじめた。頂上登山組全員が槍ヶ岳を背景にしてここで記念撮影。
　もう第2回交流山行の成功はここで決まった。槍ヶ岳山荘に到着、重い荷物を下ろして最後のピークハンティングを始めた。高所恐怖症のJieunさんを除いて8人が槍ヶ岳の頂上を踏んだ。韓国メンバー 4人の中で、僕以外は3,000m級は今回が初登頂。頂上で眺めた360度パノラマの北アルプスの絶景は、皆の忘れられない素敵な思い出になることと確信した。昨日の悪天のお蔭で、さらにドラマチックな山行になった感じもした。
　頂上での感動の後、仕事のために来られなかった正林建築山岳クラブの仲間へのお土産を槍ヶ岳山荘で買い、徳沢園での合流の時間に間に合うように早速下山を始めた。 槍沢キャンプ場に戻ったら13時30分。荷物を整理して皆が待っている徳沢園へ出発。第2回交流山行の成功を確信して身体が油断したのか急にアレルギーで鼻水が出る。手術を受けた膝にも疲れが出始めた。のんびり一人最後尾で景色を観賞しながら下山した。 徳沢園には目標にした16時頃到着。久しぶりに会う三峰会員たちの嬉しい顔。三峰山岳会、正林建築山岳クラブ参加者達の自己紹介の後、原口シェフのコース料理と楽しい対話。雨に降られながら登った疲れのせいか韓国メンバーたちは日が暗くなった後、静かにテントに帰って寝た。一人で残った僕は韓国遠征チーム代表・三峰山岳会韓国支部会友として遅い時間まで懐抱を解いた。本当に来て良かった。

【10月2日(日) 晴れ】
　昨日と同じく青い空のいい天気。朝はかなり肌寒かった。韓国メンバーも原口シェフを手伝って朝食を準備し、昨日の素晴らしいディナーコース料理に続いておいしい朝食。食事の後、参加者24人皆一緒に記念撮影。高速道路の渋滞を避けるために上高地へ移動。一昨日と違い、清い空の写真で見ていた素敵な上高地の風景だった。日本の山がこんなに素敵だと想像できなかったと言うHokyungさん。交流山行をきっかけに今後も日本の山にたびたび来るようになりそうだと言う。交流山行を企画した私としてはとてもうれしい言葉。 素敵な日本の景色と三峰山岳会の皆さんのあたたかい歓待に、韓国の参加者全員一生忘れない良い経験をした。来年、韓国での第3回交流山行が成功裏に開催されるように願った。次はソラク山で会いましょう！