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焼石岳
なりた よしまさ

山行日 2011年11月3日~5日
メンバー (L)三澤、斎藤(吉)、山崎、成田(義)

 長年東北で過ごしていながら山にはあまり行きませんでした。近年になって東北の山も登るようになり、焼石岳は5年前の初夏に初めて行ったものの、お手軽な中沼コースのピストン、しかもガスで何も見えませんでした。いつか再びと思っていたら、今回は夏油温泉~金明水避難小屋~焼石岳~銀明水~つぶ沼という縦走ルートを計画してくれました。
 駒込を21時30分に出発、下山するつぶ沼に着いたのは3時。6時起床のため直ぐ寝ました。ところが文化の日の休日、5時過ぎに地元の小学生大勢が来たためガヤガヤして起こされました。昨晩雨がパラつき、庇のあるトイレの入口前にテントを張ったので退かざるを得なかったのです。2時間ぐらいしか寝ていないのは年寄りにはきつい。予約したタクシーが早めに来たので、車をそのままつぶ沼に置いて登山口の夏油温泉に向かいました。夏油温泉に着いたのは7時30分、まだ温泉もひっそりと静かです。
 登山口は明日宿泊する元湯夏油の右手にある広場とトイレの間を入った奥の看板です。準備をして8時に出発です。斜面を100mほど行くとすぐに林道に出て、そのまま行くと天然記念物「天狗の石」入口に着きました。見物は明日に廻して右手の斜面に続く山道に入りました。登山道はいきなり急斜面になり久々の宿泊ザックが重く感じました。最近、空身でばかり登って楽をしていた罰かもしれません。
夏油温泉 ここから登り、ここに泊りました  直ぐに別の林道に出ると牛形山の分岐がありました。経塚山は林道をそのまま進みます。この分岐からの林道歩きが結構長く感じます。緩やかに登っていた林道は、途中から下り道になります。やがて沢音が大きくなり夏油川が近づいたと思っていたら林道が崩れて無くなっていました。沢を渡渉すると左手に経塚山への標柱があり林道奥の登山口に到着です。木の根に足をかけながら夏油川まで急な下り道が終わると赤い橋があります。経塚山歩道橋とガイドブックに書いてあるトラスト橋です。冬場は橋板が外されるそうです。橋を渡るとここから登山道らしくなります。まず岩場をロープで登りますが難なく行けます。岩場を過ぎると急斜面をジグザグに登って行きます。次第に大きなブナの木が現れて鬱蒼とした山の雰囲気になりました。ブナ林を抜けるとヒメコマツの尾根道に変わりました。やがて緩やかなアップダウンが続き、沢に下ります。沢を渡って行くと水場と書かれた標柱がある広場に着きました。水を補給しましたが、次の沢水の方が旨いそうです。水場を過ぎると、石がゴロゴロした登りになり、松の下をくぐるような道になりました。周囲は苔むした石が重なり間には無数の穴が開いています。夏場は自然のクーラーでしょうが今は涼しいので感じません。標識には「お坪の庭」となっていますがガイドブックには「お坪の松」となっています。以前は形のいい松があったらしいが枯れてしまったので「庭」に変更になったようです。ここは日本庭園のような地帯です。お坪の庭を過ぎると木道のある湿原が現れました。木道は斜めに傾いて歩きにくいです。湿原を過ぎると、また樹林帯に入りますが次第に潅木が低くなってきて、やがて森林限界を過ぎた東斜面でぱあっと、一気に視界が開けました。爽快です。振り返ると登ってきた尾根を見下ろせました。今までの深い森の中から解放された晴れ晴れとした気持ちです。草原の道にチラッと標柱が見えたのでもしかして山頂かと思いましたら、山頂まで0.2kmと書かれた標柱でした。あと200mなのかと思っていましたが随分長く、山頂まで15分かかりました。0.2kmはウソですね、倍の距離はあります。まあ、この手の距離はいい加減ですから。
 到着時間は、11時40分でした。夏油温泉から約4時間かかりました。経塚山は牛形山・水沢駒ヶ岳と合わせて夏油三山の一つで山頂にはお経を納める小さいお経堂がありました。山頂は強風のため居たたまれず山陰で風を避けましたが天気が良いため全方位に展望が広がります。休憩場所からは焼石岳,南本内岳、横岳、獅子ヶ鼻岳が見えました。
経塚山 手前に経塚があります  20分ほど休憩して12時に金明水に向かいました。斜面はこれまでの樹林帯とは雰囲気が変わって露岩の下りになり、サイの河原の鞍部付近まで続きます。サイの河原からは古い噴火口跡も見られました。地震で崩壊したような山肌も見えました。その後は緩いアップダウンが続く尾根歩きになります。総じて快適な道です。天竺山を巻いて金明水へと涸れ沢状の中を辿るように下っていきます。長く感じる沢歩きの先に突然金明水避難小屋が現れました。13時30分、夏油温泉から6時間半、予定通りの時間です。
 避難小屋は総2階建てコンクリート造りの出来たばかりのとてもきれいな小屋でした。我々だけなので1、2階好きなところを使いました。水場はすぐ近くで確保できるし、言う事なしの完璧さです。ここの水は物凄く美味いです。銀明水よりいいですね。

金明水避難小屋 新築されて快適な小屋になりました  翌4日、金明水を6時50分に出発。尾根に登る手前の斜面から振り返ると天竺山、そして麓には金明水の避難小屋を見下ろせます。そして金明水の遠方には山頂が特徴的に盛り上がっている経塚山も見えてきます。草原の木製の階段を10分ほど登ると尾根に出てそこからは視界を遮る木々の無い尾根の道が続きます。アップダウンは有るが気持ちの良いコースです。さらに15分で1,277mピークの牛形分岐に着きます。かつてここから牛形山まで尾根伝いに登山道があったようです。25,000地図には今でも記載されていますが、今では低潅木に被われていて全くルートが見えません。すかしてみても登山道の名残りは全く見えませんでした。廃道になってしまったのでしょうか。ルートがあれば周回コースとして、あるいは縦走コースとして歩くにはちょうどよいコースになるのに残念です。
 東焼石岳まで稜線を辿る登山道が続いています。ピークを越えながら標高を上げていきますがそれほどの標高差はありません。標高、1,470mの六沢山到着。右側に沼が見えてきます。大小合わせて4個ほど有り、水面は青く澄み切っています。稜線50mほどの高さから見下ろす沼は、広大な丘に草紅葉の黄金色、松の緑、沼の水色の混じりが調和してとても良い眺めです。ルートは草原の尾根の上を進んで展望がすこぶる良いのでゆっくり行きました。東焼石岳着。標高1,507m。山頂はなだらかな丘といった方がよいような感じです。焼石岳より40m低いが展望のいい山頂です。従ってシーズンは込み合う焼石岳より姥石平の高山植物を見ながらこちらの方を選ぶ人も結構いるようです。姥牛平までただっ広い平原で夏はハクサンイチゲの群落が見事なようです。山頂からずっと咲き続いているそうです。20分ほど下って銀明水との分岐。ここから空身で焼石岳に向かいました。
焼石岳  広い山頂からの眺めはすばらしく、今まで通過してきた山並みや近くの南本内山や遠くの岩手山、早池峰山、栗駒山など眺めながらしばらくくつろぎました。風は止み暖かく感じます。
 焼石岳の手前に横岳分岐の標識がありました。このルートは牛形山と違い25,000地図にもエアリアにも載っていません。しかし明瞭なトレースが続いていて、銀明水に降りられるようです。どうせならこっちの方から下りたい衝動にかられました。銀明水に着いたらやはりこのルートをピストンして来た若者がいました。銀明水から潅木漕ぎのようです。横岳はなだらかな稜線が長く続いているので楽しそうですがどうなっているのでしょうか、興味が湧きます。
 銀明水からまだ2時間下らなければなりません。まだまだ長いです。途中でマスタケの群生を見つけあっという間に袋一杯に。しかし宿で食べたら大きくなり過ぎて不味かったので捨てました。ブナハリタケも硬くて食べられずに捨てました。つぶ沼近くになると、東日本大震災で山が崩れ落ちて薄黄色の山肌が剥き出しになっているのが見えました。まるでグランドキャニオンのようです。
 下山後は水沢市内で食料を買い込んで宿泊する夏油温泉に向かいました。夏油温泉は、7つある露天風呂がすべて源泉で湯船の底や脇から湯が湧き出ているそうです。名前の由来はアイヌ語の「グット・オ」(崖のある場所)からと言われています。また、豪雪地帯のため夏場しか利用できないので「夏湯(げとう)」が夏油になったようです。

石灰華ドーム 写真も見た目も大した事がありません  5日、今日は帰るだけです。出発まで付近を散策しました。まずは日本最大の石灰華ドーム・天狗の石を見に行きました。徒歩15分位かかります。高さ17m、下底部の直径は25mあって湯の華がドームを伝って流れ出し、何万年もかかって付着したものだそうです。今でも成長しているそうです。昔は上部の湯船に浸ることが出来たそうですが、今は湯の量が減り汚れてしまって使用できません。引き返して洞窟蒸し風呂を見に行きました。炭鉱の入り口のような感じで、蛇の湯の滝の隣にあります。中は真っ暗でサウナのような蒸気でよく見えません。デジカメで写真を撮ってやっと全貌が分かった次第です。入浴禁止なので蒸気を浴びた形での入湯となりました。
洞窟の蒸し風呂  最後は、平泉文化遺産の見物です。駐車場は第1、第2とも満車で、少し離れた所に停めて義経堂と金色堂を見ました。参道が行列になるほど観光客が本当に多かったです。震災と世界遺産の登録で3割増えたと翌日の新聞で報じられていました。金色堂に入ったとたん「何だこれは」と目映いほどの金色の輝きにはびっくりしました。建物は三間四方に収まるような小さな御堂ですが全部が黄金色です。金色でないのは土台と屋根だけだった気がします。まさに黄金の堂。そして周りの紅葉も絵に描いたような見事なものでした。
 今回の山行は久しぶりに好天に恵まれ、(毎週々、土日は雨でした)景色の良い稜線をずっと歩くことができて大満足でした。やはり山は稜線の縦走です。

〈コースタイム〉
【11月3日】 夏油温泉(8:00) → 経塚山登山口(8:50) → 経塚山(11:40) → 金明水避難小屋(12:30)
【11月4日】 金明水避難小屋(6:05) → 東焼石岳(8:35) → 焼石岳(9:25) → 銀明水避難小屋(10:50) → つぶ沼(13:45)

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