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縦走・吊尾根にこだわって(北岳+小太郎山)
鈴木 章子

山行日 2012年7月28日~30日
メンバー (L)鈴木(章)、内藤

 南アで忘れ物をしたような気分にさせられていた小太郎山。北岳を親父に見立て、その息子とされる小太郎山。小太郎山分岐は、数回通り過ぎたが、往復3時間が長くパス。今回は、涼を求めて、冬山コースの池山吊尾根、小太郎山吊尾根の2本を計画した。参加者も地味好みの2人。

【7月28日】
 甲府駅前、9時は『暑い』以外言葉が浮かばなかった。長蛇の列、バスは4台で出発。夜叉神峠で1/3は下車していった。
 我々の登山口、鷲住山展望台では、我々のみ。身支度を整えていると、通り過ぎるバス、タクシーの乗客から熱い視線?早々に登山口へはいった。これから行く尾根は、樹林帯に包まれ、きっと涼しいと思うけれど、短時間で登れる尾根には叶わないのかな。
 鷲住山~野呂川林道迄は、約1時間。下りがメインのコース。木陰を上手く利用したコースだった。昔はこの山には鷲が住んでいたと聞く。
 野呂川林道のトンネルを4ヵ所抜けると、あるき沢橋バス停に出た。途中1ヶ所給水できる場所があった。今回のルートは、小屋以外(池山避難小屋は除く)、給水できる場所は無い。持ちあげなければいけない。
 あるき沢橋から30分程行ったところに小屋跡のゴミが山積になっているところがある。ここでコース確認が必要。トラバースのルートに入ってはいけない。
 尾根に出るまでの2時間余りの急登は重荷もあってか、樹林帯の中でも滝のように汗が流れた。夏の南アで涼を求める考えは浅はかだった。
 水分補給に一休みしていると、中年男性が1人下山してきた。彼の話では、小屋から1時間とのこと。我々も、後2時間と一応の目標が出来、少しだが気が楽になった。再び、二人でノロノロ歩き出した。
 エアリアマップでは、池山をトラバースのルートに記されているが、実際は、1/25000に記されている三角点を確認するコースだった。  三角点を掌で何度も撫でてはみたが小屋は現れてこなかった。再び、重い腰を上げ緩い下りを15分降ると草原が目に飛び込んで来た。その奥に、赤い屋根の避難小屋。救われた気分で池の中を突き進んだ。池は、草原化していてぬかることはなかった。以前は、この池の水を当てに小屋を作ったのだろうが、この尾根での給水は一切期待できなくなっている。
ようやく到着した池山避難小屋  シラビソ林の中の小屋は、頑丈に出来てはいるが、軒下が深く垂れ下がり室内は広いが暗い。無造作に置かれた布団を端に追いやり、今宵の場所を確保。夕食は、レトルトカレーとスープ。非常に体が水分を欲しがった。
 20時に床についた。遠くで鹿の声、木漏れ月光に、深山に居ることを実感させられる。ここでは、私1人は遠慮したい。自然の大きな力を感じた。

【7月29日】
 翌朝、3時半起床、5時5分出発。小屋の外にある温度計は2,000mでも14度。今日も『暑い!暑い!』の1日が始まった。
 小屋から2時間は樹林帯の中。昨日より少しは減ったが、今日も玉の汗。砂場からは樹林限界。展望も良く、幕場の後も見受けられる。気温は上昇、日差しは強い。過去の南アでの暑かった嫌な思い出がよみがえる。ボーコン沢ノ頭にある慰霊ケルンの脇を通過。八本歯の梯子を登りだす。コルには人が多く何だか登るのが嫌になる。ノロノロと誰よりも、亀よりも遅く山頂を目指した。
 コルから2時間半掛けて、山頂のベンチに『ドスン!』。遠くの山は雲の中。山頂でゆっくり休むことにした。お日様が申し訳なさそうに雲の中に居るのが嬉しい。あと45分降りれば、肩の小屋。頑張れ!頑張れ!アキチャン。
 山頂では、人の往来は激しく、荷物は全員小さいが、それでも忘れ物は多かった。
北岳でゆっくり休憩  小屋では、天幕の手続き後、『ボー』と過ごした。明日も天気は良さそう。
 暑いからと出入り口を開放しておけば、テントの中に頭まで入れ覗き込んでいくオバサン。彼女にすればそれは普通の行為だろうか。人の多い山に行くと学ぶことも多い。
 明日は最終日。悲願の小太郎山ピストン後、広河原は、12時には着きたい。夕食は16時から作りはじめることだけ決め、ゴロゴロと過ごした。

【7月30日】
 翌朝も快晴の兆し。3時半起床、4時45分出発。小太郎山分岐に荷物をデポ。富士山を背に小太郎山を目指す。朝風が心地よいが、今日も暑くなりそう。
 今回2つ目の吊尾根。登山道は良いとは言えないが迷うことはない。ところが、歩き出すと、何故か小太郎山がドンドン遠くなっていく。地図の往復3時間は嘘ではなかった。
 山頂は素晴らしいビューポイント、勿論、三角点もしっかりある。白鳳三山、甲斐駒ヶ岳、仙丈岳、遠くは、中央ア、北ア等々飽きることはない。山頂で20分間楽しみ、帰路についた。
展望が最高!念願の小太郎山  小太郎山分岐に戻る迄に9名とすれ違ったが、何方も中高年以上。この山の良さがわかるには、年月が必要なんだなと思った。
 分岐からは、一路、広河原を目指して暑さと闘いながら下った。夏休みでも有り、高校生のワンゲルが数パーティー登ってくる。全員、暑くて辛そう。頑張れ!頑張れ!
 大樺沢の雪渓が今年は大きい。最後の涼を求めて雪渓を歩く。しかし、何だか反射で暑い。心の中で、8月の南アは駄目、北アにしようと決めた。
 二股を過ぎ、30分程下った処で沢を横切る。荷物をブン投げ全身を洗った。人目なんか恐くない。強いオバサンになっていた。夏は人を大胆にさせてしまうのか?
 広河原から乗合タクシーで芦安駐車場まで行き、レストハウスで、入浴、食事を済ませた。そこでの料金は比較的安価だったし、バスも店頭に停まる。時間をつぶすにはもってこいの場所だった。
 13時頃から激しい夕立が来たが、甲府市内はその形跡すらなかった。

〈コースタイム〉
【7月28日】 甲府駅(9:00)=鷲住山展望台・登山口(10:50~11:00) → 野呂川林道(12:00) → あるき沢橋バス停・池山登山口(12:40) → 池山(16:05) → 池山避難小屋(16:20)
【7月29日】 池山避難小屋(5:05) → 城峰 → 砂払(7:05) → ボーコン沢ノ頭(8:10) → 八本歯ノコル(9:50) → 北岳山頂(11:15~12:00) → 肩ノ小屋(12:35)
【7月30日】 肩ノ小屋(4:35) → 小太郎分岐(5:05) → 小太郎山山頂(6:10) → 小太郎分岐(8:00) → 二俣(9:12) → 広河原(11:05) → バス停(11:15)=芦安駐車場=甲府駅

〈諸経費〉
【バス代】
・甲府=鷲住山:1,530+100(協力金)=1,630円
・広河原=芦安駐車場:1,100円 (乗合タクシー、バス代と同じ)
・芦安駐車場=甲府駅:1,060円
【天幕代】1人:500円 (肩ノ小屋)
【水】(自己申告制)1L:100円 (肩ノ小屋)
【風呂代】550円


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