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北アルプス・餓鬼岳(有明山~東沢岳・藪ルート)
鈴木 章子

山行日 2012年8月17日~19日
メンバー (L)鈴木(章)、和田、平尾

 やってしまいました。遂に、北アの籔漕ぎも。今回参加していただいた和田、平尾両氏の勇気に心から感謝(山口順三さん声掛けを忘れました。すみませんでした)。
 和田氏は夏休み真只中、優雅に有明荘泊。平尾氏と私は、前夜、暑い新宿からミニバスで到着。合流はしたが、スタートの条件があまりの差。大きな平尾氏がミニバスの中、小さくなっているのが気の毒でした。昨夜はほとんど眠れなかったでしょう、きっと。

【8月17日】
 和田氏の朝食タイムが終わった時間が出発となった。何と!彼女は、朝風呂も済ませている。
 有明山登山口では我々のみ。後続隊はいない。スタートから傾斜がきつい。登れば登るほどきつくなる。今夜の水、各自2L以上の持ち上げは辛い。30分ごとに休憩を入れながら登る。1,800m辺りから、登山道は蚊取り線香状になる。岩場が多く、足場も少ない、鎖を握ってグルグル。
 途中で、下山者2組、単独男性、夫婦らしき2人のみとすれ違う。いずれも若いとは言えない。東沢岳迄で今回出逢った最後の人でした。
 「ブーブー」文句を言いながら、どうにか稜線に這い上がることが出来、ここを有明山分岐と勝手に名前をつけ荷物をデポ。そこから有明山山頂に向かう。山頂は3峰あり、1峰と3峰には立派な祠、真ん中の2峰には三角点がある。1峰にはステンレスの立派な鳥居があり、傍に『雷時に避雷針になるので近づかないでください。』と書かれていた。
 二度と来ることはないと、一応3峰全てに登り、神様にほんの気持ちを置いてきた。
立派な祠で山行の無事を祈る?  ザックデポ地に戻り、これから向かう尾根をチェック。足下には薄っすらだが道が確認できる。最初のピーク2,283Pの登りは厳しかったが、後はゆったりした登りが続いた。重荷に耐えられそうな2人に見守られながら?遠くで鳴る雷の音、雨がパラパラの洗礼を受け、樹林帯の中を進む。幸い最初の鞍部に着くころには雨も上がり、谷間に大きな虹のプレゼントを置いていってくれた。
 3人で、写真を撮ったり、休憩したりして本日は2,166Pで終了。
 昨夜は、やはりよく眠れなかった平尾氏に元気がない。僅かだが、道も目で拾うことができる。笹藪は膝程度。ここ処までの感じでは、それほど難しいバリエーションルートでないなと判断、安易な気持ちでテントに潜り込んだ。
 夕食は、平尾氏の豪華な?ハンバーグ定食、しかし、和田氏には何故か不評。それでも、全員、「美味しい、美味しい」と言って食べきった。

【8月18日】
 翌日は、少し寝坊したが5時半に出発。朝日が射す樹林帯の中を、昨日と同じように踏み跡を頼りに進む。地図上では、餓鬼岳まで、昨日と同じ距離を歩けばよいと気分は昇り気味。少しずつ高く濃くなる笹藪を軽快に和田氏が先頭を行く。トラバース気味に歩いたので清水岳のピークは確認できなかったが、2,400m辺りまでは予定の範囲だった。
 笹が無くなり、ハイマツ、シャクナゲの混合藪に突入した途端にアウト。手の届きそうな所に有る東餓鬼岳が近づいてこない。3人で先頭を交代で行くが、藪に慣れていない大きな体の平尾氏は気の毒。
ハイマツの藪こぎ!進軍中  やっとの思いで、辿りついた東餓鬼岳山頂は、ミニ燕岳のようで素晴らしかった。出来ればここでテントを・・・。
 幸せは束の間、再び、藪突入。しかし、東餓鬼岳には三角点があるためか、東沢岳からピストンの人もいるようで、青テープと僅かな踏み跡が確認できる。
 でもー、なんだかんだと言いながらも、東沢岳迄も長かった。山頂らしくない尾根の延長のようなピーク東沢岳で全身ずぶ濡れ、雨具はビリビリ、ちょっとバテ気味の3名。夏山ジョイと言えるだろうか。
 雲が低く、展望も無いので急いで餓鬼岳へ向かう。やはり一般道は良いぞー。
 ケンズリに向かう最後の登りで、雨、雷共に強くなったので、途中で合流した若いお姉さんも誘って、フライを出して雨宿りをした。楽しい時間は「あッ」と過ぎ、お互い、テント場目指し、再び歩き出す。天場は6張りの狭き門。和田氏とお姉さんはちょっと焦り気味。私と平尾氏は体力限界。ここは若者?に任せた~い。
 夕立ちは我々に今回も素晴らしい展望をプレゼントしてくれた。ケンズリ尾根から、槍ヶ岳、立山連峰、鹿島槍、富士山等。1歩ずつ登る梯子、鎖場のトラバースに気を使いながらも、やはり眼は遠くを。一番気になったのが、餓鬼岳奥のデッカイ唐沢岳。私は前回行っているので今回はパス。2人には行くことを薦めた。
 テント場に着くと、逞しき和田氏が場所取を済ませていた。ロープを張り、濡れた物を干し、テントを張り終えると平尾氏到着。和田氏もビールと水を購入して戻って来た。
 お姉さんも加え4人で、ある物全てを並べて、今回の奮闘記が始まった。お姉さんは、明日、また、ケンズリを越え中房温泉に行くと言う。
 ビール6本2人で飲み切れないなんて、お疲れ様でした。明日は早いので19時には解散。満天の星の下、全員、明日の好天を願って床についた。

【8月19日】
 翌朝3時、満天の星空を確認。和田氏は平尾氏を誘い唐沢岳へ向かった。程なく、お姉さんも中房温泉目指して出発。私1人6時までぐっすり。テントを撤収後、全員の荷物を小屋まで運び、彼らの帰って来るのをひたすら待った。往復5時間とみていた私は、8時頃から山頂で待ってはいたが一向に姿が見えず焦りを感じ始めていた。小屋の前に彼らが現れたのは9時半。やはり、ヘッドランプ着用の山道は大変だったとのこと。しかし、唐沢岳からの展望の素晴らしさは語りつくせないものがあったようす。
 軽く朝食を済ませ、タクシーの予約を入れ下山開始。エアリアマップでは下り5時間と書いてあるが、ドライバーは7時間かかるとのこと。
 急で、足場が悪く、渡渉はルートが悪く実に歩き難い道を降った。途中、大学のワンゲル部の団体に2組、個人パーティに数組出会った。以前、私もこの道を苦しみながら歩いたのを思い出した。しかし、今夜のテント場、泊れるのかしら?
 最後の水場で、再度、タクシー会社に電話(ここが最後の携帯電話の通じる場所)。下山時刻を修正してもらった。2人は唐沢岳に行って来たので疲れていた。
 15時、やっと白沢登山口に到着。タクシー乗り場まで後15分。
 疲れた体を、大町の七倉館の旅館で洗い流した時、空腹感と、全行程を歩けたことの満足感で心が一杯になった。
 入浴後、近くのスーパーの休憩所で(食堂がどこも開いていなかったので)、買い込んだ食品を2人が『ガツ、ガツ』食べている様子を見て安心した。
 またまた、私の山行、嫌われたかな?不安。

無事下山!お疲れ様でした~
〈コースタイム〉
【8月17日】 有明荘(6:30) → 有明山分岐[勝手にそう呼んだ](10:30) → 有明山3峰ピストン(11:00~40) → 分岐に戻る(12:10) → 2,283P → 2,166P[幕](14:55)
【8月18日】 幕場(5:30) → 清水岳 → 東餓鬼岳(9:00~30) → 2429P → 東沢岳(11:30~12:00) → 剣ズリ(13:50) → 幕場[小屋手前](14:55)
【8月19日】 <和田・平尾氏>唐沢岳ピストン(6時間30分)
<合流後>小屋(10:20) → 大凪山(12:20) → 最後の水場(13:20~40) → 白沢登山口(15:05) → タクシー乗り場(15:15)=大町[七倉館]

〈諸経費〉
往路バス[新宿=有明荘前]:7,000円 【ミニバス(毎日アルペ号)】
タクシー代:3,880円
風呂代:500円 (七倉館)
テント代:500円/人
水:200円/リットル
ビール(350ml):600円


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