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岩登り・谷川岳一ノ倉沢南稜
渡辺 守

山行日 2012年9月1日
メンバー (L)渡辺(守)、星野

 日程短縮となったため前穂松高ルートを一ノ倉沢南稜に変更した。一ノ倉沢は昨年の中央稜に続いて2回目でありまだまだ様子がわからない。二人とも南稜は初めてで不安もある。やはり経験豊富なリーダーに連れて行ってもらうのとは大違い。このメジャーなルート、かつ天候が良好でもスムーズにはいかなかった。
 前夜にロープウエイ駐車場に泊まり5時出合、6時半ヒョングリの滝、9時テラスより登攀開始。出合まで車で入れ、安定した雪渓でアプローチできる残雪期の前回と比べてテラスまで2時間以上かかった計算だ。ヒョングリの滝への懸垂箇所までルートを迷い時間ロスし、懸垂開始までには順番待ちとともに撤退か否かの判断にも時間を要した。
 実際先行2パーティーのうち最初のパーティーは懸垂下降したものの登り返し、通過中に雪渓が崩れないという確証が持てないとの判断で撤退した。このパーティーは先鋭的で有名な山岳会の超ベテランと新人の二人組みで、超ベテランの方曰く20年以上この時期に来ているがこんなに雪渓が残っているのは初めてということだ。二番目の外人パーティーは対照的で何も恐れずどんどん行ってしまった。さて、その次の我々はどうしたものかと悩みつつ懸垂で降りたが、そこからは前のパーティーにつられる形で行ってしまった。結果としてはそれほど危険な状態ではなかったが、正しい判断かどうかは分からない。

ヒョングリの滝への懸垂雪渓の裏を通過

 テラスからは1ピッチ目は星野くんが行くが、先行パーティーが取り付きを間違えた影響でここでもロスする。その後は交代で登るが思うようにペースが上がらない。しかし何よりアプローチでの肉体面と精神面のダメージがあった。2ピッチ目以降は先行パーティーの姿は既に見えなくなったので、ルートファインディングも自分たちの力だけとなる。そんなことは当たり前なのだが、リーダーにすべてお膳立てをしてもらっていた今までとは全く訳が違う。少しでも行き詰るともっと違うルートがあるのではと考えてしまい、小さなロスがどんどん蓄積されていく。慎重を理由にいつの間にかなりスローペースになってしまった。登攀ではたいしたトラブルもなかったのに終了地点は13時。ここでも約1時間半も多くかかっていた。それでも核心の最終2ピッチは高度感と絶景を十分に楽しむことはできた。
1ピッチ目  ここからは肩の小屋まではかかっても4時間、予定よりかなり遅いが明るいうちに下山できると考えたが、結果は肩の小屋到着が19時でそのまま泊まった。何故そこまで遅くなったのか正直よくわからない。スローペースは行動時間を長くし疲労でまた遅くなるという悪循環だった。しかし、烏帽子尾根に出たあたりからは天気も怪しくなり小屋泊まりも頭に入れて歩いたので焦ることはなかった。安全第一を心掛けたのは良かった。
 小屋泊まりは想定内だったが天候悪化やトラブルが前提なのでこの結果は情けない。しかしこれが現実である。初めての岩登攀ルートであれば、好コンディションであってもコースタイムの2倍程度の余裕は必要ということだ。自分でルートファインディングする場合は同じルートでも全く別物だと改めて痛感した。今後は自分の実力に合わせたルート選定で着実なレベルアップを心掛けたい。


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