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沢登り・金木戸川小倉谷
荻原 健一

山行日 2012年8月18日~21日
メンバー (L)荻原、高木、戸田

 7年前に増水で敗退して以来、私の「いつか行ってみたい沢リスト」からなかなか消えなかったが、今回ようやく再挑戦する機会がやってきた。っていうか、私が例会で出しただけなのだが、お盆の翌週で日取りが悪かったようでなかなかメンバーが集まらない。日程調整に融通が利くベテラン高木さんを半ば強引に誘い、あともう一人と思っていたところに飛んで火に入るように期待の若手新人の戸田くんからメールが来たので、これでメンバーをFIXする。全員酉年の老?、壮、青が揃ったベストメンバーだ。

小倉谷出合 【8月18日】
 前夜の22時に新宿に集合し高木号で新穂高方面へ。上高地線の途中の“道の駅”で仮眠。翌朝安房トンネルを抜け、金木戸林道の第一ゲートまで。7年前は第二ゲートまで入れたが、数年前から第一までしか入れなくなったようだ。4時間の林道歩きを経て小倉谷出合に到着。沢装備の装着準備をしていると突然大粒の雨が降り出し、数分でスコール状態となり入渓前から全身ずぶ濡れになる。なかなか止まずこの天気で入渓するのは自殺行為なので本日はここまでとし早々にタ―プを張る。3時間くらいで雨は止んだので焚火は楽しむことが出来た。

【8月19日】
 今日は昨日の借金があるので、5時の出発とする。朝の5時から本流の徒渉でいきなりの泳ぎとなり目が覚める。その後は巨岩帯、淵、滝などが連続し飽きることなく楽しく広河原まで遡行する。広河原のゴーロが若干長くそろそろ飽きて来たころ吊り橋跡のワイヤーが出てきて、いよいよ大ゴルジュ帯の入り口だ。ここで昨日一緒に入渓し、我々と同じく出合で足止めを食らった富山大ワンゲルの若者3人が追いついてきたので先を譲る。ほどなくして15m淵とその奥にある3mCS滝の入り口に到着。先に若者組が取り付いて泳いでいるが流れが早いのか戻されてくる。2回目でようやく突破するが、泳ぎで既によれよれだったようでその上のCS滝の登攀で落ちまくっていた。若者組が抜けた後、空身で荻原がロープを引っ張って泳ぐ。なるほど若者組が戻された所はちょっと流れが速い感じだが、ちょいと頑張るとすぐに足が付いてCS滝に取り付けるのであまり難は感じない。CS滝は左を登るのだが、泳ぎでバテていなければ簡単だ。この先も高巻いたり懸垂等をしながら大ゴルジュ帯を進んでいくが、全体的に明るい感じで気分は良い。ゴルジュ出口の深い釜を持った6m滝で再び若者組に追いつく。ヘツリと滝の左のカンテ登攀で突破するのだが、カンテに取り付いていたサードの若者が上から落ちてきて緊張する。更にこのころから雨も降ってきてなんだか嫌な気分。ヘツリは長いスリングがあってこれを使うと簡単。カンテ登攀は、滝の左の水流に頭が押されて一瞬あせるが、すぐに水流左に逃げてほっと一息。後はハーケンが連打されたカンテを登るだけだが、滑りそうでちょっと厭らしい。上部がランナウトするので一本ハーケンを打つ。ここから沢床に懸垂してようやく大ゴルジュ帯を通過する。雨は引き続き降っているが、昨日ほど強くはないので予定通り二俣へ向かう。雨が止み明るくなってきたころに美しいナメ滝帯に入り、俄然モチベーションが上がってくる。そしてナメ滝帯の最後に出てくる40m大滝の迫力は圧巻で、しばし見とれてしまった。見とれ過ぎて写真を撮った際に、シュリンゲを置いてきてしまった。
ナメ滝帯奥の40m大滝  この大滝は左から大高巻きするが、ところどころ踏み跡なども残っていて最低限のアルバイトでうまく抜けられたと思う。更にいくつかの小滝を越えると両門の滝となっている二俣に到着する。早速幕場を探すが、なかなか良いところがない。さんざんうろうろして、結局、高木さんが登る途中に見たという3条6m滝の上の左岸まで戻って幕場とする。人工的に誰かが時間をかけて切り開いてくれたところで、有り難く利用させて貰う。この日は天気も不安定で時間も遅かったので焚火はしないで寝てしまった。

【8月20日】
 昨日は頑張って初日の借金を返しているので、今日はゆっくりの出発だ。二俣まで戻り両門の滝は、左俣の右岸から高巻く。踏み跡ははっきりしている。滝上に出たらすぐに右の尾根を乗っ越し右俣の沢床に降りる。ここは左岸に良い幕場がいくつもとれる感じで、時間があったら昨日はここまで来ればよかったと思った。しばらく行くとこれまた圧巻の2段40m大滝が現れる。下段は滝の右側を登るのだが、滑りそうなので念のためロープを出す。案の定、上部が一か所厭らしかったのでハーケンを打つが良いリスがなく、あまり効いてないようだった。上段は右を高巻くのだが、はっきりした踏み跡があり簡単に越えられた。大滝はもうお腹いっぱいなのだが、ほどなく最後の大滝30mが現れる。
30m大滝  これは左から高巻く。落ち口左岸は数人が昼寝出来るほどの一枚岩があり空間が大きくとても気持ちの良いところだ。奥の二俣を通過し、小滝群で一気に標高を上げると周りは岩とハイマツに囲まれ3,000m級の山の稜線風景となる。最低鞍部を目指し、思ったより安定した岩が詰まったガレ場を這い上がり予定通り2,770mで登山道と合流する。あとは一般道を笠ヶ岳経由笠ヶ岳山荘に下り、宴会に突入する。小屋の炊事場で同席したW大の女子学生と仲良くなる為に?本日の食当戸田くんが作ったお好み焼きがバカ受けで大いに盛り上がった。

【8月21日】
 本日は登山道で新穂高に下山するのみ。4日間で最も好天となった気まぐれお天気を恨めしく思いつつ、暑い暑い笠新道をてくてく歩き、本山行を終了した。

【感想】
 小倉谷は評判通りの素晴らしい沢だった。ゴルジュ、ナメ、30~40m級の複数の大滝、源流部の連瀑帯など渓谷美の素晴らしさが絶妙に配置されていて、全く飽きることがなかった。沢が盛んな当会においてもっと登られてよい沢だと思いますので、まだ行ったことのない方は是非一度挑戦してみて下さい。

〈コースタイム〉
【8月18日】 金木戸林道第一ゲート(7:20) → 小倉谷出合(11:20)
【8月19日】 幕場(5:00) → 二俣(16:00) → 二俣より戻った3条6m滝上の左岸(17:00)
【8月20日】 幕場(6:50) → 稜線(14:30) → 笠ヶ岳山荘(15:30)
【8月21日】 幕場(6:30) → 新穂高温泉(13:00)

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