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沢登り・甲斐駒ヶ岳 黄蓮谷右俣
戸田 匡法

山行日 2012年9月22日~24日
メンバー (L)荻原、渡辺(守)、戸田

 尾白川林道を通る車のクラクションで目が覚めた。起床時間よりも少し早かったがいそいそと出発準備をし、荻原さん率いる我々も出発。花束などを持った追悼山行の先行パーティーもいたが、すぐに姿が見えなくなった。錦滝などを横目に、黙々と林道を歩き、トンネルを抜け、標高1,399mの林道の終点に着いた。しっかりとしたフィックスロープを伝って沢へ降りると、綺麗な流れが見えた。釣り人がいたので話をすると、黄蓮谷にはイワナがいないから鞍掛沢の方へ向かうそうだ。我々も遡行を開始すると、すぐに綺麗な花崗岩のナメが始まった。深緑色の川色だが、川底は藻も少なく綺麗であった。確かにイワナがいそうな雰囲気はなかった。しばらく遡行すると噴水滝が見えてきた。25000分の1の地図と照らし合わせると「もうこんなに来ちゃった??」と皆で顔を見合わせた。では、すぐに本谷出合に着くだろうと思ったが、なかなか着かなかった。どうも25000分の1の地図の噴水滝の位置が間違っていて、随分上流に描かれているようだ。
噴水滝 水量が少なく、噴水も小さい  のんびりとナメを楽しみつつ登っていった。渡辺さんがあくびを連発していて眠そうだ。もうそろそろ五丈滝というころ、イワナが走るのが目に入った。「ここにもいるんだ・・・」と感心していると、荻原さんから「せっかく道具持って来ているなら釣りしてみるか」と言われ、お言葉に甘えた。岩陰に丁寧に餌を振り込むと小さなイワナが上がってきた。小さいながらも、そこにイワナがいたこと、釣れ上がってきたことに感動しつつ、リリース。その後、釣れたもう1匹をキープした。13:30には五丈滝の対岸のビバークポイントへ到着。広々としたところへテントを張り、薪を集めて焚き火を開始。お酒も進み、焚き火の周りでうたた寝をした。夕飯は渡辺さんのキノコの入ったユッケジャンスープ。イワナも塩焼きにして、小さいながらも野性味溢れる味を堪能した。日が暮れてすぐに就寝。
 2日目。寝ている間に激しい雨音を聞いていた。5時に起床するが本降りの雨。「とりあえず様子を見よう」ということで二度寝。雨だけど二度寝をして幸せな気分。少し雨が弱まったところで起床し、暗い空の下9:40に出発した。そのまま雨は降り続き、遡行中はスラブがとても滑る。通常であれば直登できそうな滝だが濡れていてヌメヌメするので、やむを得ず高巻きを繰り返した。岩がとても滑ったので、ロープを出しつつ丁寧に登っていった。時には寒さに声を上げながらシャワークライミングもした。日が射さないので濡れるととても寒く、歯が噛み合わない時もあり10月の沢であることを痛感しつつ服を重ね着した。奥千丈の滝が近づいてきた頃、山頂まで抜けてしまうか、ビバークするか迷いながら登って行った。大きな石の下などビバークできそうな場所もあったが、奥千丈の滝直下で、渡辺さんが「あの場所どう??」と平らな絶好の場所を見つけた。若干、平らなところにも水が流れているので土木工事を行い水の流れを変え、試行錯誤の末、テント設営。まさにテント1張り分であった。テントの下にすごい大きな岩があるのが気になったが・・・。寒いのでお酒を飲みながらご飯を作った。渡辺さんが焚き火をしようと火をつけるが、薪が濡れていて着火剤を2個使うも火が付かず、焚き火のない夜となった。しかしいつの間にか雨は上がり、八ヶ岳の稜線が見える最高のロケーション。夕暮れには虹も出て、夜は星空と夜景がとても綺麗だった。

テントの背後には奥千丈の滝稜線近くは色づき始めていた

 飲みもそこそこにして就寝。テントの中から「特等席とっておいたから」という声に意気揚々と入ると、大きな石をまたがる寝床(笑)。足が伸ばせず丸まって寝るが、落ち着ける体勢を見つけ朝を迎えた。
 3日目。テントから出ると晴天のすがすがしい秋晴れとなっていた。八ヶ岳の稜線を背後に奥千丈の滝を越え、細くなった沢沿いにしばらく登ると、少し色づき始めた草木となった。素晴らしい青空の下、ハイマツ帯を藪こぎし、登山道へ出た。
 下山の準備をしてから山頂へ。山頂からの360度の景色を楽しんだ後に、黙々と下山。絶好の天気の中、無事登山口へ。登山口に着く1時間前にタクシーに電話を入れておいたところ、丁度タクシーが出迎えてくれた。尾白川林道の終点まで行ってもらい車を拾った。尾白の湯へ入り、高速道路の渋滞もなく都内へ到着し解散した。
 今回の山行は冬の下見、という話もあったが、私の力量だとまだまだ先かな。いつか挑戦する日がくるのでしょうか。

〈コースタイム〉
【9月22日】 日向山登山口(6:40) → 遡行開始(9:00) → 黄蓮谷出合(11:30) → 五丈滝の対岸(13:30)
【9月23日】 出発(9:40) → 奥千丈の滝(16:00)
【9月24日】 出発(6:15) → 甲斐駒ヶ岳山頂(9:00) → 竹宇神社登山口(6:30) → タクシーにて日向山登山口(17:00)

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