トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ341号目次

鹿島槍ヶ岳赤岩尾根
小幡 信義

山行日 2012年12月29日~2013年1月1日
メンバー (L)小幡、飯塚、箭内

【12月28日】
 新宿高速バスターミナルを23:10発、途中運転手の仮眠時間等で信濃大町に6:00着、駅周辺は雪景色で、昨年来た時より積雪量が多いようだ。

【12月29日 曇り一時晴れ】
 駅舎に入ると登山客は誰もいなかった。とりあえず計画書を提出する。しばらくして、今年は赤岩尾根、誰も入ってないですね、とか今年は雪が多いからラッセルは楽しめるとか?・・・その他いろいろと話しかけてくる。私も今回3回目で、おおよその地形は心得ているつもりであるので、空返事で「うんうん」「そうですか?」と頷いていた。今年も我々3名のみが赤岩尾根に取り付くのか・・・。出発前に大町の天気予報を調べてみたが30日は曇り一時雨、それ以降は4日まで曇り雪、本日のみ一時晴れであった。ひょっとしたら今回も途中で敗退になるかもと考えながら出発準備に取り掛かる。
 大町駅をタクシーで大谷原手前まで、その先は除雪されてなく膝上まで積もっているようだ。タクシーから降りて「さあ出発だ!」とザックを背負い何気なく遠くの駐車場を見ると、今まさに車から6人の登山者が降り立ったところであった。我々3人だけでなかったようだ。赤岩尾根に入ってくれと願いながら林道をつぼ足で進む。
 大谷原を過ぎ、林道で休憩していると6人パーティーが追い越して行く。飯塚さんが声を掛け、川崎山岳会と分かる。若い者が3名いたか? ラッセルを交替で行けば山頂を踏めるかもしれない。少し希望が出てきた。しかし、その後は一度も追いつくことなく、かなり速いペースで行ってしまったようだ。我々はラッセルの後をゆっくり進む。一時太陽が出て、稜線を一望出来たが、それっきりで、直ぐにガスに隠れてしまった。林道では3カ所でデブリの跡があり先行パーティーのトレースは埋まっていた。雪がかなり多いので雪崩には要注意だ。・・・!
 両股出合いで川崎パーティーの6名が夏ルートで登っているところであった。我々は尾根末端から取り付く。北股本谷も完全に埋まり靴を濡らすこともなく通過する。
 しかし深い雪をピッケルで掻き出し、膝で固め、ワカンで階段を作ろうとするが、新雪の下がザラメ雪になっているようで、ズリズリ滑って、なかなか高度を稼げなかった。ある程度進んだらザックを回収しにいく。上を見ると飯塚さんの様子がおかしく、ペースが全く上がっていない。箭内さんはザックを背負って一歩一歩進んでいる様だ。飯塚さんの脇を通りどうしたのか聞いてみると、風邪をひいて足が重く前に出ないとのことだ。とにかくラッセルでトレースを付け、また戻ってくると言い残し先へ進む。
 谷を挟んで隣の尾根からは別のパーティー7人が登ってきている。川崎パーティーのトレースを追っているので、我々より早く抜けて行ってしまった。
 箭内さんと2人で適当な幕場を見つけ整地し飯塚さんを待つが、なかなか登ってこない。様子を見に行ってみると、ぽつねんと座りこみ、ピーピー笛を吹いていた。もうこれ以上動けないとのことで、箭内さんを呼びに行き、本日は1,550m地点で幕営とする。この先心配であったが、テントの中でゆっくり暖まり一段落すると元気が出てきたようだ。

【12月30日 小雨後みぞれ後雪】
 幕場を7:30出発、朝より暖かく小雨もぱらついている。雪になってくれと願いながら昨日のテント予定地までは、すんなり進む。その後は30mくらいのラッセルですみ、2パーティー13人のトレースに合流、アイゼンに履き換え進む。
 天候は、みぞれ混じりの湿った雪で衣服を濡らしたが、樹林帯の中は風もなく寒さの心配はなさそうだ。出発してから2時間くらいったところに川崎パーティーのテント跡があり、更に1時間くらい登ったところにエスパーステント2張りを見つける。7人パーティーの物だろう。随分昨日は頑張ったものだと感心する。しかし、ちょっと気にかかった。尾根を外れ谷状の下に張ってあるので雪崩は大丈夫かと思った。昨日は遅くまで歩いただろうから暗くなり周辺の状況を把握できなかったのか?
 高千穂平に14:00着、2日目の幕場予定地であったが時間的に早いため先に進む。晴れていれば前方に鹿島槍を望めるのだが今日はガスの中だ。その後ペースは落ちたもののトレースを頼りに2,300m地点まで進めた。平坦な場所であるが、谷からの風をまともに受けるだろう。3日目の幕営予定地であった。本日はここまでとし、整地していると上の方から声がする。7人パーティーか?  30分くらいして我々の所にやってきて少し雑談。赤岩の頭で時間切れで引き返してきたとのこと。今日泊まって明日は下山するとのことであった。ラッセルのお礼をし、その場で別れる。全員スノーシューを履いていた。
 しばらくすると入れ替わりに5人パーティーが下から登って来た。何と下から1日で登って来てしまったようだ。初日のラッセルで苦労させられたことを思うと複雑な気持ちだ・・・。「後1時間くらいで冷池山荘まで行けるから行きませんか?」、と誘われたが、我々は明日ピストンと決めテント設営に精を出す。

【12月31日 停滞】
 テントから外を覗くと吹雪だ。時々、突風も吹く。稜線はかなり強い風であろうと判断し本日は停滞と決める。朝飯を済ませ、再びシュラフに潜りこむが、昨日からの湿った雪でシュラフは濡れ放題。テント内もかなりの水が溜まってきているので雑巾に吸い込ませ外に捨てる。特にやることもなく長い1日であった。雪は止むことなく1日中降り続いた。

【1月1日 小雪】
 昨日の天気予報によると、午前中は雪、午後から晴れ間もあるとのことで、本日は出発準備にかかる。7:30外に出るとトレースは全て消えていた。1日停滞している間に60cmくらい積もったようだ。胸ぐらいのラッセルだ。1時間、もがきにもがき続けたが全然進まない。我々3人の力ではとても無理な気がする。最悪の場合、閉じ込められて下山できないかもれないと不安がよぎる。
 今回は予想外の積雪量だ。無難な道をとることにしテント撤収にかかる。こんな心配をしていると上の方から声が聞こえ、登山者が繋がるように降りてくるではないか。あっという間に我々のテントに近づき話を聞く。川崎パーティー6人と、5人パーティーであった。昨日は吹雪の中、頂上に行ってきたようで、皆誇らしげな顔だ。女性の頬が黒ずんでいたが凍傷にやられたのだろう。
 結局、我々は下山も川崎6人パーティーと5人パーティーの後を追う形になり、ラッセルすることなくその日のうちに大谷原に降りることができ来た。今回も鹿島槍山頂を踏めず敗退となってしまった。
 最後に、私の考えるところ、正月の長期入山で山頂を極めるにはラッセル、天候が大きく左右する。3人の力では無力に等しかった。その為には会が一丸となり、1つの山域に絞り込んで計画した方が、会として盛り上がり達成感もあるのではないかと考えます。

〈コースタイム〉
【12月29日】 大町(7:15) → 大谷原手前(7:45) → 1,550m地点(16:00)
【12月30日】 幕場(7:30) → 2,300m地点(15:30)
【12月31日】 停滞
【1月1日】 2,300m地点(7:30) → 大谷原手前(17:00)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ341号目次