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縦走・越後三山
鈴木 章子

山行日 2012年10月6日~8日
メンバー (L)鈴木(章)、森田(温)

 以前、1人で八海山に登った時、避難小屋に泊っていると、暇だからと小屋番のお爺さんがお酒を持って遊びに来た。お爺さんの話によると「中の岳迄のコースは厳しいよ」とのことで心惹かれるものがあったが、翌日は、雨。その時は、八峰越えをして五竜岳~阿寺山~山口=六日町駅に下山してみたが、何時かは行ってみたいコース。心の中でフツフツとしながら時間が過ぎてしまった。
 今回、小屋に泊った折、お爺さんのことを尋ねたら引退して、今はお孫さんが引き継いでいるとのこと。20代の若者が引き継いでいるのは嬉しいが、もう一度、お爺さんの話を聞きたかったのに残念。里で元気に暮らしているとのことだったが。
 越後の山々はどれをとっても厳しい。標高こそ低いが、日本アルプスには無い厳しさがある。登りはどのコースをとっても厳しく、尾根は細い。沢も厳しく、上部のツメには恐怖感を覚える。だからこそ魅力があるのかもしれない。
 例会にしたけれど参加者1名。何とも寂しい。今の三峰では、出かけることの少ない山域、勿体ない気もした。

 上野発、新潟行き最終便の新幹線に乗り、浦佐駅で予約してあったタクシーで森林公園ゲート迄。森林公園内で我々は仮眠をとる予定だったが、ドライバーの話では、森林公園はもっと先だと言うので、ヘッドランプを付け、林道を更に20分ほど進んだ。が、月も無く、熊でも出てきそうな気配。水はけの良い平らな場所を見つけ、幕を張り仮眠することにした。0時15分だった。
駒ヶ岳山頂にて  翌朝、5時起床、5時半頃、4名と単独の男性パーティーが通り過ぎていった。彼らは共に同じ沢に日帰りで入るそうだ。
 6時10分出発、十二平登山口に6時半着、登山口入口で今夜の水2Lを補給後、歩き始める。取り付きから傾斜のきつい登り。雪見の松からは尾根も細くなりグシガハナまで急登は続いた。グシガハナから先は、越後の山の特徴か、ゆったりとした登りに変わる。
 諏訪平に荷物を置き、駒ヶ岳をピストン。それまで、誰にも会わなかったが、山頂近くで4~5パーティーとすれ違った。皆、枝折峠方面から(八海山小屋で聞いた話だが、駒ヶ岳を登るコースでは森林公園が一番厳しいそうだ)。
 天気は曇り。時々ガスも掛かる。それでも、紅葉の素晴らしさは目を奪う。他のパーティーは日帰りか、駒ヶ岳小屋を目指すパーティーばかりで、中ノ岳へ向かう人は一人もいなかった。

紅葉が素晴らしい  天気は曇り。時々ガスも掛かる。それでも、紅葉の素晴らしさは目を奪う。他のパーティーは日帰りか、駒ヶ岳小屋を目指すパーティーばかりで、中ノ岳へ向かう人は一人もいなかった。
 諏訪平に戻り、霧の多い痩せ尾根を中ノ岳目指して歩いた。天狗平辺りで高齢の夫婦らしき2人に出会い、幕場の情報を尋ねたが良い返事は無かった。
 紅葉を楽しみながら、痩せ尾根とブッシュの檜廊下を進む。実に歩き難い。前方に大きな中ノ岳が大きく現れた時、時刻は15時。登山道の脇に小さな小さな平らな場所を発見。そこを幕場にしてしまった。あと1時間半頑張れば中ノ岳小屋に着いただろうに。後々まで悔いの残る結果となったが、その時はそんな気分に全くならなかった。夕食も早々に済ませ18時には横になった。

 翌朝3時半起床、6時出発。今日も長丁場になりそう。天気は下り坂。昨夜も一晩じゅう小雨が降っていた。幸い出発前には止んでくれたが、雨具を付けての出発となった。小屋に向けて標高を上げると霧は益々濃くなった。中ノ岳から下山してくる2人の女性パーティーとすれ違う。昨夜の小屋は混んでいなかったとのこと。行かなかったことが、また悔やまれた。
 小屋の中で30分休んだ。濃い霧の中、山頂へ行くのは諦めて、祓川へ向かう。足場の悪い道を20分も降りると霧は晴れ、眩しい紅葉が目に飛び込んできた。祓川はお花畑の中。沢もあり水も十分とれる。一泊したくなるところ。
 しかし、これも八海山小屋で聞いた話だが、数年前、ここで鉄砲水が出て、テントが流されたので、今は幕営禁止になっている。この沢の水が今年の夏、初めて涸れていた。やむなく小屋の虫?のいる天水を飲んだとのこと。やはり、ここは小屋泊まりにした方がいいらしい。
 祓川をすぎ過酷なアップダウンと鎖場コースに入る。御月山を登りきると、次は、太くて重い鎖を握りしめて一気に下る。その後は、籔漕ぎ、岩場、痩せ尾根、鎖場と飽きることなく延々と続く。晴れて、荷物が軽く、膝の調子が良ければ快適で結構楽しめそうな尾根。途中、4パーティーが八海山からやって来た。1組は沢の帰りの様子。他3組は中高年以上の4~6人のパーティー。皆、元気。オカメノゾキのキレットは幸い?霧の中。恐怖心を感じなくて済んだ。荒山を過ぎて出逢った最後のパーティーのリーダーらしき人が、「ここから先は、梯子と鎖が一杯だからね」と告げてくれた。
 五竜岳手前から道は平坦になり、やれやれと思う頃、雨は本格的になってきた。秋の雨は冷たい。そのまま休憩もとらずに小屋を目指す。森田氏が少し疲れ気味。寒さに当たったのだろうか。大日岳からは巻道を選ぶが、数十メーターの梯子の下りの連続。好天で、体力が残っていれば八峰の鎖場の方が早いかもしれない。
 雨はだんだん強くなり、梯子の終わった後は、鎖場のトラバースが続き、小屋に着いた時には16時になっていた。
 この小屋は、私有、県営、町営の小屋が一か所にある。管理は私営の人がやっている。避難小屋を利用したのは我々のみ。私有の小屋は『八海山講』の人々で一杯、もう一つの小屋もツアー客で混んでいた。お陰で避難小屋は雨具の物干し状態。

鎖場を進む果てしなき梯子

 森田氏が、雨の中、雨具も着けずに水汲みに出かけて行った。私は寝るスペースと調理スペースを確保。ゆっくり夕食の準備をしていると『八海山講』の人々が気を使って、ランプとおでんを持ってきてくれた。更に、落ち着いたら、温かい小屋に遊びに来て下さいと何度も誘いを受けた。結局、森田氏の体調が不良のため、私一人が遊びに行った。そこで今回、上記のような色々な情報を得ることが出来た。彼らは年1回ここで集う。普段は、単独が多いそうだ。大きなホラ貝を3つも持っていた。気持ちの良い人たちだった。お酒が飲めれば、もっと楽しめたのかもしれない。私はこの山でお酒を薦められることが日常になってしまっているのだろうか。
 明日は、快晴とのこと。それを信じて20時頃には横になった。

 最終日は、予報通り快晴になった。少し寝坊をして4時半起床。御来光を拝み、昨日お世話になった行者さんたちにお礼を言って下山。
 道は相変わらず鎖が続くが、晴れているとこんなにも気分が違うものか。浅草岳(女人堂)の小屋はバイオのトイレ。ゆっくり用を済ませ、再度下山を始める。ロープウェイも動き出したのか多くの人が登ってくる。遥拝堂小屋(ロープウェイの駅の近く)も泊ってみたくなる小屋。ここでも休憩をした。土地の人が小屋の前の石碑にお祈りをしていた。
 本来はここからロープウェイで下る予定だったが、好天でもあるので、そのまま大崎里宮を目指すことにした。紅葉には少し早かったが、出会う人も無く気持ちの良い道だった。三合目を過ぎると霊泉小屋に辿りつく。小屋直下の霊泉の水は冷たくおいしい。この小屋には薪もありここでも泊ってみたい気持ちにさせられる。
 今回のコースは歩いているときは二度と歩かないと思ったが、ここまで下山すると、再度、好天の日に歩いてみたいという思いにさせられる。
 里宮まであと一歩のところで、10メーターの鎖場。私たちは修行者か。最後まで気の抜けない山だった。
 神社の前に蕎麦屋があり、つい誘われて入ってしまった。
「うまい!」
 お店の人も感じが良く、ここでタクシーを頼んでもらった。今回、食べなかったがここの山菜天ぷらは絶品とのこと。我々が食べている脇から、お客がドンドン入ってきた。
 浦佐駅近くの旅館で入浴後、帰路も新幹線を利用した。

〈コースタイム〉
【10月6日 曇り】 幕場(6:10) → 十二平登山口(6:40) → 雪見の松(7:20) → グシガハナ(11:10) → 諏訪平(12:00) → 駒ヶ岳ピストン → 諏訪平(12:30) → 天狗平(12:45) → 檜廊下~幕(15:00)
【10月7日 曇りのち雨】 幕場(6:00) → 中の岳避難小屋(7:00~30) → 祓川(8:10) → 御月山(8:30) → 出雲先、八合目(9:20) → 荒山(12:15) → 五竜岳(13:40) → 丸岳(14:20) → 大日岳分岐(15:00) → 新道分岐(15:20) → 八峰分岐(15:25) → 避難小屋(16:00)
【10月8日 快晴】 小屋(6:35) → 薬師岳(6:40) → 女人堂避難小屋(7:20) → 遥拝堂避難小屋(7:22) → 三合目(9:05) → 霊泉小屋(9:35) → 大崎里宮(10:30) → 門前蕎麦屋(10:50)=駅近くの旅館

〈諸経費〉
【タクシー代】:
浦佐駅~森林公園(ゲート迄):4,220円
蕎麦屋~駅近くの旅館(足湯有り):2,520円
千本檜避難小屋:1,000円

千本檜には3軒小屋があり、避難小屋、個人経営の小屋、県営の小屋、全て個人経営の小屋番の人が管理しています。


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