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日向八丁尾根~甲斐駒ヶ岳
なりた よしまさ

山行日 2012年10月27日~28日
メンバー (L)森田(温)、小幡、成田

【10月27日】
 日向八丁尾根は尾白川を挟んで黒戸尾根の対岸にある甲斐駒の裏ルートのような存在。昔から歩かれていたのがいつしか廃道となったものの、最近は整備されつつあって歩く人が増えてきているとか。しかし、それも大岩山までで烏帽子岳までは今後の予定だそうで、その前に歩いておこうと企画された例会。一般的には竹宇駒ヶ岳神社から出発し黒戸尾根を下って神社に戻るコースが多いが、日向山登山口からスタートして黒戸尾根経由で神社に戻るコースになっている。何故か?リーダーはその方が標高差400mの登りを省略できロングコースの時間を少しでも短縮したいからだそうだ。
 夜明け前の5時過ぎにヘッデンをつけて出発。よく整備されていて登山道の横には「10-1」、「10-2」と札が立っている。勾配がゆるくなると登山道から少し離れた所に三角点があり立ち寄ってから山頂へ。樹林帯から一転して真っ白な砂浜の丘のような山頂で、とっても綺麗だ。前面が開けているので展望も良さそうだが生憎ガスがかかって遠くまで見えない。山頂からザラザラの砂礫を下って行くと錦滝の分岐になり、分岐から痩せ尾根に変わり、さらに別の尾根に移ると歩きやすい登山道に変わる。天然の唐松林を見ながら1時間ほどで 鞍掛山分岐である駒岩に着く。その先も比較的緩やかなアップダウンを繰り返しながら進むと大岩山である。

日向山コースタイム表示は30分を0.3hと表示

 日向山から、ここ大岩山までは、しっかりした道である。日向山からの3:00はコースタイム通りだったから烏帽子岳まで3:30の標識があるので、この時間で通りなら予定より早く抜けられそうに思った。しかし、ここから先が核心部で、藪次第では、どうなるか分からない。大岩山からの下りにかかると徐々に尾根は細くなってきて急降下する斜面に出る。まず鎖を頼りに急斜面に出る。続いて延々と張り巡らされたワイヤーロープをたどり、垂直のスラブを鉄ハシゴで下る。最後にまた鎖でコルに降り立つ。ここまで30分。標高差150mを一気に下った。
大岩山からの崖を降りる  鎖類が無かったら懸垂下降を何回かやらないと降りられない壁だ。コルからはほぼ尾根通しに進む。トレースも所々で消えたりすることもあるが、良いペースで登っていく。
 このまま烏帽子岳まで行ってしまうのかという期待を抱かせるのである。2,301mピークは中間地点であり、烏帽子岳が間近に見えてくる。しかし、その直後からシャクナゲとハイマツのヤブが濃くなってくる。強引に突破すると再び歩きやすい樹林帯となり、標高2,400mあたりで烏帽子岳へ200m急登する取付きに到着した。ここからルートをどう取るのか地図では判別できず現地の状況で判断しようと考えていた。烏帽子岳まで距離にして1km弱である。だが、やはり切り立った岩稜が現れたため、これは登れないとみて、岩稜に沿って右下へ下降気味に巻く。古い針金があったのでコースミスはしていない。しかし、どんどん下ってしまうので、適当な所で左上のヤブの支稜に取り付いてみたが踏み跡も何も無いので鞍部まで降りようとなった。そして隣の尾根にトラバースして稜線を目指す。事前調査通りのルートだ。だが、シャクナゲとハイマツの藪でしかも急斜面。トレースも無く各自稜線に向かって登る。1時間かかって、やっと稜線の踏み跡に合流できた。

やっと烏帽子岳に到着3年ぶりの6合目石室

 稜線は岩が連なり烏帽子岳北峰に到達。南峰2,594mもすぐそこだった。大岩山からほぼ4時30分。あの標識より1時間オーバーだった。
 ここまで来れば後は一般道。15分ほどで鋸岳の縦走路に出て、ヤレヤレだ。もうまもなく宿営地となる六合目石室。途中、水場に降りて補給してから石室に向かう。石室は我々の独占。持ち上げたビールで乾杯をして疲れていたので早々と就寝。まもなく「わーっ、目が痛い」と言う叫び声。扉を開け何やら喚いている。どうやら暗闇を歩いていて熊避けスプレーを蹴ったか触ったかしてガスが噴出したらしい。シュラフを被っていたから何も感じなかったが、収まってから顔を出したらヒリヒリする臭いがしていた。

【10月28日】
 5時起床。夜中は晴れて月も出ていたが、起きたら雨に変わっている。石室を出る頃には止んだが、途中で小雪になったり止んだり、視界もあまり良くない。1時間ほど歩くと鎖場に出る。岩が濡れているし冷たくて嫌らしかった。登るほどに雪が積もっていてルートが不明瞭になるので慎重にルーファイ。甲斐駒ヶ岳の頂上には早くも登山者が一人いたが我々が到着とすると下山していった。今日は1日天気が悪い予報なので北沢峠に下山することに変更。バス時刻まで時間があるので遠回りになるが仙水峠経由にした。仙水小屋の水は沢水ではなく地下水を汲み上げているので旨いと教えられ、ペットボトルに入れて持ち帰った。
 帰りのバスから見た紅葉は山肌全体が染まって、すばらしく、美しく、見とれました。
 日向八丁尾根は、黒戸尾根より長いロングコースの尾根。登りがいがありました。甲斐駒にもこんなルートがあることを知りました。藪も言われているほど濃くはないしルートも比較的はっきりしています。2,400m付近から烏帽子までのルート取りがポイントです。

雪の甲斐駒山頂
〈コースタイム〉
【10月27日】 日向山登山口(5:10) → 日向山(6:25) → 鞍掛山分岐(8:15) → 大岩山(9:40) → 烏帽子岳(14:30) → 六合目石室(16:10)
【10月28日】 六合目石室(6:10) → 甲斐駒(7:55) → 仙水小屋(10:55) → 北沢峠(11:40)

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